「旅人日記」
プロローグ
異郷、異世界と聞いて何を思い浮かべるか。
中世の街並みに、冒険者や浮浪者の集う酒場、冒険者ギルド。
街の中心には、見上げるや否や睥睨されているかと錯覚してしまうほどに、高く建つ王城。
街外れには、青々と生い茂る草原に、足を入れた全ての者に死を誘う、何度も枝分かれし、地底奥底にまで続く未開発の洞窟。
強力なモンスターの蔓延る未曾有の地。
崖の上に聳え立つ、魔王の棲む魔王城は、まさに摩天楼そのもの。
かけがえのない仲間との出会い、恋愛、そして冒険。時には笑い合い、時には諌め合い、そんな風に互いに研磨できるような最高なパーティを組みたい。
頭の隅々にまで発想を巡らせ、胸を踊らせながら、私はとある本を開く。
「旅人日記」。
百二十巻、全十篇で構成された長編小説であり、全て読み切るのに1年はかかると言われている。
この本には、世界中を旅するとある旅人、「オリ」の一生が描かれている。
旅人オリは、思わず目を奪われてしまうほど、可愛らしく整った顔立ちに、かつスラッとしていて、母性を感じさせる体躯を持ち合わせており、
人情深く、誰にでも優しく接することができて、心身ともに非の打ち所がない。
更に武術や剣術、魔術など、幅広い戦闘技術に精通している。
そんな文武両道な彼女は、異性からとにかく異常な程にモテた。
仲のいい幼なじみから、10つも年の離れた大人まで、のべ二百人以上に告白され、高貴な大商人の令息、貴族、果ては「旅人日記」の世界で最も身分の高い王族からもアプローチがあった。が、彼女はそれら全てを一蹴した。
それは恋愛沙汰や一生の安泰を全て打ち払ってでも、やりたいことがあったから。
それは、他でもない 「旅」。
意を決し、20にも満たない年で、少女「オリ」は世界中を廻る長い長い旅に出ることになる。
その旅路で出会う仲間や、強敵との戦闘、時には裏切りや、仲間との死別。
それらは、彼女にとって人生の1ページでしかない。
嵐が吹こうが、空から剣が降ってこようが、彼女は前に進むだけだ。
長い長い旅人生が、今始まろうとしていた。
だいたいのあらすじはこうだ。
オリジナル小説なのだが、まるで「誰か」を題材にして書かれたのかと疑ってしまうほどに完成度が高く、登場人物の溢れ出る人間味や、緻密に表現された世界観に、誰もが魅了され、みるもの全てを虜にした。
16歳の少女、ユリイもその1人。
物心ついた頃には、毎日のように旅人日記を読み漁り、今に至るまでに20回は読み終えた。もう今年で17の代になるが、未だにこの本を読み続けている。
いつしか彼女はこう思うようになった。
「私もいつか、オリみたいに世界を旅してみたい。」
そんな想いを胸に、彼女は今日も本を手に取る。
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「旅人日記」を読んで頂きありがとうございます。
初めて書く小説なので、誤字脱字や、物語中に不明な点が多くあるかと思われます。
見つけ次第ご報告頂けば、可能な限りすぐに訂正致します。
色々と不慣れな点が多いですが、何卒、大目に見て頂けると幸いです。