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サングラスの赤い客

33話 サングラスの赤い客


 遠野に行った時に会ったヒッチハイカーとの妖怪話が楽しかったせいもあり私は民俗学から、はなれ妖怪に興味を向けた。

 民俗学の中の妖怪では、なく妖怪そのものを研究し始め卒論テーマも「妖怪」とし、大学を卒業。


 卒業後は某企業に就職したが、パワハラとセクハラに、あい退社。

 今はコンビニ等でアルバイトして、資金が貯まったら旅行に出かける。

 妖怪好きは、まだつづいていて、旅行も妖怪のフィールドワークみたいなものだ。


 一人旅をしてると、あの妖怪好きの遠野から来たという二人に会いたくなる。

 が、住所も名前も知らなかった。


 それが最近配信で観た「新・妖異百物語」という映画で彼女たちを見つけた。

 妖怪談の1エピソードの「二口女」のキャバ嬢役で出ていた女優は、あのヒッチハイクの娘だと。

 ちょっと厚化粧だったけど、最後の百鬼夜行シーンの中に相棒の娘を見つけて確信した。

 ネットで調べたら二口女役の女優は「静」という名のモデルとわかった。

 相棒の娘はモブシーンなので役者名はわからなかったが。ヒッチハイクの時に「アヤ」「静ちゃん」と呼んでいた。

 映画のエンディングロールのキャストの中からアヤ名を探すと何人か違う字で彩とか、綾、亜弥、彩花といつた名が。どの名の娘かは、わからないがこの映画に静とアヤが出ていたのは確かだ。


 私は久々に遠野へ来た。

 が、ここも広い。歩いていれば会える。と、いうものでもない。


 駅近くの商店街で古本屋を見つけた。

 古書店に限らず本屋好きなわたしは本屋を見つけると入りたくなる。


 開きぱなしの入り口。Uの字型の店内の小さな店だ。

 奥には三十代くらいの男の人がレジで、何か書いている。



 客が来た。

 若い女性だ。黒いサングラスに赤いロングコート。

 5月でもまだ寒いからな。


 ロングヘアーで、ちょと静を思わす。旅行者かな。

 なんだか、静がはじめて来た頃を思い出す。

 背格好が同じくらいだ。

 違うトコは、彼女は文庫本のコーナーを見入ってる。静は、行かない場所だ。

 そして、彼女はオレの独断で作った幻想文学書のコーナーに。

 数少ないがオレの著作と幻想文学エンタのバックナンバーを揃えてある。あと、他人の作品も何作か。


 そこを通り過ぎると彼女は美術関係のトコに。

 そこには美術書、イラスト集、浮世絵書とかが置いてある。


「うそぉコレ、千円」


 と、言って彼女はレジに赤名めじろの画集をレジに持ってきた。

 それは、オレが買った後に幻想エンタの編集部からもらった物だ。河ババァが見てて表紙のカバーを破いた本だ。


「ええ、ホラここ破けてますけどいい? 表紙も汚れてるし」

 

 河ババァの手垢が拭いても落ちなかった。


「中は大丈夫?」

「ええ」

「コレ東京の出版社じゃ品切れで、手に入らなかったのよ。それに関東だと古書でも半値はする。ネットでもこの値段では」

「そうですか。所持者は二冊持っていて、コレは見る用だったとか、ちょっと表紙もよごれてますが、いいですか」

「いいわ。ちょっと中、見ていいかしら」

「どうぞ。よかったらコッチで」


 店の奥に狭いがカフェを造った。


 東京の本屋に行った時に大手書店のほとんどにあった。

 今は普通に本だけ売っててもダメらしい。

 カフェと言っても無料でコーヒーやジュースをサービスで出す年寄りの休憩所だ。

 年寄りの客が多い。


 女性はレジの前でパラパラとやり。


「いいです。コレ下さい。このままでいいです」


「今日は寒い。良かったらお茶でも。サービスですから」

「ありがとうございます。ソコに甘酒ってあるけど、もらえるかしら」


 女性はサイフをあけた。


「あ、ソレもサービス。温めますから、ソコで座って待って下さい」


 甘酒を温めてカフェの方へ。


「旅行ですか」

「ええ、学生の頃一度来て、また」


 と、彼女はサングラスをとった。

 青い瞳。

 ハーフ? 顔は日系だ。


「何処から?」

「東京です……ご店主さん?」

「ええ、生まれも育ちも遠野です。あ、聞いてないか」

「あのあそこに幻想文学エンタのバックナンバー揃ってましたけど、近くの人が?」

「あれですか、その画集の持ち主だった人間と同じ人が。よく知ってる人物です……」


 オレだから。


「まあ、それでか……あの雑誌に毎号赤名の絵が乗ってますね」


 赤名は毎号作品を読んでて気に入った作者だけ挿絵を描く。

 オレは一回だけあった。


「お客さん毎号読んでるんですか。実は私も……」

「そうなんですか……あの地元の方でしたら。『河ババァ』って知ってます」


               つづく

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