誘拐はん太
67話 誘拐はん太
「お久しぶり。あなた」
「しっ。誰が聞いてるか、わからん。わしとおまえは祖父、孫の関係だ」
「はい、お祖父様」
「しかし、おまえは相変わらずだな美しい。今夜また会おう。それまで、東京を楽しんできなさい」
「そのつもりよ」
旦那の会社の東京支社に来た。初めてではないが久々の東京だ。
去年山ン本五郎左衛門からなんだか東京に集まれとか手紙が来たが行かなかった。
二口に会った時に聞くの忘れた。アレは何だったのか。
会社の地下駐車場に行くと。知った顔が。
「お嬢さんお久しぶりです」
福島の本社で働いてた男だ。
「ああ、顔は憶えてるけど、名前は……」
「忘れたんですか幼稚園の送り迎いを私が」
ええ、おかしなコトを。私はそんな幼児の姿になっていないぞ。
「記憶違いじゃないかしら私の幼稚園は専用のバスで」
「そうでしたか、別のお嬢様と勘違いしたかも」
「そうね。あなた、この辺で美味しいお店知ってるかしら」
「寿司店なら」
「お寿司。良いわね。案内出来る?」
「お安い御用です。では」
「あら、クルマは?」
「会社出てすぐですから」
私の記憶はここまで。気がついたら。知らない場所に。
どこかの事務所のような部屋。
椅子に縛らてる。
これって。
正面に見えるドアが開き。人相の悪い知らない男が。
「気がついたぜ」
「お目覚めかなお嬢さん」
後から駐車場で会った男が。
「すみませんねお嬢さん。誘拐させてもらいましたよ」
「時任、電話かけよう」
「その前にこの上玉、俺の好みなんだ犯らせてくれ」
「だめだ」
時任という悪そうな男、ヤクザぽい。
「金が入ればいくらでもヤれる」
時任がポケットから私のスマホを出した。
「お、ロックがかかってるぞ積田」
「指紋ロックだ、よこせ」
積田か。たしかそんな名だった。
積田は、私の手を取りスマホの画面を押した。
しまった。コード番号にするんだった。
「お、コレだ。あんた、祖父さんをフルネームで登録してるんだな」
旦那に電話するようだ。
〘ウララ、なんだ?〙
「残念でした金津太衛門会長ですね」
旦那と名字が違うのは、母親の親という設定だ。
ちなみに母親というのは私なんだが。
〘おまえは誰だ?〙
「さて、誰でしょう。誘拐はん太とでも名のりましょうか」
〘ウララを誘拐したのか〙
「そうだ、六千万用意しろ。断れば孫の命はない!」
〘ホントにウララを拐ったのか? 声を聞かせろ〙
積田は、私の前で。
「なんか言えよ」
〘お祖父ちゃん、ウララだよ〙
「なにをやってるんだ遊びか?」
「ホントだ、ジイさん金を用意しろ、3時までにな。あんたなら簡単だろ。また、電話する」
そして、なんだかスマホをいじってる。
「何してんだ?」
「スマホで位置がわかるから、な。わからないようにな」
「そうか、俺はスマホはわからねぇ。未だにガラケイだ」
「おっ、電話だ。会長だ」
「なんだ、ジイさん。もう金を用意したのか」
〘違う。おまえ、まだ無事なのか?〙
「はあ? なんのことだ」
〘ウララ、約束の時間に遅れるな〙
「大丈夫!」
〘誘拐はん太とやら、自業自得だ。おまえはもう死んでいる〙
「なんだ、その電話は?」
〘仲間が居るのか、あんたも夕飯食えるかな。じゃグッドラック!〙
「どういうコトだ積田!」
「知るか!」
「オホホホホ、さてどちらからいただこうかね」
「ヒイッ化け物!」
つづく




