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青色の薔薇シリーズ

七夕祭りで願うこと〜青色の薔薇〜

作者: キハ

こちらは青色の薔薇

https://ncode.syosetu.com/n1246hk/

の七夕バージョンスピンオフとなります。


前作を知らない方でもお読みいただけます。

ただ、最後のみんなのお願い事では「?」ってなるかと思いますが、小説自体は読み進められます。



 7月7日。

 七夕として学校では行事が行われる。


 七夕祭り。自分のお願い事を短冊に書いて教室に飾られる。

 今、その短冊を配られた。

 つまり、「願い事」を書かなければいけないのだが──。


「はぁー……」


 思わず栄生(えいな)はため息をついてしまった。

 毎年恒例の七夕だが、そのたびに願い事を考えるのに苦労している。


 他の生徒はスラスラと書いていた。

 感心しながら栄生がチラリと近くの生徒を見やると苦笑してしまう。


「テストで100点ずっと取れられますように」

「お年玉が増えますように」

「頭が良くなりますように」

「スイッチが買ってもらえますように」

「イラストレーターになれますように」


 おいおい。心のなかで栄生は突っ込む。

 まるで願望の塊だ。もう小6なのに、とっても子供っぽい……と思いながらも、自信満々に思ったことを書ける勇気が羨ましい。

 

 栄生だって願い事はたくさんある。

 けれど、すぐ思いついたことを無邪気にそのまま書くのは気が引ける。

 そして現実的に考えると書けないものだってある。

 ……なら何を書けばいいのか。そう思っていつも悩んでしまう。


「栄生ちゃんは何にした〜?」


 友達のリコがにこにこしながら近づいてくる。

 栄生はまだ決まってないと答えると再びため息をついた。


「そういうリコは?」

「わたし?わたしは、お菓子をたくさん作れますように」

「あーやっぱね」


 いかにもリコらしい。

 クッキングが好き、と前聞いたことあるのを思い出して栄生は微笑んだ。


「頑張れ。叶うこと信じてるよ」

「ありがとう……。栄生ちゃんはまだ決まらないの?」

「だってしょーがないじゃん!願い事なんてさ、たくさんありすぎてすぐ書けるわけないし、そもそもここで願っても叶わないし……」

「そういうとこを楽しむんじゃないの?」

「え?」


 栄生が聞き返すとリコはうなずいた。


「ほら、叶わないかもしれない願い事を書いて笑って楽しむのが七夕みたいな感じだけど?」

「あ、できないかも。私、現実主義だし」


 なんて言って栄生は少しおどけてみる。

 リコは苦笑してまあ栄生らしいかなと呟くと短冊に目を戻した。


(あーどうしよう。今の時間内に書かないと駄目だからなあ……何書けばいいの!?)


「あ、そういう時は世界平和でも書いとけば?」


 パニクってる栄生にまたも無責任な声が飛んできた。


「あ、ごめん。って晃のことだから絶対そう思ってないよね」


 ほぼ呆れながら栄生が前の席の男子に返す。彼は(こう)という。


「いや半分思ってるけど〜うーんどうだろうね。ま、こんぐらいが丁度いいだろ」

「何だその基準は……」

「俺自身のことだと結構出てくるから世界平和って書いとけば何とかなる」

「……──」


 思わず返す言葉をなくした栄生である。

 そこへリコが何かを思いついたかのように少し笑った。


「好きな人とか──」

「あのー!そんなこと短冊に書く人いないでしょ!?」 


 急に赤くなり、リコの言葉を遮ると栄生は咳払いをしてごまかす。


「あー赤くなってる。わたしは栄生の好きな人気になるけどな」

「あ、俺もちょっとだけ気になる」


 二人に乗り出されて栄生は困った顔をした。


「今は好きな人居ないから。質問攻めにしないで?」

「だと思った」


 とバッサリ晃が言い捨てる。

 栄生は本日三度目のため息をつくと、


「何でそもそも七夕から好きとかになるわけ?そもそも好きな人を書く人っていないと思うんだけど」

「あ、いたよ?」

「……え?」


 リコがそこに速攻で答えたのに一瞬反応が遅れた栄生。

 次の瞬間、「どういうこと!?」って騒ぎ出す。


「うーん、名前言っていいのかな?川島亜美ちゃんなんだけど」

「……あのあみ、ね」


 栄生はそんなに仲良くないが、クラスメートなので言葉を交わしたことがある女子だ。

 近くで晃もあーという感じで呟く。


「別に相手方の名前は書いてないけど、両思いになりますように、みたいな?」

「……すっごいねあの人」


 苦笑しながら栄生は呟く。

 何というか、勇気があるのかそれとも単なる何も考えてないのか……とても微妙なとこである。


 晃はというと何もリアクションできないのか苦笑もせずにため息をついていた。


「……ま。それより、これ書かないと……」

「あ、ごめん。邪魔しちゃったかな?わたし席に戻るね」

「あ、大丈夫だけど」


 栄生はそう言いながらも短冊に再び目を下ろした。

 好きな人なんていないし、そもそもいても正直に書くわけないし──他に欲しいものなんてありすぎて書ききれない。

 それなら何を書けばいいのか。分からなくて栄生は頭を悩ます。


 七夕の短冊には将来の夢を書いていた人も多かった。

 イラストレーターになりたいというクラスメートの願い事を思い出したのだ。

 何になりたい……?

 そもそも栄生は何になりたいかなんてまだ決まってない。


 だから書けない……。


(私に将来の夢があったら書けたのになー)


 そこで、あ、と思い立った。

 ならば。そんなことも書いていいのではないか。


 そう気付くと栄生はすぐさま短冊に鉛筆をスラスラと走らせた。


(これで……いいね……!)


 書き終えると、席を立って先生に渡す。

 友達にはまだ見せないでおく。まあどうせ後で飾られるのだろうけど。










































【青色の薔薇メンバーの☆願い事☆】


栄生  ☆自分の将来の夢が見つかりますように☆


リコ  ☆お菓子をたくさん作れますように☆


晃   ☆世界平和☆


シュン ☆短距離だけでなく長距離も速くなりますように☆


沙羅  ☆みんなの夢が叶いますように☆


あみ  ☆とある人と両思いになれますように☆








今日、皆様の願いが叶うことを祈ってます☆

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