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 嫁いで2年目に差し掛かる頃ランスル様の弟のサルトさんが留学から帰って来た。


父や兄は王都で手が回らない事から領地経営のために留学していたそうな。


 サルトさんは私と一緒に領地に帰ってからは領地を見て回り、的確に現状を把握していたわ。経営学を学んだらしいから私がするよりももっと良い領地になりそうよね。



 サルトさんに領地の全てを任せるようになって、私は昼、晩の食事、特産品生み出し係になった。


前世チートを生かして王族だけが食べているという白パンも邸だけで食べているのよ?酵母って作るのは簡単だけど、日持ちがしないのよね。


もっと酵母について知識があれば良いのだけどそこは私の知識の限界。でもハヌマンやアンナやカリン、サルトさんも喜んでるから良しとするわ。


この間、カリンが町の人にこの酵母を教えて神と崇められたらしいわ。徐々に広がり、様々な酵母が試せる環境になるのは素敵よね。



なんだかんだで嫁いで3年が過ぎた。


「サルトさん、私はこの侯爵家へ嫁いで3年が過ぎたわ。


ようやく領地も軌道に乗ったし、サルトさんも来てくれたし、領地の事は心配はしていないの。


お義父様達からも許可は頂いているし、私は伯爵家に戻りますね。」


 これにはみんな驚いていたわ。アンナはオイオイと泣き始めてしまうし。サルトさんからは必死で引き留められた。


けれど、私はあくまでランスル様の嫁だもの。


「サルトさんと会って2年程だけれど一緒に居てとても楽しく過ごせたわ。有難う。」


「グレース姉様。こんなに美人を放っておく兄は馬鹿な奴だよ。僕はグレース姉様を必ず迎えに行くから!」


「嬉しいわ。有難う。」


そう言うと痩せて綺麗になった私はカリンと教会へ出向き、白い結婚として離縁の手続きを済ませて伯爵家に戻った。


今後も侯爵家と関わりがあるから侯爵様に確認を取った上での手続き。穏便に済ませないとね。


お義父様もお義母様も大泣きしながら離縁に賛成してくれたわ。ランスルは馬鹿者だって罵りながら。


どうやら実の息子より私を本当の娘としてくれていたみたい。


この世界は男尊女卑。子供は大人の所有物という社会意識の中、嫁の地位は最下位や奴隷と言っても過言ではないのに。


有り難い事だわ。


 伯爵家ではお父様もお母様も痩せて美人になった私のためにドレスを新調して舞踏会に行くように勧めたわ。


というか痩せて全ての服を買い変える羽目になったのは嬉しい誤算ね。でも、舞踏会でこんな脛に傷があるような女に声を掛ける人なんて居ないのに。


「グレース、今日の舞踏会は会場入り口でエスコートしてくれる人と待ち合わせをしているから心配しなくてもいい。」


お父様は何か知っている様子。


「さぁ、出発しよう。」


 家族みんなで舞踏会なんて久しぶりだわ。今年は新しく弟の嫁が我が家に嫁いできたの。


可愛くて賢くて出来た嫁だわ。私は小姑となった。口煩くはしてないつもり、だけれどちょっと不安ね。会場入り口で待っていたのは・・・。


サルトさんだった。


「・・・サルトさん。」


私は足を止める。


「グレース姉様。僕は必ず迎えに行くと言ったでしょう?」


お父様もお母様も弟もその嫁もみんながニコニコしている。


「どう、して?」


「まぁ、会場へ入ってしまおう。」


私はサルトさんにエスコートされ会場に入ると、先に侯爵様夫婦が手招きして待っていた。


「お久しぶりです。侯爵様。」


「もう、お義父様とは呼んでくれないのかい?」


「ど、どういう事かよく分からないのですが。」


私以外は知っているの?


戸惑う私の手を引き、サルトさんにダンスを誘われる。


「サルトさん、どうなっているのかしら??」


「グレース姉様が伯爵家へと帰ってからすぐに僕も侯爵家へ後を追って帰ったんだよ。ハルマンとアンナの強い押しもあってね。


実はグレース姉様が伯爵家へ帰ってから毎日、僕は伯爵家に行ってたんだよ?君のお父上にお願いに上がっていたんだ。


最初は門前払い。兄がしてきた事を伯爵様は怒り狂ってた。当たり前だよね。


でも、僕は諦めずに毎日通って伯爵様に君に会いたい。君と共に過ごしたいと言い続けたんだ。


そしてとうとう君のお父上は折れてくれた。グレース姉様の中で欠片でも僕と一緒に過ごしたい気持ちがあるならと。


それに今日君をエスコートして更に思ったんだ。グレース姉様は誰よりも美しい。周りを見て?君に話しかけたくてウズウズしている男達がそこかしこで君を狙っている。


僕が君を必ず守るよ。


僕はグレースを一目見た時に君を好きになった。すぐにとは言わない。友達からでも構わない。だから弟のサルトさんとしてではなく、1人の男、サルトとして見て欲しい。


僕は今すぐにだって結婚したいと思っている。どうだろうか。」


えっと、私は急過ぎる告白に立ち止まってしまった。すると、サルトは跪き指輪を差し出す。


どうすればいいのかわからないわ。


でも・・・嬉しい。


 サルトさんと2年楽しく過ごせたのは事実。過去に一度も告白をされた事のない私は告白一つで舞い上がっている。


と、とりあえず、返事よっ!


「れ、恋愛初心者なのでっ、どう返せばいいのか。子どものような軽いデートから始めて下さるならっ。お受けし、しますわっ。」


初々しい私の言葉や仕草に周りの夫人達からは甘酸っぱいとニヤニヤされているわ。なんて恥ずかしいのっ。


 私はサルトさんに手を引かれ家族の元へ向かう。お父様は約束は分かっているな?とサルトさんに笑顔で言っていた。


私は舞い上がり過ぎて、フワフワな感覚が数日続いたわ。カリンからその度に注意される事となった。


後で知ったのだけれど、お父様に舞踏会で娘に群がる狼から守り抜いたら娘とのデートを考えてやってもいいと話してたとかどうとか。お父様ったら、もう!

因みにグレースの体重は1年で20キロ近く落ち、2年で15キロ、3年で15キロ近く落ちています。

サルトはもちろん巨漢とは言えないまでも太っているグレースを側で見ています。

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