飛縁魔の夜散歩
62話 飛縁魔の夜散歩
久々に外に出たな。
もう上着はいらない。家の中より、暖かい夜だ。ウチに居るとついコタツに入ってしまう。
「おまえがつかまりもしねー女、ダラダラ口説いてたから終電なくしたじゃねーか。オレ、池袋まで、行ってタクシーでもひろわないと帰れねえよ」
「人のこと言えるか、おまえの隣の女も結局、帰っちまったじゃないか」
「あの女、呑むだけ呑んで、金払ったら逃げちまった今度会ったら……」
「会わねぇよ。多分」
「おい、こんな夜中に女が歩いてるぞ」
「終電逃したのかなぁ」
「違うだろ、ジャージの上下だ。近所の女だろ」
「声かけて見ようか」
「深夜に一人で歩ってるって、不気味じゃねぇ。あのボサぁっとした長い髪がよぉ」
「怪談はやめろよ。ジャージ姿の幽霊とか聞いたことないから」
「まあそうだが、あタバコって、今時キセルかよ」
「やっぱり変な感じする……オレ酔がさめてきた」
「こっちに来るぞ」
「あら、お兄さんたちも深夜の散歩……には、見えないね。酔っぱらいか」
「ああ、終電逃しちまったんだ。あんた近所の人」
「だけど……」
「ちゃんとした人間だ」
「しかも、色白美人だ」
「あら、クルマだ」
「おい、なんだ妙なクルマが来たぞ」
「ヘッドライトが提灯じゃねーの」
ガタガタガタガタ
「おや、飛縁魔の姐さんじゃないか。珍しいね」
「うわぁ骸骨だ!」
「オンボロクルマに乗った骸骨運転手。最近よく聞くよな……」
大学の食堂。
友人たちとランチ。隣の豊島が、前に座った、あたしは名前も知らない友人と話してた。
「豊島。今骸骨は、なんて言ったって」
「え、田中ぁ聞いてたの。『飛縁魔の姐さんじゃないか。珍しいね』と」
「飛縁魔」
「ああ、ジャージでロン毛の女にそう言ったんだ。で、気になって『飛縁魔』って調べたらそういう妖怪が。オレが見たのは妖怪女とお化けグルマだったんだ」
ジャージでロン毛の飛縁魔って、飛縁魔みずち先生では、お化けグルマに乗った骸骨と知り合い?
「それ、何処で見たの?」
「板橋の病院近く……あの女は病院で死んだ患者の霊とか……」
「極端だな、さっきは妖怪って。おまえ、あぶない薬でもやって幻覚見たんじゃ」
「薬とか、やりません。ちゃんぽんしただけですぅ」
「悪酔いしたんだよ」
板橋か、やっぱり。飛縁魔先生……。遊びに来てた妹の可能性もあるが。
「ん、でもさ。あたしも聞いたよ。そういう話」
「ミソギ知らない。なんでも、あの辺は事故物件が多いって噂」
そういえば高田さんが言ってた。
飛縁魔先生チも事故物件だって。
でも、あの先生平気で暮らしてると。
あ、LINEが入った。
赤名先生だ。
ゴメン、バイト入っちゃた。今夜はパスね!
と、返信した。
つづく




