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4 妹のおさがり

「はぁ、また今度もこんなに……大体、髪色も瞳の色もちがうのだから私に似合うはずが無いじゃない」


「そう言うな。無駄に捨てることになっては職人に恨まれるぞ」


「そうよぉ、仕立てはいいんだから。少しリリーちゃんに合わせてウエストとバストは調整して……、リリーちゃんはとってもお化粧映えするから何を着ても似合うわ。私がやってあげる」


 妹を王都に送り出して2年目の夏を迎えようとしていた。社交シーズンが終わるたび、お父様とお母様は領に帰ってきている。


 因みに、この国の社交シーズンは春と秋だ。夏は食べ物が悪くなるし、冬はパーティーをするには寒すぎる。部屋を暖炉で温めるようにはいかない。そして今は春の終わり、夏がもうすぐそこまで来ている。


 お父様とお母様に会えるのも、領の運営がつつがなく……そして少しずつ新しい制度を取り入れて豊かになっている事を報告するのも、私には嬉しい時間だ。


 ただ、帰ってくるたびに……私の部屋のクローゼットにはもう何も入らないのに、山のようなドレスと宝飾品が送られてくる。全部妹のおさがりだそうだが、どれも一度しか着てないような殆ど新品で、私は嘆息した。


 確かに、私は領主代行としてある程度の社交活動をする必要はあるが、それに1回ずつ着て行ったって余ってしまう。こんなものを着て仕事はできないし、客間の一つを衣装部屋にしてなんとか押し込んでいる。


 私がいくら領を豊かにしても、領政を行う資金と我が家の家計は別物だ。この程度で傾くような事業は行っていないにしても、余りの無駄遣いはどうかと思う。


 最初の……あの時、幼い頃にローズが寝ている私の顔に投げつけ、靴で踏みにじったほぼ新品のドレス。あの時から、私は新しいものを買って貰えなくなった。妹が一度袖を通したもの、履いた靴、使ったアクセサリー、それらをおさがりとして受け取る。


 私は勉強の方が好きだったし、私と妹の体型は似ていたから……今は私の方が働いている分細く、胸はローズの方が発育がよくなったのだが……気にもしなかったし、私に気を遣って社交の場に出るときには使用人がドレスを手直ししたり、私に似合うコーディネートを考えてくれたりして……問題はなかった。


 そして私が社交界デビューした時、その時ばかりは私も幾つかのドレスとワンピース、靴や宝飾品を買い与えられた。同時に、ローズも買ってもらっていたが。


 一度袖を通したものでも少しは型やリボンやレースを付け替えて着ているそうだが……お父様は少し、ローズに甘すぎる。私は自然とドレスを手に取りながら顔をしかめた。


「あら……?」


 そのドレスのスカート部分に、私は汚れを見つけた。なんだか白い、カサカサとした……鼻水でも乾いたような……、そこまで考えて、私はドレスを反射的に投げてしまった。


「リリー?」


「どうしたの、リリーちゃん」


 私はコレを実際に見た事は無いが、性教育というものは当然受けてきている。この汚れがドレスに着いているという事は、……ローズはこのドレスを着たまま、殿方と……。


 胃の奥から込み上げる物があった。嫁入り前、しかも家格の釣り合う相手を探しに行った妹は、とんでもない事をした。


 婚約者も居ない状態で、ローズは男性と肉体関係を持っている。

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