5話 ゲームしようよ
早朝ランニングが終わった後。
鉄火は外で水を浴び、ヒカルはシャワーで汗を長してから私服に着替えた。そして居間に集合した二人は、隣の台所で朝食の準備を始めた。
「ヒカルすまないな。朝食の準備を手伝ってくれて」
「いえいえ!むしろ何もしてないと落ち着かないので!台所に入れてくれてとてもありがたいです!」
「そう言ってもらえると助かる」
鉄火とヒカルは台所で手際よく朝食の準備をしていく。そんな中、居間にふらりと青丸が入ってきた。
「おはよー」
「おはよう」
「青丸さん、おはようございます!」
青丸の挨拶に鉄火とヒカルが返事をする。
「あれ?もしかしてヒカル、朝食の手伝いしてるの?」
「あ、はい!」
青丸は台所に入り、慣れた手つきで材料を切っているヒカルを見つけた。それを見た青丸は、冗談っぽい顔を鉄火に向ける。
「ちょっと鉄火ってばー、来たばっかりのヒカルを働かせるとかひどくない?」
「そうか……なら、お前が代わるか?」
「あ、僕ちょっと外行ってくるね〜」
「おいこら」
鉄火の言葉をかわすように居間から出ていく青丸。
「青丸の野郎……朝から適当言いやがって……」
「青丸さんって自由な人ですね」
「自由過ぎるんだよアイツは……!」
そんな会話をしていると、青丸と入れ替わるように居間にオミミが入ってきた。
「鉄火!ヒカル!おはよう!」
「おはよう」
「オミミさん、おはようございます!」
「おはよう!」
元気よく部屋に入ってきたオミミに挨拶をする二人。オミミは再度挨拶をしてから、ちゃぶ台のそばに置かれている座布団に行儀よく座る。
「ヒカルヒカル!オミミね、玄関でお掃除してきたの!」
「朝のお掃除、お疲れ様です!」
「うん!」
オミミはヒカルと会話している間もその場でソワソワしている。どうやらヒカルのそばに行きたいのを抑えているようだ。
「ねえねえ、今日の朝ごはん何?」
「今日はご飯と味噌汁、漬物とアジの焼き魚だ」
「やったー!オミミ、お魚大好き!」
オミミはその場で嬉しそうにはしゃぐ。
「ねえねえ!オミミも何か手伝う?」
「そろそろ飯ができるからそこで待っててくれ」
「はい、お味噌汁運びますよ〜」
「オミミも運ぶの手伝う!」
鉄火が完成させた料理をヒカルとオミミの二人で運んでいく。
「おっ、今日は魚なんだ。いいね〜」
料理が全て並べられたタイミングで、居間に再び青丸が戻ってきた。
「青丸お前……」
「さ、朝ごはんにしよ」
「…………」
マイペースな青丸に対して何か言いたげな表情をする鉄火だが、それでも我慢して口をつぐむ。
「では……いただきます」
「「「いただきまーす!」」」
鉄火の合図を皮切りに朝食が始まった。
青丸は真っ先に焼き魚に橋を伸ばし、ほぐした焼き魚の身を口に入れる。
「ヒカルが焼いた焼き魚おいし〜」
「魚は俺が焼いた」
「…………うわぁ〜!鉄火が焼いてくれたお魚すっごくおいしぃ〜!」
「手遅れだバカタレ」
鉄火と青丸が妙なやり取りをする中、オミミがヒカルに声をかけてきた。
「ねえねえ、ヒカルはどれ作ったの?」
「あ、自分は食材を切ったりしました。お味噌汁に入ってるキノコとか豆腐とか……」
「ヒカルが切ったのすっごく食べやすい!上手!」
「オミミさんありがとうございます!」
「あー先にヒカルが担当したやつ聞いとけば良かった」
「無駄口叩いてねぇでさっさと食え」
やがて賑やかな朝食も終わり、オミミと青丸が皿洗い役として台所のシンクに立つ。その間、鉄火はヒカルと修行の話をする。
「ヒカルは新人除霊師だったな。とりあえず基礎全般はできるか?」
「はい!基礎は十分出来てると言われました!」
「得意武器は?」
「二丁拳銃です!自分は主に精神弾による攻撃が得意です!」
ヒカルは居間に持って来ていた武器を取り出して鉄火に見せた。
「オモチャっぽい見た目だな」
「祖父が知り合いから譲り受けたアケコン……つまり、ゲームセンターのシューティングゲームで使用していた銃を改造して武器にしたものです!」
「色んな奴が使用していたものを武器にしたのか」
鉄火はヒカルの武器をじっくり見つめる。
「人の想いが込もっているモノは力を込めやすく、威力も高くなると祖父から教わりました!」
「その通りだ。うん、武器としてもよく使い込まれている、よく手入れもしているな。これはいいモノだ」
「ありがとうございます!」
ヒカルはアケコンを手に持ち全力のお礼を述べた。
「とりあえず今日はまず、ヒカルの実力を見るとするか。8時頃に外行くぞ」
「はい!」
「おっ、8時まで時間あるの?じゃあ時間来るまでゲームしようよ」
食器洗いが終わり居間に戻って来た青丸が、テレビの前に置かれていたコントローラーを複数持ち出しながらゲームの電源を入れた。
「パーティー系のゲームは沢山あるよ。とりあえずドリパでもする?」
「おっ!いいですね!是非ゲームやらせてください!」
「もちろん」
青丸はコントローラーをヒカルに手渡し、鉄火とオミミにもコントローラーを渡した。
「おい、俺はやるとは一言も言ってねーぞ」
「いいじゃん。オミミもやるでしょ?」
「やる!」
「これで三人ゲームやることになったね。で、鉄火はどうする?やめとく?」
「やるに決まってんだろ」
「そうこなくっちゃ」
鉄火はコントローラーを強く握りしめてテレビ画面を真剣に見つめる。誰よりも前のめりだ。
「(鉄火さん……何やかんやで最初から参加するつもりだったんだろうな……)」
ヒカルは真剣な鉄火を横目で見つめながらそんなことを考える。
「僕とヒカルはベテランだから、僕らをリーダーにしたチーム戦にしよっか」
「……悔しいが、そうするしかないな」
「じゃあオミミはヒカルのチーム入る!」
「いいですよ!オミミさん、一緒にやりましょう!」
「やったー!」
ヒカルと同じチームになれたオミミはとても嬉しそうだ。尻尾をブンブン振り回し、全身で喜びを表現している。
「ヒカル、手加減はしないからね」
「モチロンです!青丸さん、お互いにいい勝負にしましょう!」
修行が始まるまでの間、この場にいる全員参加でゲームをすることになった。