虎女と水虎
40話 虎女と水虎
都内某所。
「水虎、日本に来て一人喰った。久々の雌は美味かったよ」
同郷の妖怪、虎女だ。
こいつは海外からオレを頼って来た。
虎女。
オレの名にも虎は付くがオレは「水怪」で、虎のように獰猛なだけで虎の体はない。
日本じゃ凶暴な河童と思われてる。
『ひようすべ』や『ガンギ』と一緒にされることもある。
まあ奴らならいいがカワウソと間違われるのはイヤだ。アレは、タヌキやキツネ以下だ。
最近は外来種のアライグマなんかが、はびこりだした。やつらも凶暴で、こないだ取った魚を横取りしに来て争った。オレも落ちたもんだケモノ相手に。
「そうか、美味かったか。オレはは河童同様、尻子玉は喰うが人の肉はどーもな」
「水虎、名のわりには情けないね。日本に永く居て河童共に毒されたか? 人は美味いぞ特に雌がな」
人間の姿のコイツは美女だ。
顔は白く、切れ長の目に長いまつ毛。
長い艷やかな黒髪。細い手足に腰つきだが、乳と尻はそれなりに大きい。
チャイナドレスを着せたら右に出る者はいないのではないか。
こいつの服は白地に虎の刺繍が入ったミニのチャイナドレスた。
色っべぇ。
抱いてみたいが、カマキリのオスみたいに喰われたくねぇ。
「おい、話を聴いてるのか水虎。あたしに欲情しているのか。河童の同族と思われても仕方がないな。ヨダレがタレてるぞ。しかし、おまえの人間体は、しまらんな。もうちょいイケメンになれんのか?」
「コレでも人気イケメン芸人と似てるのだぞ」
「なんで芸人なんだ俳優にでもなれ!」
「イケメン俳優などに化けたら目立っていかん、おまえもそれではすぐ目をつけられるぞ」
「そんな奴は喰っちまうよ。で、あたいにこんな倉庫みたいなトコか。もうちょっとましな宿とかないのか」
「こういう場所が目立たなくていいと思ってな。宿がいいのか……逃亡者が贅沢だな。おまえは」
「贅沢したくて、殺ッちまったんだ。妖怪だと思ってバカにしゃがって」
「まあ落ち着け、いいトコがある。ヘビヅカヤという宿だ。受付で妖怪だと言えば妖怪専用の別館にタダで泊めてくれる」
「日本には、そんなトコがあるのか」
「寝るだけだが、この廃ビルよりはマシだ」
板橋 飛縁魔邸。
「油すましまで一緒か、ぬらりひょん」
「久しぶりだ飛縁魔。居間を借りるぞ客が来るんだ」
「来客で、なんでウチなのよ、油すまし!」
「すまんな飛縁魔。今、ウチじゃ来客呼べないほどいかれてるからの」
「まああんたらみたいにフラフラしてるだけじゃ空き家くらいしか住めないのだろうが、ウチよりマシなトコはたくさんあるんじゃないのか。もっとリッチなのがいるだろう」
「ココが落ち着くでなぁ。油よ」
「だな」
ピンポョ〜ン
「来たかの。音が変だぞ電池キレじゃないのか」
ぬらりひょんは居間に座ったまま。玄関の戸を開けた。
「あんたが……」
「香港警察のチョウです」
「ぬらりひょん、客って警察か?!」
「ああ、居てもいいぞ。たいしたことじゃない」
チョウと名のる男は靴のまま上がって来た。
「おい、あんた靴脱げ、土足厳禁だぞ。玄関に書いてあるだろ」
「これはすみません床が汚れてたから。あなたがぬらりひょんで?」
「違う、ぬらりひょんは、こっちの頭がデカい方だ。こんな不気味なジジィと間違えるな!」
「二人共頭がデカい?!」
「和服のジジィだ!」
「二人共和服でお年寄りです」
「こっちのはミノだ。和服とは言わない」
「わしがぬらりひょんだ。そしてこっちは油すまし。わしの親友だ。何でも話していいぞ」
「こちらの女性は?」
「わたしは、この家の主だ。ジジィたちは、ただの客だから……」
「それはおじゃまします」
「話というのはチョウさん」
「チョウ・ユンハです。はじめまして」
「あんた先代の妖怪警察署長の息子さんだと……」
妖怪警察か。まああたりまえだろ。
人間の香港警察が、ぬらりひょんに会いに来るはずない。
「じぜんに『渡り火』が簡単に話しましたでしょうが、殺人犯が日本に逃亡しまして。こちらに帰化した妖怪に接触したらしいんです。しかも、もう一人殺っててニュースにもなってる」
つづく




