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富良野へゴー

94話 富良野へゴー


 早朝苫小牧目指して、わたしたちは宿を出た。


 静ちゃんはコンビニで買った食パンにピーナッツバターをぬり、一緒に買ったハムをはさんでサンドイッチに。

 わたしは、最初からできてるサンドイッチを。助手席のユイちゃんは相変わらずリュックの中の木の実を。ボリ、ポリと。美味しそうに。

 両方の頬がふくらむほど口の中にほうりこんでる。

 ドライバーの網切さんは、朝はコーヒーだけだ。

 ここ、2、3日の朝の光景だ。


 苫小牧に着く前にナニか、食べる物が売ってる店があれば寄るだろう。

 ソレが静ちゃんだ。


 今回は、クルマを降りたら。次のクルマをつかまえないですむ。だから、寄れる店があれば寄ってみる。


 金沢さんたちも、そんな旅で、意外な穴場を見つけては喜んでた。


「網切さん、わたしたちと一緒で、良かったの? ホントは、観光に北海道へ来たんでしょ」


「また、いらぬ心配を。私はこの旅が楽しいの。コロボックルに会えたのも貴方たちと一緒じゃなければ、なかったわ。ナニも気にしないで」

「そう言ってもらうと……」


「マリア、観光より、食い気でゴメンね。あたしは、観光しに旅をしてないから」


「静まで、ナニをいまさら」


「ユイちゃんも、ホントはどんな旅したかったの? わたしたちに巻き込んじゃたわね」


「わたしは無計画でしたから。むしろ助かってます。宿のフカフカでイイ匂いのベッドに寝られるなんて考えてもいませんでした」


「そんなイイ宿に泊まったかしら?」

「多分ベッドじゃなくマットレスのことかも。特にヘビヅカヤの別館はベッドの無い畳部屋だし」


「静さんたちに会えて、良かったです」


 苫小牧に着くまでは一店寄っただけ、苫小牧の街ナカでお昼を。


 って、ちょっと前に食べたばかり。

 昼食が、食べれるのは、おそらく静ちゃんだけじゃ。

 金沢さんたちや、わたし、網切さんはデザートだけだ。

 肉を食べないユイちゃんは、他の食物なら静ちゃんと張り合えた。


「お金ないのに美味しい料理が腹いっぱい食べれて幸せです。ありがとうございます」


「クマの礼もある遠慮しないで食え」


 クマとの遭遇も何度かあった。ほぼユイちゃんが、どかしてくれた。


 裏アヤや静ちゃんだけだったら多分、クマと戦っていただろう。

 やはり東北よりクマが多くて、それに大きい。ヒグマだからね。


 食堂から、海が見えた。


「反対側の海だけど海の精霊が居るんだよ」


「海の精霊……ルルコシンプかしら」


 と、網切さんが。

 わたしも、静ちゃんも、北海道の精霊の事はよく知らない。


「知ってますか網切さんは」


「アイヌが語る海の精霊よね。ルルコに愛されると幸せになれると」


「そうなんだ、会いたいわぁ。ねぇユイちゃん、会えば幸せに、なれるとか」

「シズカ、それは座敷わらしじゃないのか。ヤツならアヤが親しいから会わせてもらえば」

「え、そうなのアヤちゃん」

「座敷わらしは、もう遠野に居ないから……」


「ドコかで、会ったよね。ドコだっけ?」


「東京の何処かだったかなぁ」


「えー座敷わらし、東京に居るの?!」

「最近空き家が、多いからね、ドコかに」


 わたしたちも、空き家だ。最近はマカさんのトコにばかりだけど。


「ルルコはどうしてるかなぁしばらく会ってないなぁ」


「そうだ、どうしよう。行きに寄らなかった富良野へ行かないと取材地に入ってるの。帯広で、気がつけば良かった。ゴメン、シズカ」


「金沢さん、ためしに一人でヒッチハイクして行ってみたら。いい経験になるよ。クルマはあたしが……って冗談よ、そんな顔しないでよ」


「あたしらは目的地とか、期限があるわけじゃないから、行きましょフランケン野」

「静ちゃん、富良野だよ」

「知ってるよ。オヤジギャグよ」

「でも、苦しいダジャレだな……底なし」

「久しぶりね醜女!」


「じゃ次は富良野へゴー! ってことで」


 シズカさんは目の前のビールを飲みほした。


               つづく

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