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異世界転生は甘くない

私はうだつの上がらない派遣社員だ。彼女いない=年齢、低収入、希望が見えない現代社会を生きるもうすぐアラサーの男・・・。名前は・・・思い出せない・・・。

なんのために生きているかもわからず、ただ漠然とした不安感に苛まれて生活している。

特に趣味もなく、目標もないので生活にもハリがない。1つだけあるとすれば動物が好きで、普通の人よりなつかれやすいくらいだ。正直言って人間より動物の方が好きだ。

でも私の借りている物件は、ペット禁止だし飼う金もない・・・。

そんな私の人生はひょんなことであっけなく幕を閉じてしまうことになる。

~回想~

勤務先の工場

派遣上司『おい派遣!ちんたら動いてんじゃねぇ!!』

男『すみません、すみません・・・。』

派遣上司『ったくなんでこんなに使えないかねぇ。おいもう上がっていいからそこにある荷物降ろしてから帰ってくれ。』

男『え!?でもこれって機械で降ろすやつですよね・・ちょっと危ないんじゃないですか??』

派遣上司『オイ・・今日の分の金はいらねぇってことでいいんだな。じゃあ派遣元には無断で帰ったって連しとくわ』

男『スミマセン!!!今すぐやりますのでそれだけは勘弁してください!』

派遣上司『ったく、黙ってやればいいんだよ。』

こんな人間の命令に逆らえない自分を呪いつつ、男はしぶしぶ()()()()()を運ぼうとした瞬間・・・

男『よいしょっっっと!』

男(やばい!この重さ・・最低2人は必要だよなぁ。あのくそ上司!)

カツ!

男(あ・・・コレヤバい・・・落ちる・・・)

ガッシャ―――ン

音に気が付いた上司が駆け付けてきた

派遣上司『なんだ!?』

派遣上司『おいおいおい~マジで使えねぇーな~~、荷物どかしてこいつが勝手に転んだことにするか。こんな奴に責任負わされたくないし。』

男は薄れゆく意識の中(こんな世の中腐っている・・・)

~現在~

そして目が覚めると、ゴミ袋?や、ほうき・塵取りようなものが散乱している部屋で目が覚めた。

男(あれ?俺たしか死んだよな・・・。もしかして転生てきなことが起きたのか?)

周りを見渡してみると、それは部屋というより洞窟に無理やり穴をあけて作った空間に、木製のドアをくっつけて作ったおそまつなものだった。

男(ええぇぇ・・・なんでこんな小汚いとこにいるの?こうゆのってもっと中世ヨーロッパ的なとこに転生するって相場が決まってんのに・・・。)

そんなくだらない事を考えているうちに、自分の身体の変化に気が付いた。

男(そういえば身長が縮んでいるし身体は汚れているが、きめ細かいハリがある。これってもしかして・・・子どもになってる!?13~15歳くらいか???)

男(若返っているだけラッキー!!顔も良くなっていると助かる!鏡!鏡!)

男(鏡ないな・・・水溜りにぼんやりと確認できたが、前より確実に良くなっているから良しとしよう笑)

男(こんなところに居ても埒が明かないし、出てみるか。)

男はドアを開けてみた。

ギィ―――イー

ドアを開けると、樹海のような森が生い茂っていた。

男『なんだこれ!?ここはいったい・・・』

男『こんなとこでどうやって生きていけばいいんだよ~~~』

目の前の光景に絶望して部屋に帰ろうとしたとき、自分のいた部屋がおそまつな理由がわかった。

男が振り返って見た光景は、巨大な洞窟の入り口だった。男がいた部屋はその洞窟の隅に作った部屋だった。

男(でっけーーー洞窟ーーー。もしかしてさっきいた部屋って掃除用具置き場か???なぜあんなとこあに・・・)

男(よく見ると人が出てくる・・・服装から見て、鎧、ローブ、エルフっぽい服、僧侶?・・・これってもしかして冒険者!?冒険者ってことは・・・ここはダンジョンか!!!!!)

