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妖怪首の手

68話 妖怪首の手


「マジ、信じてくれ。会社で話したら笑われた。おまえなら」


 仕事帰りに偶然会った高校時代の友人と呑みに行った、とある居酒屋で。


「高田とは同じオカルト研だから信じるよな。最近入ったアパートの話なんだ」


 どうもオカルトがらみの話らしい。


「夜中に目が覚めると大きな女の顔が見えるんだ」

「大きいって、『大首』みたいな?」

「そこまで、でかくない。1メートルくらいかな。そいつは夜中に目を覚まさない限り見ないんだけど」

「どんな女だ、血を流して恨めしそうな顔をして、にらむとか?」


「いやいや、そんな恐ろしい顔してたら俺はアパートから出てる。恨めしいのとは違うな。色白で眉を下げ、せつなそうな顔して見てる。俺は金縛りにあって動けなくなるんだ。が、そのうち寝ちまう。だから夢だろうとよく言われる」


「で、そいつは美人か」


「高田らしいな。この話して、そんなコト聞かれたのは初めてだ。美人だ。俺の好きな女優に似てるんだ。べつに危害をくわえるわけじゃないから、我慢できた」

「で、今も出てるのか?」


「まああわてるな。話は最後まで聞け。7度目に見た時にだ、その女の首から白い手がすうっと伸びて」

「大きな女の顔で首から手。そいつは、部活で見た『稲生物怪録絵巻』に出てた妖怪『首の手』じゃないのか」

「ああ、その本は憶えてるが、そんな妖怪出てたのか?」


「名前はボクが勝手に付けたけど、出てる。『逆さ頭』と並んで有名だ。そいつはヘアースタイルは日本髪?」


「いや、ちょと昔のワンレンみたいな現代の髪型だ。そんな大昔の妖怪とは……。で、その手が金縛りで動けない俺のパンツをおろして。ナニを掴んだ。でしごきはじめたんだ」

「で、出したのか。それ、溜まってる時に見た淫夢じゃないのか?」


「言うと思った。ソレが一回だけなら、俺もな最初はそう考えたよ。が、次に目が覚めて見た時にもだ。ソレがもう五回だ。夢だと思うか? また夜中に目覚めたら……」


「そうなんだ。一回、二回なら夢だが、五回となると妖怪かな……。で、どうなの。そのアパートを出るの?」

「いや、最近楽しみで。出した時のヤツの笑顔が可愛らしく見えてきた」


「なら、問題ないじゃないか」

「いつもは、掴んだところまでしか話さない。高田、おまえだから下の話までしたんだ」


               つづく

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