愛の妖精
88話 愛の妖精
「姉さん、なんで、姉さんは真理なの?」
「ナニいきなり、そんなこと聞くの?」
「名前よ、新婦真理っていう」
「知らないわ。お父さんか、かあさんに、聞けば?」
「ん〜。今まで気にしてなかったんだけど、あたしの名前、どう思う」
「ルコの名前……」
姉はあたしをルコと呼ぶ。
「わたしみたいな平凡な名前じゃなくて、いいんじゃない。真理なんて、お父さんが好きだったアイドル名前よ。由来とか、恥ずかしくて言えないわ」
「でもさ、お化けよりましじゃない」
「お化け……」
「ルルコシンプって、妖怪いるの知ってる」
「そうなの、知らないわ。でも、あんたは新婦ルルコでしょ」
「まあそうだけど、海外だと……」
「気にし過ぎよ。ルルコシンプとか、そんな妖怪を知ってる人が世界にどれだけ居るのよ。わたしも、今、初めて知ったわ」
「あたし、小学校の頃ちょっと、からかわれて……お父さんに聞いたことがあって。で、ルルコシンプのコトを聞いたわ。北海道のアイヌに伝わる愛の妖精だって。当時はそれで納得したわ」
「愛の妖精……いいじゃない。ティンカーベルみたいのかな」
「妖精ならね。それがさ、今の妖怪図鑑みたいな本に妖怪として、載ってるんだよルルコシンプは新婦ぬらりひょんとか、新婦油すましと一緒よ」
「妖怪……お化けなの? ルルコシンプって」
「絵とかはあたし見たことないんだけど、おかげでさ、あんたは妖怪? とか聞かれちゃたりするのよね」
「誰から?」
「妖研の連中」
「妖研。なにそれ」
「妖怪研究部」
「あんた、そんな部活してたの?!」
夕食後、お父さんが、居間でテレビを見てる。
「お父さん、聞いてイイ?」
「ルコ、お隣に、ドーナツもらったのデザートに食べない?」
「お、俺にもくれ」
「おとーさんは、ダメよ糖尿なんだから」
「一個くらい食っても死なねぇよ。も〜らい」
と、おとうさんは、箱ごと取り一番甘そうなのを取った。
「おわぁ久しぶりに食うドーナツは美味いなぁ……。あ、ルコ、さっきなんか言ったな」
「かあさんも聞いて。ルルコシンプって、どうなの?! 本当に愛の妖精なの」
「なんだ、急に。学校でイジメにでもあったか」
「小学生の時にね。その頃、なんでこういう名前をつけたかと聞いたわよね」
「あれは、宿題だったから……」
「愛の妖精の名じゃ気に入らないのか?」
「それは、それでいいけど……お姉ちゃんは、なんでルルコにしなかったの?」
「真理はね、おとうさんの好きな漫画のヒロインでね。子供が出来たら、その名をつけると決めてたのよ」
「漫画なの。アイドルの名前ってお姉ちゃんが」
「そのヒロインから、名付けたアイドルが出てきたんだよ」
「二人目が、できた時は、一生懸命考えたのよおとうさん」
「ああ三日三晩寝ずに考えた……ウソだが。俺はアイヌなんだ。知ってるだろ」
「知らなかった。そうなの」
「あれ、言ってなかった? 俺は観光地化したアイヌ部落で働いてたんだ。そこで、かあさんと出会ったんだ当時のかあさんは雪女のように美人でな」
「その例え、わかりにくいわ。なんか、話それてない」
「ホントはだな、爺さんから聞いていた海の精霊ルルコシンプのような美人だと。それを思い出して、つけたんだ。ホントの事は知らないがウチの姓の新婦もそこからかもな。爺さんはいつも言ってたルルコに愛されれば幸せになれるってな。ちなみに婆さんの名もルルコなんだ」
「どうしたのルコ、今頃。その名が気に入らなくなったのかい?」
「その海の精霊が妖怪図鑑とかに載ってるのよ。で、あたしを妖怪かって」
「そんな事か。妖怪か、まあ精霊も妖精もまとめたのは和人だ。妖怪なら、森の精霊のもんもんがーの方が妖怪ぽいなっ」
「もんもんがーって、モモンガのコト?」
「そうともいうなぁ。アレは猿みたいで毛むくじゃらだから妖怪ぽいっ」
「ふーん。じゃあたしは橋の下とかで拾われた妖怪の子とかじやないのね」
カチャン
かあさんがコップを落とした。
「ごめんなさい、おとうさん。まだ、夕食後の薬飲んでなかったわよね」
「ああ。 おいルルコ、今みたいな事、二度と言うなよ」
え、ナニ。それ、どうとればいいの。
つづく




