関所の人
「いやあー、参った参った」
「なにが『参った参った』、だおいこらこのボケ老人!危うく槿花が潰れそうになってたんだぞ?!ちょっとはわきまえやがれこのばかッ!だいたいなんで俺たちが旅立つことがばれてんだ?!」
「お、やきもちか?太牙。ダメだぞー、俺たちは兄弟でかつ男同士なんだから」
「そんな話してねええええええええ―――っ!」
全力全身全霊を込めて否定する太牙を笑って流し、どんな魔法を使ってあの阿鼻叫喚に収拾を付けたのか黙して語らない俊蔭は営業用ゼロ円スマイルを浮かべ、槿花とともにやってきた使者の方を向いた。
「それで、どのような御用件で?」
「う、うむ。なに、用件というのも大したものでは……。姫神様より賜った密書だ」
すっかり毒気をぬかれてしまったらしい使者殿は、懐より丸められた巻き物を取り出した。
白茅一族の印がしるされた蝋の封に閉じられたそれは、間違いなく姫神のもの。
この関所にいる間だけでも、ということで暫定的な処置として七曜のリーダーということになっている俊蔭が受け取った。
好奇心に満ちためで太牙が俊蔭の手元をのぞき込む。後ろに並ぶ節も同様に興味があるようだがなんとか身を乗り出さないで耐え、槿花は見たいようなみたくないような、といった顔をし、子夜と秋水と朱夏はどうせあとでも見れるとでも思っているのか特に興味を示さない。
単純に秋水と子夜は興味がないだけかもしれないが。
封を解こうと指を伸ばした俊蔭に、「お待ちを」と使者が声を上げた。
「姫神さまは出国した後に封を解かれるように、との仰せでした」
「あ、そ。ふうん……まあいいか。あ、そうそう。ものは相談なんだけど」
「なんでしょう」
慇懃無礼にもほどがある俊蔭の態度に、かろうじで理性と威厳を保っている使者は抑え過ぎて震える声で聞き返した。
にっこりと俊蔭がほほ笑む。外で阿鼻叫喚地獄絵図の主役となった女性たちを魅了した笑みだ。
「七曜の資金、ちょっとケチり過ぎじゃない?」
「は…?!」




