ジンギスカン鍋パー
百話 ジンギスカン鍋パー
クルマがぶつかる瞬間だった。
こんなに早く動けるなんて、奇跡だと思った。
みんなの動きが早かった。
危ないと、思い。
なぜかシートベルトを外れた。
私の脇にナニか、毛のような物が。
ナニが起きたの?
危ないと思った、あたしの髪が運転席のマリアのベルトをはずし、彼女を抱えた。
危ないと思った。裏アヤが、とっさに前面に出た。
ドア開け、静ちゃんと静ちゃんが抱いた網切さんをひっ掴んでクルマから飛び出した。
外に着地した時には横転したクルマが網切さんのクルマにぶつかってた。
ぶつかったクルマの中に、まだ人が居た。
ふたりを離し、網切さんのクルマの上に逆さで乗ってるクルマからドライバーを引き出した後に炎上、爆発!
こういうの危機一髪と。
気を失った。網切さんと道路の真ん中に放り出された暴走車のドライバーを救急車が運んで行った。
事故を見ていた一反姐さんが、わたしたちをいち早く乗せて飛んだから。
現場には網切さんだけ残されてた。
網切さんのクルマには彼女一人だったことにした。
わたしたちは、空から救急車を追い網切さんの運ばれた病院へ。
当然無傷の網切さん。
気がついたら、わたしたちのコトを言っていたと警察。
静ちゃんが警察に。
「あたしらは事故の前に降りたから。あたしらは乗ってません。事故のせいで混乱していたのだと思います網切さん」
などと言ってごまかした。
嘘つきだぞ、やはり。
こういうウソはいいのよ。
病室。
「そうだったけ……」
「ホラ、あたしら、おみやげ買い忘れたからって、降りて買いに行くと。後でマカさんとこで、おち会う約束をしたじゃない、それで別れたのよ」
かなり苦しいウソだ。
「私、事故のショックで記憶がおかしくなってるの。事故直前まで貴方たちが後の席に居たような……。にしても、よく私あのクルマから出れたわよね。おまわりさんが奇跡だと。スポーツでも、していたのかと聞かれたわ。やってたのって卓球とボーリングくらいと……」
「なんにしても無事で良かった。まだ、検査で入院するらしいけど、明日また来るから」
一反姐さんに乗り遠野へ帰って驚いた。
マカさんチに知らない連中が。
「あんたたちが二口と二面か。私は、久慈姫だ。お初にお目にかかる。こっちの汚い子鬼は邪邪娘だ」
「ババァ! 汚い子鬼とは、なんだ」
「わしの古い友じや。静、アヤ。よろしくたのむ」
河ババァって意外に行動範囲が広い。
久慈って海の方だよね、他県にも知り合いがいたし。行動手段は歩くだけじやないのかな?
一反姐さんか?
「おまえたちが旅立ってから化け物屋敷なんだよウチは」
ピンポ〜ン
「誰か来たよ。マカさん」
時計を見たマカさんが、あわてて下へ降りてった。
「アレはマカの女だよ」
と、一反姐さんが。
「え、知ってる人?」
「知ってるも、知らないも。あんたらも顔見知りだ。マカは知らないかもだが。人だと思ってる」
静ちゃんが階段の上から覗き込んでる。
マカさんが戻って来た。
「悪いな、留守番しててくれ。ちょっと出かけてくる」
と、また降りてった。
「ククク、マカさんの女って」
「誰なの静ちゃん?!」
「山女だよ……山女も久しぶりだなぁ」
翌日、退院の網切さんを迎えに。
クルマはマカさんが知り合いに借りてきた。
マカさん、網切さんを見て驚いてた。
「君だったのか」
帰りの車中。
「退院祝にジンギスカン鍋パーティーやるからね、ちょっと変わった客も来るから、腰抜かさないように、今から言っとくね」
「変わったお客? 誰が来るの」
久慈姫と邪邪娘は黙ってれば、わからない。
山女も。
「一反姐さんと河ババァ」
「え、ホントに」
河ババァも言わなきゃわからないだろうけど。
「北海道旅行のおみやげもかねてるの。妖怪だけどいいよね」
「姐さんは、見た目はキモいが、なれればどうってコトないよ。婆さんは見たまんまだ」
「網切さん、遠野でふたりを見てるんだよね」
「なら、大丈夫だ。クルマ、大破しちゃたんだってね」
「保険に入ってるから大丈夫です。でも帰りは電車で帰ります」
「新幹線? 快適だったな〜。船にも乗ったしぃ。アヤ、今度は飛行機に乗りたいね」
「お金ないよ。しばらくきついわ」
「モデルでもして稼ぐ。あの社長なら飛行機代くらい出すんじゃない。飛縁魔なんか北海道だよ」
札幌飛行場(丘珠空港)。
「ファクション! ナニよ。誰か噂してるのかしら? 姉さんかな……」
おわり




