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21. 黄色い服

 離山は自分の部屋に行くと、竹香に身体を拭く布をわたし、引き出しの中から黄色の服を取り出した。

「これ、着て。もし、よかったら」


 黄色の服?

 広げてみると、女子用の小さなサイズ、竹香のサイズである。


「気にいるといいけど」

竹香は服を両手にもって、眺めてみた。

「とても気にいりました。ありがとうございます」

「それは、よかった」


 でも、どうしてこんなサイズの服が、ここにあるのだろうか。もしかして、わたしにプレゼントしてくれようとしたのだろうか。


 そんなことを考えていると、離山はポケットにはいっていたものを出して机の上に置いて、奥で着替えてくるからと部屋を出ていった。

 机の上には、赤が剥げたような色をした奇妙な形の石のようなものが遺されていた。これって、離山さまのお守りかしら。

 そんなことを思いながら、竹香は黄色い服に着替えた。鏡に映してみると、なんだか、似合う気がする。心が明るくなる。


 しばらくすると、離山は着替えて、髪を拭きながら戻ってきた。帽子を脱いで、長い髪になると、ずいぶんと印象が違う。 

 

「あのう、これ、わたしのための服ですか」

 竹香は自分サイズの服がどうしてここに用意されていたのか、不思議でならない。


「ああ、そうだよ」

 離山が照れくさそうな顔をした。

「どうして。どうして、わたしのために、用意してくださっていたのですか」


「この間、中柿おじさんの人力車に乗って出かける時、役人と女中のようだとチーチーが言っていたから、服を買っておいたのだけれど。でも、それはかえって気を悪くさせることになるのかもしれないと思って、わたせなかったんだ」

 ああ、そうなんだ。


「気を遣っていただいて、ありがとうございます。今日も助けてくださってありがとうございます。わたし、死ぬかと思いました」

「死んではだめだよ」

「はい。もっと気をつけます」


 似合っていますか、と竹香は離山の前でくるりと回ってみた。

「よく似合っている。黄色はチーチーに、よく似合います」

 

 黄色が?

 そう、黄色を着るのは久しぶり。

 人間界に来てからは、明るい色の服を着たことがなかった。


 その時、竹香の頭にあることが浮かんだ。十六雲冠山にいた頃、黄色いリボンをもらったことがある。それをつけて、空を飛んだことがあった。


 竹香は思い出した。あのパレードの時、キャプテンの手を握った時の感触を。大きな手で、あったかくて、がっしりしていた手を。

 

 竹香は自分の右手を頬に当てて考えていたが、

「失礼します」

 と言って、次に離山の左手を握手をするようにして掴んだ。


 離山は唇を固くしていたが、そのまま握らせた。

 竹香は目をしばたきながら一度その手を放し、今度は向きを変えて離山と肩を並べてから、もう一度握ってみた。



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