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1945~友よ辛かろ…

作者: 栗林

※フィクションです。赤尾さんなどの人物は実在しません。

(多分)

1945年、ここは満州。

ここに1人の男がいた。赤松要。陸軍の戦車兵である。

彼はわりと前からここ満州にいるのだがロクな戦闘を経験せず最近たびたび来る空襲におびえる日々が続いていた。


彼は20代で戦車の砲手である。

「あ~あ、内地じゃ大変みたいだけど。俺達はなにしてるんだろうな」


「まったくだ、ここの所は空襲にやられっぱなしだ。ったくかつて精鋭を誇った日本陸軍はどこへいったんだ」


「まあ…仕方ないな。硫黄島も沖縄も陥ちて内地じゃ本土決戦やらの準備がされてるらしいからな。大陸でも最近は負けてきているって話だし。そのうち俺らも本土決戦に動員されるんだろうな」


戦友と話す赤松。

この国はどうなるのか本当に心配していた。

今やサイパン、テンアン、グアムが玉砕、そこを拠点にB-29が飛び立ち今年3月硫黄島もアメリカのものとなりP-51を護衛につけてやってくるようになった。


6月にはとうとう沖縄までもが陥落しいよいよ本土決戦が近くなっていた。

現在は毎日空襲、B-29を満足に迎撃できる戦闘機などあるわけもなく戦闘機に対しても搭乗員の消耗が激しくベテランは減りそれどころか単純に航空機の性能差も深刻になってきて今や開戦時最強と言われた零式戦(零式艦上戦闘機、通称零戦)もグラマン(F6F)やシコルスキー(F4U)などの米軍機に対して劣勢であった。


「はぁ…」

だがそんな赤松含む日本側の人々にとって、8月に恐怖の時間が訪れることになった。


「ソ連が満州に侵攻を開始した、ここにもいつかは来る」

上官がそう赤松らに伝えた。

8月8日、ソ連が対日宣戦布告、9日ついに攻撃が開始された。



赤松達が恐怖を見るのは8月10日の事。

突如彼らの前にソビエトの大部隊がやってきたのである。

「敵襲!!!」


「ソ連だぁぁ!!」

そう叫ぶ兵士の声が聞こえた。

赤松は戦車の砲手である。戦車に乗り込んだ。

っが彼はこう思っていた。

(終わったな…)


日本軍が相次ぐ敗北をしている事から彼はここでも負けると確信し死ぬだろと思った。

「赤松、最後かもしれん」


「中尉!我々は皇軍です!」

上官の前ではそういう。だがその上官も…

「いや、いい。もう日本は終わりだ。だが帝国軍人として最後の一兵まで戦おう。大和魂を赤にぶつけてやるんだ」


「はい!!」

日本は終わった。そう上官はいっていた。

だが赤松はかえってその言葉から勇気をもらった。


最後の一兵…そう、彼には守らなければいけない家族がいるのだ。

父さん母さん、まだ戦えない弟や妹。そして彼が好きだったあの




『守る』ために彼は立ちあがった…


ソビエトはすでに攻撃を開始していた。

赤松らら日本軍はそれを迎え撃つため戦場に赴いた。


「前方戦車多数!!」

ここに送り込まれたソ連軍は現地のあまり使えない者もいた。

しかし中には独ソ戦を生き抜いた精鋭兵士もいる。

なんたって独ソ戦で鍛え抜かれた部隊も満州に来ているからだ。



不運な事に赤松が乗る戦車が出会ったのはT-34。

ヨーロッパではドイツ軍を苦しめ武勲をあげた。


「距離50!!撃ち方はじめ!!」

なんとかそこまで距離をつめる事に成功した。

…というのも前方の車両は100mまで近づいたがその弾は弾かれ逆に撃破された。


ドドン!!!


