信楽ふくろ
60話 信楽ふくろ
「一条、マイちゃんの様子はどうだ」
「はい、おかげさまで。まえと変わらずに学校も行ってます。ホントに河童っていたんですね。娘が尻子玉抜かれるなんて驚きました」
「実は俺もだ。あの紫咲は、信用できる人だ」
「人……。あの人、本当に人なんですかね。ああ話は変わりますが私、マイが卒業したら引っ越すつもりなんです」
「そうなのか。場所は決まってるのか?」
「はい。私の実家です母が一人で暮して居るんで。あ、実家は千葉ですから会社はやめませんよ副編」
都内某高校。
「部長。姉はもう部活はひかえると、受験勉強に集中したいから、あとはわたしに任せると……」
「任せる? そうなんだ高野先輩はけっこう熱心に妖怪研究してたもんね。多分妖怪知識は部で一番よ」
「いやいやいや、ボクも負けてません、小学生の頃に妖怪アニメにハマってからは……」
「姉は幼児の頃から妖怪を研究してました」
と、高野ひじりは、カバンからノートを取り出した。古いサンリオのノートだ。
だが、今のとキャラが少し違うような。
偽物かしら。
「コレは姉が小学生の時に書いた妖怪分布図です」
ノートには折込みページが作ってあって、かなり雑だが、日本地図が書いてあり、各県に妖怪の名が書いてある。
「似たようなのボクも作りました。小6の時に」
復路、やたらと張り合うな。
「姉が言ってました。北海道に『ルルコシンプ』という妖怪が……コレは偶然ですか? 妖研に同じ名の部員がいると」
「ルルコシンプ。あ、アイヌに伝わる妖怪ね。ウチの両親は北海道だから、シャレでつけたのかも。たまたま姓が新婦だったから……。あ、それより。まえから気になってたんだけど。こいつ複路。ふくろさかりって、名前は袋下がり、『袋さげ』みたいだよね」
「なんですソレ?」
「知らない?」
「ボクは聞いたことあるけど……ふくろさげは」
「ウチのジイさんが言ってたんだ。信楽焼きのタヌキは知ってるよね」
「はい」
「アレは『袋さげ』がモデルなんだよ。復路は多分妖怪だぬきだよ」
「ルルコ、ボ、ボクの玉袋はあんなに大きくない! それに、『ふくろさげ』はタヌキじゃないと……ジイさんの作り話だよきっと、ソレは」
「ほら、下品だろ。こいつの正体はタヌキなんだ。どう思う」
「そうかも……」
「そんな、わけないでしょ。タヌキが東京の高校通えますか? 戸籍もちゃんとある。それに高野さんまで、そうかもって」
「なに、そんなにあわててんのよ。やっぱりタヌキ。体型なんか信楽焼きじゃない。明日から『信楽ふくろ』と改名しなさいよ」
つづく




