経験値授与
前回のあらすじ
突如としてダンジョン広場にモンスターが出現。
エルート・リールはモンスターに勝てないので身を隠している。
そんなときに騎士団や冒険者が広場に到着する。
低級騎士・冒険者、戦士がモンスターと交戦し、残り数体になったときにある誤算に気がつく。
中層モンスターが2体いるという・・・絶望的な誤算に。
~ダンジョン入り口・広場~
深夜
雨が降りしきる中、モンスターの反撃によって低級騎士や冒険者のうめき声が響いていた。
『ぐわぁ!!』
『おい!大丈夫か!?今たすけ・・』
『グハッ!!』
隊は崩れ、半分以上の人間が瀕死の状態になっていた。
戦士『やべぇ!!!このままだと・・・・全滅・・・!』
低層の雑魚モンスターはあらかた倒したが、2体の中層モンスターが猛威を振るっていた。
1体は毒蜘蛛、もう1体は先ほどのエルートの掃除部屋に侵入した犬型モンスターだ。
犬型モンスターは低層にもるし、雨・深夜という悪条件が重なり見間違いをしてしまった。
そもそも中層モンスターが出てくるなんて誰一人予想していなかったため、この誤算を生んだ。
戦士『おい!!!犬は俺に任せろ!!!毒蜘蛛の足止めを頼む!!!』
低級騎士・冒険者『おう!!!!』
犬型モンスターと対峙する戦士
戦士(とりあえずコイツをなんとかしないといけねぇ。俺がやられたら瀕死の奴らが食われる・・・。
結界も使えない・・・か。俺にできるのか・・・。)
戦士は中層モンスターと数回しか戦った経験しかなかった。レベルも恐らく敵の方が上。そして悪条件。
負ける要素は揃っていた・・・。
犬型モンスター『グルルルル・・・・ガウ!!!』
犬型モンスターは戦士に向かって直進した!
戦士(速い!!!だが直進なら対応できる!避けて反撃!)
戦士の読みは外れていた。
犬型モンスターは戦士に突撃する瞬間に左右ジグザグに動いてきた。
戦士(やば!!!)
ガジュ!!
戦士は脇腹を噛み切られた。雑魚モンスターをほとんど狩ったのも戦士で疲労は隠せなかった。
戦士『ハァ・・・・ハァ・・・・』
(やっぱりこの悪条件はきつい・・・。もう少し避けるのが遅かったら致命傷だったな・・・。避けれたのも運が良かっただけ・・・右か左かどっちにくるかわかりゃしねぇ・・・。基本性能もあっちが上・・どうする・・・。)
戦士は考えるのをやめた。
戦士『ッハ!!どっちにしろ命がけなんだ。やることは1つ!』
戦士は微笑し、犬型モンスターに向かって走り出した!!!
戦士『ウオォォーーー!!!!!』
犬型モンスターも直進する!そして突撃の瞬間、先ほどのジグザグ動きをしてきた!
その瞬間、戦士は左腕に持っていた盾を犬の左半身を狙って投げた!
戦士(読んでたよ!!!犬っころ!!!これで左には動けねぇ!!)
戦士(当然狙いは右しかなくなる!)
犬型モンスターは意表を突かれたが冷静だった。
犬型モンスターは右脇腹ではなく、頭を狙った。
戦士(中層モンスターが甘くねぇのは知ってるよ!!!)
戦士はその動きも読んでいた。というより戦士は捨て身の覚悟だった。それが功を奏した。
戦士は頭に噛みつこうとしてきた犬型モンスターを、左腕を犠牲にして受け止めた!
バグ!!!
戦士の左腕に牙がメキメキとめり込む。
戦士『グ・・・』
戦士はどんな攻撃がこようと、左腕を使って受けきるつもりだった。
戦士『くたばれ!!!クソ犬!!!』
戦士の剣は犬型モンスターの頭を横一文字で、切り裂いた!