チハの57mm砲は勢いよく火を噴いた。

しかしそんなものT-34にはビクともしなかった。

「弾は命中しました!ですが敵には効いてません!!」


「ウラァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」

その頃別の戦車の後ろからソビエトの歩兵が叫び声をあげ突撃を敢行してきた。

日本の兵隊もたちむかった。


満州の丘に…銃声響く…砲撃の音響く…

航空機の音響く…男達の雄たけびが響く…


だが結果的に日本軍は負けてしまった。

赤松達も最後の攻撃をする時が訪れた…



「突撃!!!」

中尉は突撃を命じた。

戦車で体当たりしてT-34を撃破しようというのだ。

「天皇陛下万歳!!!!」


















彼は…死ねなかった…

体当たりし戦車は壊れ負傷はした。しかし死ぬ事はできなかった…

その後ソ連の捕虜となりシベリアに抑留され毎日の重労働、しかし1949年帰国に成功する。



赤化した者もいた。

自分が乗っていた戦車の中にも。

抑留中に死んでしまった仲間もいた。彼の戦車の車長など…


まだ帰れない者もいた。彼の戦友の中にも…

もちろん死んでしまった者も多い…



短い間だったが彼も戦い地獄を見て戦後もシベリアで地獄の生活を送った。

帰国後も苦しい生活を営んだ。だが…

「赤松さん!」


「…千恵子さん!?」

帰国後、苦しい生活を送っている最中、奇跡的に恋人との再会に成功した。


「よかった…よかった!!」


赤松は一瞬転びそうになった。しかし持ちこたえ千恵子という女性を抱いてあげた。

こうした『偶然』もあり幸せはつかめた。だが彼はシベリアで抑留されている友が心配であった。

いつも友を想った。戦後彼は復興を手伝った。いつも戦場やシベリアで死んだ友や部下、上司達を想いつつ…

























墓の前には80代後半となった彼がいた。

もう足が悪くなり車椅子に乗っていた。最愛の妻千恵子も3年前に他界した。

そんな彼の車椅子を50代の息子が押しその妻と孫娘が荷物をもっていた。


「おじいちゃんなんで?ここうちの墓じゃないじゃん」

女子高生の孫娘が赤松老人に訊いてきた。

「この人に悪い事をしたからじゃ」


「そうなの?」


「相当な…」

(ごめんなさい中尉…私もシベリアでお供すべきでした…みんなに伝えてやってください中尉。国は平和になりました…安らかにお眠りください)


「赤松さんお久しぶりです」


その時現れたのは近所に住む老婆であった。墓参りのたんびに出会う。

この老婆は戦争で弟を失ったらしい。飛行機に乗ってどこかへ行ってしまったという証言からおそらく特攻に出撃し散華したのだろう。

(弟も、その友も辛かったろう…)


「さ、そろそろいきましょお義父様」


「おおう」

元帝国軍人は今もひっそりと生活していた。

そんな彼も、最近ほかの元兵士と同じく閉ざしてきた口をあけ始め自らの体験を若い世代に知らせようと足が悪いにもかかわらずがんばっていた。

そしてその心には常に辛かったであろう友の事があった…



用語?解説:

満州…中国東北部およびロシア沿海州を含めた北東アジアの特定地域を指す地域名。

陸軍…大日本帝国陸軍のこと。

本土決戦…行われるはずだった戦闘。その前に終戦となった。

ウラー…ロシア語て万歳。

B-29…アメリカの戦略爆撃機。日本を焼け野原にした。

P-51…マスタングともムスタングともいうアメリカの戦闘機。

日本はおろかドイツでさえ手を焼いた。

F6F…グラマンとも呼ばれたアメリカ軍の艦載機、最も多くの日本機を撃墜した。

F4U…コルセアと呼ばれていたアメリカ軍の艦載機。日本軍からはシコルスキーと呼ばれていた。最初の頃こそ負けたがやはり零戦の強敵となった。

零式戦…零式艦上戦闘機の事、緒戦こそ圧倒的な強さを見せたものの後半は搭乗員不足や単純な性能不足で苦戦。

チハ…九七式中戦車のこと。装甲が25mmと薄く主砲の威力も弱かった為初期では活躍できたが米英の戦車に惨敗。

T-34…ソ連の戦車、ドイツに衝撃を与えた。満州にも送られ無敵を誇ったらしい。

対日宣戦布告…ソ連が終戦間際に行った日本に対する宣戦布告。戦闘は終戦後まで続いた。



久々に短編を書いてみました。

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