その時私はテレビ局で面接を受けていた
いつもお読み下さりありがとうございます
よろしくお願いします
いや、別にアイドルとかじゃありませんよ。
全く違います。
昔、世の情報を得る手段が、テレビとラジオとフライデーとフォーカスだった時代。(それ以外もあったけど!)
友人が、とあるバンドグループのファンで、そのボーカルがパーソナリティを務めるラジオ番組に、応援レターやリクエストの曲をハガキやFAXで送っていた。
「私のペンネームは〇〇で…聴いてて…ほら!言ったでしょ?!これ、私!」と、ラジオで推しのボーカルに読まれた部分を録音したカセットテープを、何度も巻き戻しては聞かされていた。
「コロンちゃんはファンとかないの?」
なかった。
友人に言われた事を思い出して「ファンとかないなぁ…」と、思いながらテレビを見ていた。
その番組は素人がレポーターとして外国へ行き、文化や歴史などを伝えるものだった。
番組の最後に「この番組の感想をお寄せください。
サハラ砂漠に行くレポーターを募集しています。サハラ砂漠に関する思いもお知らせください」と、テロップが流れた。
サハラ砂漠…まず心配はトイレだな。ラクダ。月の砂漠。
ファンとかはないけれど、テレビの感想でも送ってみるか。
私は思ったことをつらつらと書いてテレビ局へ送った。
するとしばらくして、テレビ局から電話が来た。
「一度こちらへ面接に来て下さい」
なんですと?
まじですか?
私は家族に「サハラ砂漠に行くことになるかもしれない。砂漠でトイレの時お尻をサソリに刺されて死ぬかもだけど、とりあえず面接に行ってくる」と、告げた。
そして面接に向かった。
「こちらです」
と、招かれた部屋。
なんとなく空気が淀んだ感じ。
向かい合わせて並べられたスチールの机の上には、書類が無造作に重ねられていて、お互いの机…いや…お互いの顔さえ見えないだろう。
そんな書類の山の机を通り過ぎ、奥まったところにあるこじんまりとした応接セット。
私は指示されたソファに座る。
テーブルを挟んで担当者が座った。
テーブルの上の灰皿には溢れんばかりのタバコの吸い殻。
(誰か捨てろ!)
「コロンさんの感想を読ませていただきました。サハラ砂漠に行く事になれば2週間くらいは戻れないけれど、仕事は大丈夫?」
当時、私が勤めていた会社はとてつもなく緩い会社だった。
私が即戦力ではなかったこともある。
私が2週間休んでも平気だ。
てか、上司がそんな人だった。夏休み明けに初日にいた事がない。みんなもそれを毎年の事と笑って了承していた。
今日の面接の事も話してある。
緩い…驚くほど緩い会社だった。
「はい。2週間でもそれ以上になってもたぶん大丈夫だと思います」
「そう。それで…「ねえ!君!フランスの香水に興味ある?」」
えっ?
私はサハラ砂漠担当の人の顔を見る。
明らかに「あちゃー」とした顔をしていた。
「君さ、フランス行かない?香水の歴史を調べて来て欲しいんだけど!」
ねえ、ここでみなさまに質問です。
目の前に、今までサハラ砂漠の交渉をしていた人がいて、そこで突然「君!フランスに行かない?」と聞かれたらどう答えますか?
日本人の心理として、サハラ砂漠担当の人への恩義…ではないけれど、ここまで来て「あ、フランスに行きたいです。お願いします」とか言えますか?
いくら私が緩い会社勤めだったとしても、社会人としてのマナーは重んじております。
サハラ砂漠担当者の顔を潰すような事は出来ないですよね?
私は「そうですね…香水もとても興味あります。でも、サハラ砂漠の方に行きたい…です…」と、答えました。
フランス担当の人は「ふうん…つまんね」と言って去って行きました。
ショック…
サハラ砂漠担当の人が「今日はありがとうございました。採用する場合は後日連絡します」と言った。
後日は…ないな。
と、思った。
フランスかぁ…行きたかったなぁ〜。
サハラ砂漠よりフランスに行きたかったな。
ぼんじゅー…しるぶぷれ〜
とかね。
サハラ砂漠はトイレが心配だったし?お尻がさ、サソリに刺されたら川口隊長の歌みたいになったりしてね…
…。
ちぇっ!
ちぇっ!
その後、毎週その番組を観ていたけど、香水もサハラ砂漠もなかったよ。
そして何回かして番組は終了した。
そしてそして。
私はその後病気になって一か月会社を休んだけど、何の問題もなかったよ。
拙い文章、最後までお読み下さりありがとうございました。
《 この時かかった病気の話を、次作で書いています 》




