小美人
90話 小美人
釧路で一泊し、帯広へ。
「ねえ、静ちゃん。ずっと網切さんのクルマ乗ってるけど。ヒッチハイクの旅じゃないよね」
「アヤさん、あたしたちの旅の目的はナニ? ちょっと勘違いしてない。もともとヒッチハイクは、たんなる移動手段。一反姐さんに乗って旅してもいいのよ」
アヤさんって静ちゃん。
「アヤさん、気にしないで。私、貴方たちと一緒で楽しいの。嬉しくもあるわ。ずっと再会したいと思ってたの。まさか北海道で、会えるなんて、なんの巡り合わせかしら」
「そうなの。わたしたちといて、楽しいですか?」
わたしは、静ちゃんと居てたのしい。
アヤ、道連れが増えたな。ひとりじめ出来ないな。
まあ、静ちゃんは人気者だから。
ククク夜は静を独占じゃないか、昼間は我慢しな。
裏アヤ、変な言い方しないでよ。独占って。
「ナニ、なんか言ったアヤ」
「べつに……」
「ああ、いつものアレか、二面のセクハラ」
「あのな『底なし』。ワレをあの漫画と一緒にするな」
「しっ、裏アヤ声を出さないで」
「どうしたのアヤさん、珍しく静さんとケンカ?」
「いや、なんでもない。アヤの一人芝居よ。それから、網切さん。マリア、静でいいよ」
「わたし、モモンガで、いいよ」
「可愛いモモンガさんだこと。ユイちゃんの方がいいわよ。でも、なんでモモンガ?」
「言わなかったけ、ユイちゃんの姓は百河っていうのよ。百河唯がフルネームなの。だから……」
国道を走って二時間半。帯広に到着。
「網切さん、お疲れ様」
「金沢さん、毎度運転ご苦労さまです」
「あら、なんの冗談。シズカさん?」
「べつに、冗談じゃ。『さん』は、やめて」
「そんなこと言ったの初めてよね。大勢で旅してみるもんだわ」
そういえば、クルマ二台の旅は初めてだ。
なんか楽しいわけだ。
「なんか学生時代思い出すなぁ」
「その頃は運転してたの?」
「いや、免許持ってなかったから学生の頃は。おーい静ぁあ。夏には海行こうか」
どうしたのシズカ。夏って気の早い。
「アヤさん、静さん。帯広に友だちが居ます。会いませんか」
「いいよ、妖怪?」
「精霊です。コロボックルの姉妹です」
「コロボックルか」
「コロボックル?!」
「あ、網切さん聞こえましたか」
「ええ、お友だちと……。熊と話せるユイちゃんならありえるかと、私も会いたいです」
「ちょっと待っててね」
ユイちゃんは、駐車場横の草むらの方に走って行った。
「おーいどうしたのユイ。オシッコ?」
「違うよ」
「シズカ、あんたと一緒にしたらかわいそうよ」
「金沢さん、しっ!」
もどって来た。
「いま、カエルに伝言を夜の目立たない時間にまたココへ」
「え、ナニ、静。カエル? 夜ココでナニが」
「夜のお楽しみ」
深夜、カエルが伝言に現れたと。
ユイちゃんが。
宿から歩いて行けるれいの駐車場にみんなで出かけた。
駐車場脇の草むらへ。
彼女たちは待っていた。
「コロボックルの双子の姉妹ナツとリリです」
二人は美しかった。
服装はアイヌのようでアイヌではなかった。なにか独特の服装。何とはわたしの知識では表現できない衣服。
「こんにちは、はじめましてみなさん」
二人はハモりながら同時に喋った。
「姉のナツです」
「妹のリリです」
「本当に居たんだなコロボックル」
「まるで映画の小美人だ。モスラとか、呼びそう」
「たとえが古いな、シズカ」
「感激です。本物ですよね……ちっちゃいオジさんとは違いますよね。妖精ですか静……さん」
「都会に居る奴らと同じ類かもね。北海道では、コロボックルと。小人は何処にでも居るから。有名な一寸法師とかも、仲間だよ」
「さすが、妖怪研究家だな」
「自称ですけど」
つづく




