35. 宮廷ご巡
その夜、竹香が宮廷内の自室で寝ていると、宮廷ご巡と呼ばれる警察の役人が4人、部屋にがどどっと入って来た。竹香は突然布団をはがされて、何が何だかわからないままひっぱって行かれ、暗い牢屋に放り込まれた。
しばらくは恐ろし過ぎて震えて、少し泣いてしまったが、途中で、ふっと気持ちがしゃんとするのを感じた。こんなことをしていては、何も始まらない。
いつか学校で、敵に捕まった時にはまずは冷静になること。そして、次の策を考えよと習ったことを思い出した。そんなことはこれまで思い出したこともなかったけれど、学校では役に立つことを教えていたようだ。もっとちゃんと勉強しておけばよかったと思うけれど、そんなことを言っている場合ではない。
「質問があります」
竹香が鼻をぐすぐす言わせながら、ご巡に大声で訊いてみた。
「あのう、わたしがどんな悪いことをしたのでしょうか」
「なんだなんだ」
中年のご巡が書類を見ながら、牢に近づいてきた。
「わたしはどんな罪を犯しましたか」
「おまえの罪はいろいろある。窃盗罪、器物損壊罪、不敬罪、それに反逆罪だ」
ええっ。
竹香はよくわからない罪とその多さに驚いたが、おまえはそんな大罪を犯したのか、と中年のご巡の目が訊いていた。
「そんなにたくさんの罪、わたしが何をしましたか」
「知らねえ。でも、この国では、上の命令に対しては、何事も、従わなければならないのだ」
「どんな罰が下されるのですか」
「裁判にかけられ、有罪なら、まぁむち打ち、しかし反逆罪なら死刑だ」
わたしが反逆罪に問われ、死刑になるかもしれないなんて、そんなことがあってよいわけがない。この国では、遠音皇子がそうだと主張したら、死刑にもなるのだろうか。
竹香はあがいたって仕方がない、なるようにしかならないと思った。
今一番心配なのは、離山が逮捕されたことを聞いたら、どんなに驚き、どんなに悲しむかということだ。彼がわたしを救おうとして、無茶なことをしませんように。
わたしはここでできることをしよう。わたしだって仙師の血が流れているのだ、と竹香は自分を奮い立たせた。
竹香は大声でまたご巡を呼んだ。
「ここは寒いので毛布をください」
竹香が今できるのはこのくらいだが、今夜は毛布を頼めたのだからよいことにしよう。
「橋は渡る前から、心配するな」ということも、習ったことがある。橋が近くになってから、渡ることを考えよ、という意味である。
そう。一晩中、心配していても仕方がない。
竹香はとにかく朝まで寝ることに専念しようと決めた。眠れなくても、がんばって眠るのだ。作戦はそれからだ。