男(あ・・・冒険者一行がこっち見た)

戦士『おい・・・あれって噂の・・・』

エルフ『アレをを見るな、汚らわしい』

魔法使い『かわいそうに・・・忌み子の運命なんてみな同じなのに』

僧侶『私、僧侶として彼に説明してきます!』

エルフ『おい!行くな!・・・ったく』

戦士『僧侶は優しいからな』

魔法使い『早く告っちゃえば??』

戦士『魔法使いオイコラ』


男(あれ?僧侶っぽい人がこっち来る・・・どうしよ・どうしよ・・・コミュ症パニックで動けない・・)

僧侶『君どこから来たの?』

男『え・・あ・・え・・あそこにいた・・・』

男は指を指して、先ほどいた部屋に指を指しながら言った。

僧侶『そうなのね、ケガとかしてない?欲しいものはない?』(やっぱり・・・忌み子なのね)

男『え・・と。食べ物。。。』(言葉が通じて安心&腹が減る)

僧侶『じゃあこれあげる!食べる時には神様にお祈りしてね!』

男『あり・・がとうございます。』

僧侶『きみ、ここらの子じゃないでしょ。』

男(ギクッ、なんでわかるんだ!?)

僧侶『神の使いとして、あなたの存在を話す義務が私にはあります。説明させて』

男は僧侶の気迫に押されて頷くことしかできなかった。

僧侶『ここはある王国の外れにあるダンジョン、とても危険でまだ解明されていないことも多いの。』

やっぱりダンジョンなんだ

僧侶『そしてここは基本的に子どもは入れない、この国でダンジョンに入ることができるのは20歳になった者のみなの、一部例外もあるけど。』

男『・・・じゃあ、俺はなんなの??』

僧侶は少し悲しい表情になったが、すぐに表情を元に戻し話し始めた。

僧侶『きみは・・・忌み子なの・・・・。』

男『忌み子?』

僧侶『忌み子はダンジョンから生まれた人間のことを言うの。。。忌み子は王国の入居制限をかけられて孤児院にも入れないの。』

男は忌み子についてはさしてショックはなかったが、王国で生活が出来ないことに絶句した。

僧侶『そしてこのダンジョンは王国が管理してるの・・・。だからこの樹海から脱出しようとすると結界が反応して冒険者ギルドから討伐チームが編成されて忌み子やモンスターはターゲットにされちゃうの・・・。国の安全を守るために・・・。』

男『・・・・・・じゃあ、ここから出られないの・・・・???』

僧侶『・・・・ごめんなさい』

僧侶『私から言えることは、ここから脱出しようとしないで!ダンジョンにも入らないで!私は今まで忌み子が悲惨な末路を見ているから・・・・お願い。』

男『じゃあ・・・・何をしていればいいの・・・・』

僧侶『ダンジョン入り口の掃除が忌み子の仕事とされています・・・。冒険者などに気に入ってもらえば食べ物を恵んでくれるし、王国の厄災行事でもダンジョンの入り口がきれいな状態なら食料品を大量に贈呈してくれます・・・。』

男『・・・・・・そうです・・か・・・。』

男は目が座ってなかった・・錯乱寸前の状態で絶望に必死に抗っていた。

男『・・・つまり・・・死ぬまでダンジョン掃除夫として飼い殺しされるんですね・・・。』

僧侶『・・・・あなたに祝福あれ』

男『・・・・ざ・いま・す・・・』

男はお礼を言いながら、ダンジョンの掃除部屋にフラフラと帰っていった。

僧侶は何も力になれない自分の無力さを、悔いながら仲間達の元に戻っていった。

戦士『どうだった??』

僧侶『うん・・何とか伝わったかな。。』

魔法使い『しょうがないこともあるよ。僧侶』

エルフ『忌み子に救いはない。お前もわかっているはずだ。』

僧侶『そうだけど・・・。』

戦士『まあ話はここで終わりにして、パーっと飲みにいこうぜ!今日の報酬はハンパないし!』

魔法使い『戦士は単純でいいよね~~』

冒険者一行はそんな話をしながら、樹海の奥に消えていった。。。


部屋に帰った男というと・・・

男は部屋に戻りさらに絶望していた、忌み子として転生してしまったこと、普通の生活は望めないということ。そしてさらに恐怖したのは、この掃除部屋の状態。

目が覚めたばっかりの男には気がつかなかったことが、今でははっきりわかるようになっていた。

掃除道具のかじられた跡、動物の骨、血痕、壁には何か文字のような傷。

歴代の忌み子がどのような末路を辿ったのか想像に難しくない光景がそこにはあった。

男『こんなところで生活するなら、死なない方がましだった・・・。絶対にましだった・・俺が何したっていうんだ・・・ブツブツ』


男は僧侶にもらった食べ物をかじりながら、眠りに落ちていった。



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