地下鉄のロリータ
52話 地下鉄のロリータ
あの飛縁魔先生か、締め切りより早く原稿を上げるのは珍しい。
今回は二口女が主人公の妖怪物だと。
あの摩訶先生の知り合いの美人さんがモデルと聞いた。
原稿を読んでて顔がうかんだ。
地下鉄で移動中。
コツコツと音が。
隣の車輌から女性が移動して来た。
ウワァ。
ロリータ・ファッションの女のコ。
真っ白いドレスなので車内が急に明るくなったような。
コツコツという音は、とじた日傘をついてるからだ。
しかし見事なロリータ・ファッションだ。
その彼女がボクの前まで来て、隣に座った。
なんでまた。ガラガラの車内なのに、ボクの隣。
座ったら。
「『濡れ濡れ』が見てるよ」
「は?」
なんだって。ヌレヌレ?
見てるって、この車輌には隣のロリータしか。
「前の座席。じっと見てる。知り合い?」
「あの、前には誰も」
「やっぱ見えないんだ。『濡れ濡れ』」
「ヌレヌレってなんですか……」
「お化けよ。雨女の一種だと思う」
「お化け! 濡れ濡れってコトは……」
「そう全身びしょ濡れの長い髪、女のコよ。オーソドックスな白い夏物のセーラー服に赤いリボン……。あんた傘持ってる?」
「いえ」
「気をつけないとね。雨にやられるよ……。伝えたわ」
そう言ってロリータは、次の駅で降りた。
何者なんだアレ。
白いロリータ・ファッションの美少女。
ちょっと厚化粧だったが、十代だよな。見ようによっては子供に見えたけど。まさか小学生なわけないよな。ランドセルみたいの背負ってたけど。
妖怪アマメとは、なんだ。
ずぶ濡れのセーラー服姿だって。
水死した女学生の霊とかかな?
会社に帰ったら唐沢さんに聞いてみよう。
地下鉄から出ると、どしゃ降りだった。
つづく




