12話:あの日の酒場
エメクと出会った思い出の酒場。
夕暮れをエメクと談笑しながら、楽しく過ごす時間。
私が誰かと歩くなんて思いもしなかった。
前回は私が酒に酔って、失態を晒してしまったが‥今回は酒は呑まない。
かなり弱いのは自覚してるからだ。
「マスター、いつもの」
ー いつもの??エメクここは行きつけなのだろうか。
「エメクはここの常連?」
「あぁ、そうだよ。ここは女冒険者が少ない。女の客が居てもカウンターに座っていればあまり話しかけられることが無いんで気に入っている。」
「私は何か食べるよ。すみません、肉の腸詰とハーブのドリンクを。」
「え?吞まないの?ゲロインさん!」
「あれは貴様が肩に担ぐからだろうが!腹に衝撃与えて貴様が吐かせたんだろうがよー!」
「調子出てきたじゃん」
「うるせーわ」
ー エメクの「いつもの」が気になる。
「何吞んでるの?」
「あーこれな、アルコール」
「いやそれは分かってるんですけど‥」
「そいや、500万ジェルド何に使う?」
「そうねぇ、半分は孤児院ね!残りは衣食住!」
「孤児院?お前孤児院の出なのか?」
「うん、そうよ。沢山の恩があるから寄付してる。いつも報酬を貰ったら半分寄付してるの。」
「はぁー。自分だけの為に生きればいいものを…。だから装備も貧相で…もっと自分優先でもいいんじゃないのか?」
「好きでしてるからいいの。まぁでも確かに装備は大事よね。このローブ気に入ってる。隠密スキル上がった!装備でこんなに違うのね!」
「そうだぞ!何も知らない可哀相な子に装備のレクチャーしてやるよ。明日空いてる?」
「うん、空いてる。選んでくれるの?助かる!」
「俺もそろそろ装備を新調せねばと思ってたから、俺の買い物も付き合え」
ー こうして明日の予定が出来た。
「孤児院に寄ってからでもいい?」
「あー。所でルビナちゃんは何歳でちゅか?」
「…22。」
ー エメクは過去の記憶を辿った。エメクも孤児院の出なのだ。
「確か…男の子に泣かされてピーピー言ってたルビナちゃん?」
「ふぁ!なんで…え?エメクお兄ちゃん?」
ー 男の子に泣かされた時、いつも助けてくれて、元気付けてくれた優しくてかっこいいエメクお兄ちゃんだったの??
「うわ!ごめん!昔は凄く年上に思えて、今頃ガチムチのおっさんになってると思った!」
「俺今27なんですがぁ」
「5歳しか変わらなかったの??とっても年上だと思ってたから気付かなかった‥」
ー ルビナは軽くショックを受けた。ルビナの初恋の相手だったのだ。
「エメクお兄ちゃん大好きだった。」
「過去形かい!」
「そうよ!今は、全然違うっていうか。近づくなオーラとか眼光鋭いし‥」
「酷いなぁ~、傷ついちゃう」
「懐かしいなぁ!あの頃エメクお兄ちゃん優しくて、大きくなったらお兄ちゃんと結婚するー!って言ってたよね!」
「おう!独身で待ってる!って言ったな。てか、同一人物なのに、エメクお兄ちゃんとかキャラ分けするのやめて?」
ー エメクが頭わしわししてきた。あぁ!懐かしい感覚。
「懐かしい!大きな手でわしわしされるの大好きだったなぁ」
「だった?今も好きなくせに強がるなよ」
ー ドリンクを飲んで誤魔化した。
「わぁ!顔真っ赤。それはなんていう酒?」
「吞んでません!」
ー 何の接点もないと思っていたのに。大好きなエメクお兄ちゃんがこんな近くに!!
どうしたらいいの!私!どきどき!
じゃあ、よく考えたら明日はデートなのでは??
きゃーーーー!!!
「これからエメクお兄ちゃんって呼んでもいい?」
「だーめぇーーー!」




