出る杭は・・・
~前回のあらすじ~
リールの妹を取り戻すために緊急クエストを受けたエルートとリール。
ダンジョンに潜入して色々あり、リールの父親が指定討伐モンスターであった。リールの父親はモンスター化の薬の研究データを処分した罪で人体実験に使われ、ダンジョンに逃げ出した。
エルートとリールは協力して父親を倒し、ダンジョン入り口に帰還するのであった。
~ダンジョン入り口・広場~
エルートとリールが帰還の巻物によって転送された。外は真っ暗になっていた。
エルート『大分時間が経った・・・・・な。』
リール『ダンジョンは時間の流れが不安定だからね。気まぐれに速かったり遅かったりするのよ。』
ドサ!
エルートは倒れた。疲労とダメージと緊張感が途切れたことによってエルートは気を失った。
リール『エルート!・・・まぁ無理もないわね。』
リールは人間化してエルートを引きずって、ダンジョンの掃除部屋に向かった。
ダンジョン掃除部屋に人影が見える・・・そこにはロシーアが腕を組んで壁に寄りかかっていた。
リール『ロシーア様!』
ロシーア『リール。無事のようだな。引きずってるそいつは大丈夫か?』
リールは苦笑いをしながら
リール『何とか生きてます・・・。ハハハ・・・』
ロシーア『頑丈な奴め。』
ロシーアはリールに小袋を投げ渡した。リールは両手でキャッチしたため、引きずっていたエルートが地面に倒れる。
エルート『グフ!』
リール『あ!エルートごめん!・・・あのコレは?』
ロシーア『ただの傷薬だ。そいつにつけてやれ。じゃあな。』
リール『え!?それだけですか!?何か聞いたりしないのですか!?』
ロシーア『今は聞かない。お前の信念を尊重する。』
その言葉を残してロシーアはいなくなっていた。
リールはあの日のことを思い出していた。
リール『ロシーア様。私頑張るから!』
父親が死んで内心酷く落ち込んでいたが、ロシーアの言葉を聞いて少し気力が湧いたリールであった。
リール『負けないぞ~~!!』
リールは勇み足で掃除部屋に1人で入っていった。
エルートを忘れて・・・・・。
次の日
~ダンジョン入り口・掃除部屋~
早朝・・快晴
あの後リールはエルートの存在を思い出し、部屋に入れて看病した。そのおかげもあってかエルートは普通に歩けるくらいには回復していた。
エルート『昨日なんか俺に失礼なことしなかったか?』
リール『・・・してないわよーーー。そんなことーーー。』
リールは完全に棒読みになっていた。
リール『看病もしてあったでしょ!』
エルート『いやーーそうんだけどさーー。腑に落ちないんだよなぁ~』
リール『今日は報酬を貰いに行くわよ。ここでの生活も最後ね。何か持っていきたい物があったら袋にいれておきなさいよ。』
エルート『え!町に住めるのか!やった~~~!!早く行こうぜ!』
リール(なんとか話をそらせたわ)
2人は準備を済ませ、掃除部屋を前にして色々思い出していた。
エルート(思えばここでの生活は最悪だったな・・・・色んな意味で死にかけた事しかない・・・)ズ―――ン
リール(エルートに会わなかったらここまで上手く事が運ばなかった。こいつは禁忌の子だけど良い奴で良かった。)
2人はダンジョン掃除部屋を後にして、城下町に向かった。
~農村~
ダンジョンの樹海を出て農村に着いた。エルートが歩いていると(リールはピアスに擬態中)村民に声をかけられた。
村民『エルートさん!コレ持ってってよ!』
村民『このお仕事やってくれないかねぇ』
数人の人だかりが出来ていた。
エルート『スミマセン!今日は城下町に用事があって!また!』
少年(なんだよ!ヒーローぶってこの村のこともよく知らねえくせに!)
エルートは足早に城下町に向かった。
エルート『なんかあのクエストやって以来扱いが良いな!』
リール『まぁ。あんな報酬でやるクエストじゃなかったしね・・・』
そんなこんなで城下町に着いた。
~城下町・冒険者ギルド~
2人はさっそくギルドに到着した。どよめくギルドの冒険者達。
冒険者『おい!マジであのクエストやったのか?』
冒険者2『普通死ぬだろ。』
冒険者3『なんか噓くせーーんだよな~。レベル含めて。』
エルートのことをよく思わない人物も以前より増えていた。
エルート『・・・・・』
リール(何よ!大した修行もしていないの癖に、批判だけはいっちょ前ね!)
受付に着いたエルート。
受付嬢『お疲れ様です。エルート様。』
エルート『緊急クエスト終わったんだけど。』
受付嬢『でしたら、何か証拠になるものはありませんか?』
エルートは袋からゴソゴソと不気味な種を取り出す。
エルート『コレ。討伐したモンスターから出てきた。』
受付嬢『ありがとうございます。』
エルート『じゃあ!報酬を・・・・。』
受付嬢『すみません。一度この品を王都に送って証拠物かどうか審査しますので1日お待ちください。』
エルート『え!!!そうなの!?』
受付嬢『王都の緊急クエストは私どもでは判断しかねるので、このような方法を取っております。すみません。』
エルート『・・・・1日ね・・・。』
エルート(リール!!今日は野宿になるかもしれないぞ!!)
