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一月海は怖がらない  作者: モノ
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騒がしい休日の朝

 朝。


 けたたましいインターフォンの連打によって起こされたのは、まだ夜が明けるか明けないかくらいの午前五時のことであった。


「あーもう主人が来るって分かっているならドアのカギくらい開けておきなさいよ!」


「家のカギを開けっぱなしにして寝る奴がどこにいる。そしてここの主人はお前じゃない」


 正確に言えば俺でもない。俺の養父だ。


「何言っているの。昨日自分で言ってたじゃない。『毒までは』って、『までは』って。つまりそれまでの言葉はあんたの口自らで承認されているようなものなの。さっ、早くご飯を作りなさい」


 そういってづかづかと一月は他人の家に押し入ってきた。


「……お前家族はどうしているんだ?」


「一人暮らし!だから上の一人用の部屋なの。あんたと違ってね。それに昨日も言ったけど私は火を使うと燃えるものは全部焦がしちゃうから自炊ができないのよ。だから朝食を作りなさい」


 どこまで上から目線でものをいう奴なんだ。それにお前はパイロキネシスでも使えるのか?……と思いつつも二人分の調理を文句を言わずにやり始める自分の性格の良さには呆れてしまう。ここまで手伝うなんて契約書には書かれてなかったし、そもそも契約書なんてものはなかった。


「今日は作ってやるから次から食材かお金を持ってこい。俺の食費じゃ二人分も賄いきれねえよ……。あと名字か名前で呼べ」


「はいはい、絞貴でいいんでしょ。嫌悪感たっぷりな絞貴、早く美味しい朝食を作りなさい」


 本当は一人分の人件費も取ってやりたい。つうか普通に名前で呼ぶのかよ。


「たく……、今までどうやって生きてきたんだ……」


 小松菜と油揚げを切り、豆腐と一緒にみそ汁に。一部の小松菜は胡麻和え様にして、ついでにフライパンに油を引いてハム二つと卵を二つ割って温める。みそ汁をお椀に注いで、胡麻和えと目玉焼きを二つの皿に分けてテーブルへと運んだ。


「できたぞ~ってあれ?」


 一月がいなくなっていた。かすかに聞こえる息を手掛かりに、テレビの前のこたつを見ると、体を丸めてこたつ布団にくるまった一月を発見した。電源は自分で入れたらしい。

 こたつの熱気で白い顔は赤く染まり、完全に無防備な寝顔につい見とれてしまう。


「人の家で寝るなよな……。つーか風邪ひくぞ。おーい起きろー」


 体を揺さぶればセクハラと訴えられる時代に生まれているので布団をはぐってパタパタと叩く。


「うな……?あっ、ちょ!」


 起きた。クラスメイトとはいえ他人の家で寝落ちしていたんだ。昨日はさぞ眠れなかったのだろう。さあバツの悪そうな顔を拝ませていただこうか。

 一月は苦虫をかんだような顔と、若干引きつった顔を見せたが、すぐに立ち上がってできあがった朝食の方に興味をひかれた。


「へえ。普通の朝食ね。さっさと食べましょ。もう六時だわ」


 俺にはなぜそんなに急いでいるのかがわからなかった。


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