新橋の酔っぱらい男
22話 新橋の酔っぱらい男
男は同じ方向へ。
もしかして同じ目的地。たこ焼きも同じだし。
「あの、もしかして出版社の方ですか?」
と、わたしは男にたずねた。なんとなくそう感じたから。
「あ、そうです『幻想エンタ』の編集部ですけど。あなたたちは飛縁魔先生のトコへ行くとか?」
「そうです。やっぱりそうですか」
「行く先が同じなわけだ。たこ焼きは飛縁魔先生の差し入れ? まああの人は有ればある程喜ぶ。あのお友達ですか?」
「いいえ。妹さんの紹介で。飛縁魔先生はどんな人?」
「そうなんですか。ファンの方?」
「あたし小説読まないのよね。あ、アヤは飛縁魔の小説読んだ?」
「実は読んでない……」
「あのさぁ。あんたと会った気がするんだけど」
「え、ボクはありませんけど……」
こんな美女と会ったのなら忘れるはずない、もう一人も可愛い娘だし。
「名前は?」
「高田、高田純一郎です」
「高田ねぇ知ってるアヤ?」
「知らない……たしかに会ったコトある顔だ……」
アヤ、知ってる。
さて、私は知らんわ。
「あの失礼ですけど。そちらさんのお名前は?」
「あたしは草双紙静、こっちは綾樫彩」
「草双紙……静。綾樫……。妖かし、シ・ズ・カぁ!」
「なによ、急に大きな声出して」
「マカ、摩訶先生! 摩訶先生ご存知ですか。小説家の摩訶富仕義先生」
「知ってるわよ、あたしら遠野から来たんだ」
「もしかして、妖怪美女二人組!?」
「そうだっちゃ。ウチがマカさんトコの妖怪美女だっちゃよ」
静ちゃん、完全にふざけてる。
まさかマカさん、わたしたちのコトを編集さんに話してたの。
「あの、遠野まで来た編集さんは、あなたですか。マカさんはわたしたちのコトを……」
「妖怪とは、ヒドいわねマカさん。いくら遠野の山の中に住んでるからって、あたしらを妖怪と」
「ええ、ウチに美人の妖怪が来ると摩訶先生は……あの、ハロウィンの頃、東京に行きましたよね。先生、悪酔いして何度もあなたの名を……」
「たしかにハロウィンの頃に。悪酔い……思い出した! あんたは」
「わたしも。あなたは、新橋の酔っぱらいさんだ」
「新橋……。酔っぱらい?」
「あんた、あたしらを有楽町のお笑いクラブかなんか連れてったわよね」
「新橋で……お笑い……あーっ! たしかに誰かと。まさか、あの時のふたりは君たち」
つづく