リール(農村に泊めてもらいなさいよ!)
エルート(また仕事頼まれるだろ!!)
小声で何か話ているエルートを見かねた受付嬢が言った。
受付嬢『・・・ですが、私どもはエルート様のことを信用して一枚金貨を先に報酬としてお渡しします。』
受付嬢は金貨1枚を差し出す。
エルート『助かりますぅ!!!』
受付嬢は引き気味に苦笑いをした。
受付嬢『・・・・いえいえ・・・。』
エルートは意気揚々として金貨を受けとった。
エルート(ついに!!ついに!!ここまで来た!)
エルートが喜びに浸っていると、強面の冒険者がエルートに突っかかってきた。
強面冒険者『おい。小僧その金貨、寄こしな』
強面の子分1『痛い目に見る前にわたしちゃいなよ~』
強面の子分2『兄貴は強いぜぇ~!!』
エルート(この世界にもしょうもない奴っているんだな。あ!貴族がいたか。)
エルート『・・・嫌だと言ったら?』
強面冒険者『このクソガキ!!!』
強面冒険者が腕を振り上げて顔面めがけて拳を突き出した。
エルート殴られる寸前で、口から強面冒険者の拳に向けて衝撃波を出し、威力を殺した。
ドカ!
エルート『うわあ!』
エルートは殴られたフリをして、手で顔を抑える。そこからは赤い血が滴っていた。
強面冒険者(なんだ?手ごたえがあったような?なかったような?)
周りの冒険者がちょっとやりすぎという雰囲気が出始め、強面冒険者は金を取らずにそそくさと、冒険者ギルドから出ていった。
強面冒険者『なんだよ!ザコが!こいつは詐欺師だ!』
という苦し紛れの捨て台詞とともに。
受付嬢が駆け寄ってくる前にエルートは顔を抑えながら『大丈夫ですから』と言って、エルートもすぐに冒険者ギルドを後にした。
エルートが出ていったあとの冒険者ギルドは、色々な話が行われた。
冒険者『あいつってやっぱり弱いのか?』
冒険者2『やっぱり詐欺師?』
冒険者3『俺でも倒せそうだな。』
ガヤガヤガヤガヤ
~城下町・商店街~
リール『なんであんな奴にやられっぱなしなのよ!』
エルートは口をモグモグしながら言った
エルート『周りの俺を見る奴の目つきが鋭くなってる。モグモグ。あのタイミングであいつを倒したら、周りの冒険者は俺をもっと良くない目で見るようになる。モグモグ』
リール『・・・あんた何食べてんの??』
エルート『トマト』
リールはさっきの赤い液体はトマトだと察した。
リール『あんた!さっきのって!』
エルート『そう。農村からもらったトマトを血のりとして使った。モグモグ。』
エルート『出る杭は打たれるから、自分で打っておけばいいわけ。ゴクン。』
エルートはようやくトマトを食べ終えた。
リール『あんたってバカなのか賢いのかわからないわ・・・。』
二人はすぐに宿に向かった。
~城下町・宿~
宿主『いらっしゃ~い。1人かい?』
エルート『いや・・・。2人で・・。連れが後に来るので。』
宿主『そうかい。まだ昼過ぎだから・・・銅貨5枚でいいよ。一泊かい?』
エルート『一泊でよろしく。』
エルートは金貨1枚を差し出す。
宿主『じゃあこれおつりね。』
銀貨5枚がエルートに渡された。
エルート(金貨1枚は1万・・・銀貨1枚は千円ってとこか。)
宿主『じゃあこの鍵もっいってね~。201号室階段上がってすぐ右。』
エルート『どうも・・』
~宿・201号室~
リールは部屋に入るなりすぐに人間化した。
リール『先にシャワー借りるわ!』
エルート『・・・お・おう。』
エルートはフカフカのベッドに座って寝ころんだ。
エルート(なんてフカフカなんだぁ~~~~天国かぁ~~~)
エルート(ガサガサしていないし、虫もいない、カビ臭くないし~部屋もキレイ!!!)
数十分後リールがシャワーから上がってきた。
エルートは寝てしまっていた。
リール『エルート上がったわよ!起きなさい!』
エルートは飛び起きる
エルート『お前!ちゃんと服着ろ!!』
リールはタオル姿だった。
リール『私の魅力に気が付いた?』
エルートは無視してシャワーに行った。
リール『何よ。せっかくサービスしたのに。』
エルートもシャワーから上がると、リールは寝てしまっていた。
エルート『こいつってそこそこキレイだよな・・・』
リール『・・・スーー・・スーーー・・・』
エルートはそう独り言を呟くと、ベッドに入って即効で寝た。
エルート『・・・Zzzzzzzz』
リール(脅かしてやろうと思っていたのに/////これじゃあ起きれないじゃない////!バカエルート!)
エルートは知らぬ間にリールに仕返しをしていた。




