前座
69話 前座
ヘビヅカヤホテル ツルの間302
「やっぱ、あのふたりスゴいわ。ヒッチハイク一緒して、わかったよ」
「私もまさか、札幌まで行ってるとは」
「はじめはさぁ。なかなか停まらなくて。こりゃだめかなと、思ったんだ。でも、なんだろう……やっぱり静の不思議な力で、なんとかなっちゃうんだな。室蘭まで乗せてくれたのはは、自称カッパのおっさんで、札幌まで、乗せてくれたのMIBなキツネだぜ。静を巫女と思ったとか……」
「ホントにキツネだったの?」
「正体見たわけじゃないけど。静が」
「そうか、でもソレ信じなかったら彼女とんでもなくあぶない娘になっちゃうわね」
翌朝。
スマホで調べた静ちゃんは夕張へ行くか美唄市へ行くか、迷った。
でも、季節ではないのでメロンはあきらめ先に進むコトに。
「美唄か、一気に高速通って行きましょうか」
ホテルで朝食をとらずに出た。
車中。
「ヒッチハイクしないで高速行けば一時間くらいだって。朝食はあっちで食べるって」
「そうだろうと、深夜ホテルの近くのコンビニで、おにぎり買っておいたの。食べるアヤ?」
一つもらってくれアヤ。
「お腹へってないよ」
裏アヤとわたしは胃は共有だ。
が、人間が、一緒だと味わえない。
せっかくヤツらと離れた宿では、おまえナニも食わないだろう。
食欲ないから。静ちゃんじゃないのよ。
ああ、だがヤツの夜食を見たらヨダレが出た。
そうかぁで、寝る時に背中が濡れてたのね。
「ゴメン、静ちゃん、一つ、んんん。半分でいいやちょうだい」
「ハイよ」
「ありがとう」
下向くから前にきて食べて。
裏は見つからないよにしてるから目の前は髪の毛でナニも見えない。
「二人とも食べすぎないようにね」
「大丈夫だよ、静の胃はバケモノ級だから」
「バケモノ級じゃなくバケモノだよな」
「バケモノ面に言われたくないわ」
「あら、あたしバケモノ面かしら。そりゃあんたには負けるけど」
「あ、シズカのことじゃないから」
「静ちゃん、アヤちゃんをバケモノなんで可哀想よ。アヤちゃんも可愛いわよ。悪いおねえさんね」
「あはは、おねえさんじゃないよ金沢さん」
「そういう意味じゃないわ」
「わからないよ。金沢さん。夜はアヤ、『おねえさまぁ』とか言ってるかもよ」
「ないです、言いません。そんなこと……」
「でも、静は言わなそうだし」
「言うわよ。アヤおねえさま、おにぎりちょうだいとか……ねアヤ」
「ふざけてです」
「アヤはさぁ『静ちゃん』って呼んでるけど、どちらが年上なの?」
「どっちかなぁ。世に出たのはぜんぜんあたしの方が先出し」
「世に出たって、おい。なによそれ?」
「そうだね、でも遠野に来たのはわたしが先」
「もしでかして、あんたたち。お互いの歳知らないとか」
「ちゃんとした生まれた年って知らないわよね」
「じゃここらでカミングアウトしとけば」
「いいんだよ、歳なんて。あたしより年下のババァとか、いくらでもいるから」
「年下のババァ……よく言うわ」
とか、話をしてたら高速下りてもう美唄だ。
「もうすぐ朝飯だぁ」
「静、さっき食べてたおにぎりはなんなんだ」
「朝食の前座かな」
つづく




