モモンガ少女
77話 モモンガ少女
「ユイは、いつも一人なの?」
「たまに、コロボックルとかと会うけど、それはたまたまかな。だいたいひとりだよ。中の良い熊や鹿、キツネもいるけどモノノケじゃないよ」
同行することになったモモンガのユイちゃんは、どうやら旅に出るのははじめてらしい。
普段は留萌の先、増毛あたりの森の奥に居るそうだ。
ちなみにモモンガと言ってもあの小動物のモモンガではなく妖怪のモモンガだ。
アヤ誰に言ってる?
気にしない、気にしない。
「なんで旅する気に。あたしらみたいな旅する妖怪は少ないのよね。最近は人間におわれ住処を離れるのもいるけど」
「この辺にずっと居るから、あきたのもあるけど。たまに見る人が、楽しげに歩いてる。クルマに乗ったりしてるのも見た。どうやったらクルマに乗れる?」
「あんた、まさか歩き旅」
「クルマに乗らないから、そうなる。べつにドコヘ行く、目的もないし。急ぐわけでもない」
「わからんでもないなぁ。夜は野宿?」
「ドコでも寝れるよ」
「ふかふかのベッドは気持いいぞ。それに人間の作る食べ物は美味しい。たこ焼き、食べたコトある?」
「たこ焼き? あの海の八本足の。あれを焼いて? ない。美味しい?」
「直接焼いて食べるわけじゃないけど、美味いよ。特にタコQのは」
「タコQ?」
「静、こんなトコでタコQなんて言っても、わかるかよ」
「今のは?」
「相棒のアヤの裏の顔だ、口が悪いし、顔も悪い」
「口が悪いのは確かだが、わたしゃ鬼面界では、美形でとおってる。ホラッ」
「ひっ。そんなトコに顔が」
「二面を見るのは初めて?」
「ユイは、森の中に暮らしてるから、あまり他の妖怪とは、たまに人里から来た山童に人間の話を聞くけど」
「あたしはホラ」
「あ、頭の後ろにも口が」
「あたしは通称二口よ」
「人里の妖怪と山のケモノ系妖怪とは、違うのは知ってたけど……」
「化けてると言ってたけど、ユイは、普段はどんな姿なの?」
「ユイは、毛だらけで猿みたいだ」
「リスみたいなカワイイ尻尾があったわよね。もふもふで気持ち良さそうな」
「うん、時々自分で抱いて寝る」
「そのうち抱かせて」
綺麗な静ちゃんに抱かれてみたい。
おい、アヤ。本気か?
ダメかしら。
べつにダメじゃない。
「あ、クルマが来た静ちゃん」
「あ、忘れてた」
と、静ちゃんは、「乗せて」と書いた段ボール紙を上げた。
すると通り過ぎた赤い軽自動車が停まった。
「やった。アヤ、今日は一台目で」
すぐに車の方に走った。
「三人だからアレって、思ったけどやっぱり」
つづく




