表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/100

赤名の原稿

63話 赤名の原稿


「高田くん、赤名先生のとこ行ってきて。表紙用の絵があがったって」


「バイトの田中さんは? 彼女が行くと先生喜ぶそうじゃないですか」


「なんか用があって、今日は来れないと」


「そうなんですか」


 唐沢さんも一条さんも、手は空いてそうだけど、行きたくないんだろうなぁ。

 目が合ったらそらされた。


「はい、いってきま~す」



 赤名邸近くまで来た。この辺は駅から遠いのにバスも通ってない。タクシー乗るほど遠くもない住宅地。


 アレ、前を歩いてるのは。

 バイトの田中ミソギ?


 あ、赤名めじろの門に。

 彼女バイトに、はいれたのかな?

 スマホを見て確かめたが、ナニも連絡は入ってない。


「おスッ!」

「わあっ、脅かさないでくださいスマホ落とすとこだつたじゃないですか。飛縁魔先生……が、なんでこんなトコに?」

「わたしは妹のひづるだ、編集君」

「妹さんか。あ、はじめまして、ですよね。あまりに姉のみずちさんに似てるから、はじめてのように思えないです」

「はじめて、だつけ? 編集君」


 だよな、また酔っ払って会ってるコトないよな。


「もしかして赤名先生のトコに」

「そーだよ」


「先生のあの美しいイラストの女性はすべて妹さんなんですか?」

「すべてじゃないわ。それにあのジジィはけっこう誇張して仕上げるから、わたしより美人になってるわ。ちなみに今ノーメイクだけど写生の時もノーメイクなの。ジジィは仕上げにメイク入れるから、絵はジジィのメイクね」



 赤名邸。


「珍しいカッブルでの訪問じゃな」


「たまたまソコで会いました。つかぬことを聞きますけど。ウチのバイト、来ましたよね」


「ジジィ、先に行ってる。ミソギは来てるの?」


「来てるがナニか?」

「原稿取りにじゃ?」

「聞いてないのかね。コレも飛縁魔くん同様。ナイショにな。ワシの新しいモデルじゃ」

「彼女なにも……。もしかして最近の少女絵は」

「そうじゃ。くれぐれも」


 赤名めじろは口に立てた人差し指を。


 彼の絵にはモデルがいないコトになっている。が、女性絵は飛縁魔ひづる。

 少女絵はバイトの田中ミソギだって。

 バイトの田中が赤名に気に入られてるというのは、こういうコトか。


「高田君。口止め料じゃないよ。コレで美味しいモノでも食べなさい」


 と、赤名めじろは、原稿袋とべつにポチ袋をくれた。

 編集部には黙っていてもいいか。


 駅までの帰路、半分まで来た所で雨が降り出した。また、だ。

 もしかしてボク、妖怪濡れ濡れに憑かれてるのかな。原稿濡らしたら大変だ。

 幸い雨は、たいしたことないが、やむ気配はない。カートンケースに入れた原稿を上着で包んで走った。


 雨のあたりが弱くなった。いやなくなった。

 横でいい匂いが。どこかで、かいだ匂いだ。

 上を見ると傘が。

 ボクの横を走る白いドレス。


 ボクは止まった。

 隣に地下鉄で会ったロリータ・ファッションの美少女がボクに傘を。

 ソレ日傘では?


「荷物大事な物ね」

「ありがとう。でも、その傘じゃ君濡れてるよ」

「たいした雨じゃないし。防水スプレーかけてるから大丈夫。駅まで?」

「そうです」

「あと少しね」


 ボクらは並んで駅まで歩いた。

 駅に着いて。

 彼女は、ボクの背中を叩いた。


「気に入られちゃたのかな? 濡れ濡れが憑いてたわ。でも、追っ払ったから」


 と、言って、駅の地下鉄口の方に。


「待って!」


 階段を降りる寸前に。


「コレ、洗濯代」


 と、赤名にもらったポチ袋を渡して改札に走った。


 ホームに昇ったら丁度電車が。

 昼間でガラ空きのシートに座り上着で包んだ原稿用カートンケースを見た。よし濡れてない。


 コレ濡らしたら最悪だ。赤名のジイさんの生原だと、たいへんな値段だ。


 いくら入ってたか見なかったけど、あのポチ袋に入ってるだけで足りただろうか?

 クリーニング代。あの衣装に防水スプレーなんてウソだ。

 助かったロリータちゃん。


              つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