犬型モンスター『キャン・・・・・』
最後の断末魔を上げて、犬型モンスターは倒れた。
戦士『よっしゃー!!!・・・イテテ・・・。』
安心したのも束の間・・・毒蜘蛛の抑えがきかなくなっていた。
『おい・・やっぱり無理だ・・・あいつももう戦えない・・・。俺は逃げる!』
低級騎士が樹海に向かって逃げ出す。
『おい!待て!』
1人が逃げ出すと、陣形が崩れ始める。
そして裏切りという行為が疲弊しきった低級騎士・冒険者の心を砕いた・・・。
『やっぱり犬死にはごめんだ!!!』
『俺も!』
毒蜘蛛を抑えていた人間がすべて樹海に逃げ、広場に残ったのは瀕死で倒れている低級騎士、冒険者と戦士だった。
戦士(いよいよやべぇ・・・な。)
時が遡り・・そのほんの数分前、ダンジョンの掃除部屋では・・・。
エルート『リールあの戦士がさっきの犬と戦ってる・・でかい蜘蛛もいる・・ヤバいぞ!』
リール『騎士団と冒険者がいれば何とかなるでしょ・・・。あんたが行って死ぬだけよ。』
エルート『やばい!!!逃げてる奴らもいるぞ!』
リール『え!?騎士団が逃げる!?低層モンスターに!?ちょっとそこどいて!』
リールは驚愕した。
リール(あの蜘蛛・・・中層指定モンスター!と戦士が戦っているのは・・・あの犬も中層モンスターだったの!?迂闊だった。私が先に外の状況を見るべきだった・・・。)
リール(このままだと全滅・・・瀕死の人間も食べられてしまう・・・。もうちょっとエルートには苦労してほしかったけど・・・しょうがないわね!!!)
リールはこの事件が起きてからすぐに経験値をエルートに与えなかったのは、モンスターと戦い万が一狂暴化したらエルートを殺すしかなかったからだ。
リール『エルート!!あなたに対して経験値保証契約を執行します!』
エルート『経験値の授与はまだまだ先とか言ってなかったっけ?』
リール『事情が変わったの!!仕方ないでしょ!人名優先!ロシーア様との約束もあるし!』
そう言うとリールの身体が光りだした。
エルート『リールお前・・・光ってるぞ。』
リール『プラチナスライムは命の危機や倒された瞬間に発光するの。この光が経験値になる。私だから出来るんだからね!感謝しなさい!』
リールはそう言うと、エルートに光の玉をぶつけた。
エルートの身体が光りだす!!
エルート(なんだこの力が漲る感じ・・しかもどんどん強くなるのを感じる!・・・これなら!)
時間は戻り・・・広場
雨はやみ、月明かりが出てきて視界が良くなっていた。
瀕死の戦士に詰め寄る毒蜘蛛・・・。
戦士は剣を投げつけるが、あっさりかわされてしまう。
戦士『万事休す・・・』
蜘蛛が戦士を足で一突きしようとする瞬間。
蜘蛛の体に木の棒が当たった。
コン!
エルート『おい!そこのバケモン!俺と勝負だ!!』
戦士(なんで出てきた!出てきても死ぬだけだぞ!・・・いや待て・・)
戦士『あいつ・・・明らかに強くなっている・・・。』
リール(月明かりに照らされたあいつを見ていると、あの姿を思い出すわね。その時は私が!)
リールはエルートの狂暴化する可能性もあると考え、即死の薬を準備していた。
エルートは月明かりに照らされ、蜘蛛と対峙していた。
エルートはレベルが大幅に上り油断していた。そして自分がどのくらい強くなったのか理解していなかった。
エルート(ふっふっふーー。ここはパンチ一発で終わらせるか!)
エルートは蜘蛛に向かってダッシュ!スピードは格段に上がり、蜘蛛にパンチをしようとした。
エルート(あれ・・・??動けないぞ・・・?・・・あれ・・)
なんとエルート簡単に蜘蛛に捕まっていた・・・。
リール・戦士(やばい!!!)
エルートは蜘蛛にストロー状の口のようなものを、腹に刺された!
ブス!!
蜘蛛は腹が減っていたらしく、先に食事をする素振りだった。
エルート『抜けろ!!こんなキモイの!!うわあああああ!!!!』
蜘蛛は一気にエルートの体液を吸いだした。
広場には体液をすする音が聞こえていた・・・。闇夜に蠢く虫のような音が・・・。
ズズ・・ズズズ・・・・
リール『エルートォーーーー!!!!』




