香織と志子華
32話 香織と志子華
「コラッ、また」
「窓、開けるからいいでしょ。もう一時間以上走ってるよ。金沢さん。マジ、遠野まで行っちゃたからね。吸わせてよ」
「ケータイ電話は出ないし。あの娘たちは、まだ東京かしら。まあ青森まで来たんだから遠野に寄ってもねいいじゃない。住所、聞いておけば良かった」
「今回はハロウィンもないし。早く帰ってると思ったけどね。あのふたりに会えなかった遠野はイマイチだったな」
「そう? 駅前とかのカッパ見て、はしゃいでたじゃない。思い出をいっぱい撮ったわよ。今度会ったら見せるって」
と、金沢さんがスマホを取り出した時に着信音が鳴った。
中島みゆきの歌だ。
あたしは聞かないから曲名は知らない。
中島みゆき、コレは電話だ。
ちなみにメールはユーミンだ。
「誰かしら? シズカ、出て。
運転中なのでスマホを渡された。
「もしもーし」
〘ごめんなさい。電話、気が付かなかった〙
「あんた誰?」
〘静です。もしかして天野志子華さん?〙
「ああ、静か。非通知と出たから誰かと。まだ、東京?」
〘ええ、そうなの〙
「あたしらさ、青森まで行ってね、遠野に寄ったんだ。だから電話した。居なかったのかぁ。じゃ電話つながっても会えなかったか」
〘そうだったんだ。今は?〙
「金沢さん今、どの辺。電話、静だ。まだ東京だとさ」
「そーなのかー。あ、そろそろ福島かな」
「今、福島あたり」
〘そうか。東京でまた会えるかもね〙
「不思議と会おうと思うと会えないね。あのふたり」
「そうね」
「なんか、おもしろいよね。あ、そこのファミレスでお昼しよう」
「ファミレスぅ。何処で食べても一緒じゃない。やっぱ福島なら福島グルメで」
「あたし、ラーメンはパス。もうあきたわ。あと、円盤餃子もね」
「ネギそばも?」
「麺類もパス。なんか洋食食べたーい。ライス食べた~い」
「子供か、あんたわ」
「あ、見て。ヒッチハイクしてる」
「乗せる?」
「いいけど、子供ぽくっない?」
金沢さんは3メートルくらい先でクルマを停めた。
横切る時に見た。おかっぱ頭の子供だ?
「あんた学校わぁ?」
小学生高学年か中学生くらいに見える。
「学校。やっぱり子供に見えるか。わたしは子供じゃない」
「あ、ゴメン。何処へ行くの」
「ソレはわたしの勝手だ」
「ヒッチハイクしてるんじゃないの?」
「ヒチハイ? なんだソレは?」
「あ、そう。じゃバイバイ。金沢さん、行こ!」
なんだか、エラそうな態度だったわね。あの子。
「アレ、シズカ。今の子見えない。何処へ消えたのかしら」
ええ、と。窓から顔を出して確かめたが、さっきクルマを停めて声をかけた場所には誰も居ない。
「ホント、何処へいったのかしら」
「姐さんたちは何処へ行くんだ」
ええ、いつの間に。おかっぱ頭の子供が後部座席に。
あ、子供じゃないのか。
「私たちは東京に帰るとこよ」
なんの動揺もなく金沢さんがこたえた。さすがだ。
「東京か、行ったことないな。おもしろいか東京は?」
「はじめて行く人は面白いらしいけど、住む街じゃないね」
今度はあたしがこたえた。
「そうなのか」
「アレっ」
後ろの席を見ると。今、話してたおかっぱ頭が居ない。
「シズカ、居ないの? 今の子」
クルマを停めて。
シートベルトをはずしたあたしは、後ろの席を見回したが居ない。
「さっきのアレは何だったのかな」
「あのあたりで亡くなった子供の地縛霊とか」
「幽霊には、見えなかったな。それに子供じゃないと。遠野には座敷わらしってーのが居たよな。おかっぱ頭だし」
「遠野……なんでまた遠野の座敷わらしを福島で拾うの? なんか変じゃない」
「だね。それに子供じゃないと。『わらし』って子供よね」
「知り合いの霊感小説家」
「あの老けた。あたしとタメなんでしょ」
「ええ、彼女に聞いたコトがあるの。昔、歩いてる人におんぶをねだる妖怪のコト。今はクルマに乗るそうよ」
「それって『おんぶお化け』じやない。さっきのは、おんぶお化けか」
「老人の姿で現れる『乗せてけ』っていう妖怪も」
「さっきのは老人じゃなかったよな」
「どっちにしろ、乗せると良い事があるそうよ」
「ホント?! イイ男と付き合えるといいなぁ。最近ご無沙汰だもんなぁ」
「私じゃ不満?」
つづぐ




