赤いクルマと再会
78話 赤いクルマと再会
「あ」
「憶えてる?」
「ごめんなさい。どこかで会ってますよね」
「忘れちゃた?」
「会っのは憶えてる」
そんな会話を聞いた、わたしはドライバーさんの顔を。
「あ、お久しぶりです。静ちゃん、この人は……アレ、色は同じだけどクルマ、違いますよね」
「あなたの『静ちゃん』って思い出すわぁ。クルマは、この前買いかえたばかりなの軽にしたの」
「岩手を出てから乗った、はじめのクルマの人だよ」
「そのサングラス、赤いクルマ。あの時の学生さんだね」
「そうよ、あの時はまだ学生だったわ。乗って。一人増えたのねお友達」
「まあそんなとこ」
はじめてクルマに乗るというユイちゃんを前の助手席に。わたしと静ちゃんは、後ろ席に。
「このコ、クルマに乗るの初めてなんだ。いい景色見せてあげて」
「クルマに乗るのはじめて? あなたたち、ヒッチハイク始めたばかり?」
「違うよ函館からはじめた。前のユイとは、さっき会ったばかりなんだ」
「そうなんだ。新しい出会いというわけね」
クルマが走り出した。赤いクルマの女性は、ホントに嬉しそうに話し始めた。
「あの……プライベートな話していいかしら」
「ナニ? なんでもいいよ」
「あなたたちを乗せてから、私、人生変わったのよね。あの頃勉強してた民俗学やめてね、妖怪にハマっちゃったのよね。で、普通のOLとかやってたんだけど今はフリーター。お金貯めて、妖怪フィールドワークして歩いてるアマチュア妖怪研究家なのよ」
「え、妖怪研究家。静ちゃんと同じだね」
「自称だけど」
「あら、でもモデルとか、俳優もしてるんでしょ。映画見たわよ。あなた、静さんに会えるかもとモデル事務所まで行ったわ私」
「静ちゃんに会いに事務所まで」
「アヤさんも映画出てたよね」
「ちょっとしか映ってないのによくわかったね」
「良かったらふたりのフルネーム教えて。あ、私は網切麻莉亜よろしく」
「あたしは草双紙静」
「わたしは綾樫 彩」
「ふたりは東京から? それとも遠野から来たと、オシラサマに乗って」
「そんなコトまえに言ったわね」
「私、ちょっとまえに遠野に行ったの。オシラサマも見たわ。馬じゃない方ね。ふたりに会えるかもなんて、思っちゃたわ。残念だったけど。住所も知らなかっだし。あの、クルマの中でした妖怪話が楽しかった。アレが民俗学やめたきっかけに。あなたたちに会いたかった。一時は縁がないのかもと。でも、欲しかった本を見つけたわ。地元だから知ってるかしら? 駅前の商店街の古本屋さん」
マカさんの店だ。縁があるのね。
「知ってるよ。あそこの人と知り合い」
「そうなの。名前言えば会えたかもね。その店で欲しかった画集を発見してね。奇跡かと。それからね、とんでもない物、見ちゃたの」
「とんでもない物って?」
ボリボリって、音が前から。もしかしてユイちゃん。
「あ、ゴメン。お腹すいたから……話進めて」
あの大きなリュックから木の実を出してボリボリと。
「河ババァと一反姐さんを見たのぉ」
つづく




