集まろうか
出発当日の朝、節は告げられたとおりに関所へと向かっていた。
王に謁見してからの3日間いろいろと考えた。この国のこと、自分の使命のこと、白茅一族のこと・・・考え出したらキリがないのだ。
自分なりに、折り合いをつけて今日を迎えたつもりだ。だが、正直、まだ何かしらの違和感というかしこりが自分の中に残っていることを節は実感していた。
しかし、容赦なく約束の日は来てしまった。
とりあえず、現状で一番気になっていることは何といっても他の七曜のことだ。
これから長期間、寝食をともにし、同じ使命を負っているものたちだ。気にならないはずがない。
(そういえば・・・俺の隣に座っていた女の子も・・・)
色白の美しく、優しそうな笑顔を思い出す。ふいに節は顔が赤くなったが、首を振って早足で先を急いだ。
関所の前、正確には関所番を務める不破一族の屋敷の前はなんだか人だかりができていた。しかもよく見ると若い女の人ばかりのようだ。
節は不審に思いながらも、集合はその屋敷なので集団を掻き分けてなんとか屋敷のなかに入った。
なんだか熱気をおびた集団に多少ひきながも、中で待っていた従者に奥の間へと案内された。
この屋敷の主である不破一族は建国当初から代々続く由緒正しい一族だ。
うわさでは、初代七曜の1人の家柄だと言われている。
(それにしても広い屋敷だな。さすが歴史の古い不破一族だけある。1人だとぜったいに迷子になってるな・・・)
「こちらでお待ちください。」
開けられた襖からまず最初に目に入ったのは、広い座敷でたった一人座っている、あの女の子だった・・・。
「こんにちは。」
少女はそういってにっこりと笑ってきた。耳当たりの良い、まるで琴の音のように澄んだ声。節はその笑顔に見とれその声に聞き惚れ、ほんの一瞬対応が遅れたが、笑い返して自己紹介をした。小さい頃から祖父に礼儀を叩き込まれたゆえにできた反応だった。
そうでなくては、まだ数秒固まっていたことは確実であり、節は心の中で祖父に礼を述べた。
「こんにちは。俺は節っていいます。君も七曜の一人だよね?3日前の王と謁見のときに俺の隣にいた…」
「ええ、そうです。私は子夜と申します。節さん、これからよろしくお願いします。」
「いやっ、俺のほうこそっ・・・」
お互いに頭の下げあいをしてしまっていると、ふいに襖が開いた。
「おっ、もう二人も来てたのか。」
そこにはいやに顔のいい、いかにももてそうな感じの青年が襖にもたれてこっちを見ていた。
「どうも。俺、七曜の1人で俊蔭っていいます。以後よろしくな。」
明らかに自分たちより年上の仲間に、節も子夜も慌てて頭をさげようとしたが、俊蔭に止められる。
「あー、そういうまどろっこしいのはナシな。俺のことも呼び捨てでいいから。」
気のいい笑顔で笑いかけてくる俊蔭に2人ともすぐに打ち解ける。節も遠慮なく会話ができる、この人当たりのいい兄貴分になんだか安心した。隣の子夜もにこにこしている。
なんだかんだで3人ともすぐに仲良くなり話をしていると、すごい勢いで廊下を走り、こちらに近づいてくる足音がした。部屋の前で足音がピタッと止まれば、怒鳴り声とともに激しく襖が開かれる。
「こんの、ばかやろーーっっ!!」
節は一瞬なにがおきたのか分からなかったが、とりあえずてんぱった頭で怒鳴り声の主へと顔をむけた。
自分の目を疑った。そこには見たこともない、というかこの国にあるはずのない金色の髪がそよいでいた。
節が呆然とその髪に見入っている間にも、金髪をなびかせた少年は部屋に入り込んできて怒鳴り続けている。
「おまえなっ!なんで先にきてんだよっ!昨日寝る前に、明日は一緒に行こうって約束しただろうが、このぼけっっ!!朝起きて、俺は一人で、どんなにあせったか・・・っ!一人で来るなんて心細いじゃねーかっ!ばかっっ!!」
どうやらこの少年は俊蔭の知り合いで、今はかなり俊蔭に対して怒っているらしい。一方の怒られている俊蔭は、なぜかニヤニヤ笑っている。
「ほう、そうかそうか。お前は俺と一緒に行けなくて寂しかったんだな。」
「っ・・・ば、ばかかぁーー!!なんでそうなんだよっ!脳みそくさってんじゃねぇの!?」
「それはすまないことをしたなぁ。心細いお前を1人置いて行ったりして。」
「はあ!?それはてめぇだろ!!昨日、不安だなーって言ってたじゃねぇかっ!」
「ん?そうだったか?」
「そうだよっ!!もう老化現象が始まってんだなっ!」
見ていてこちらが疲れてくるほどの勢いで怒り続ける少年を呆気にとられて見ていると、ふいに俊蔭が視線をこちらによこした。
「なあ太牙。とりあえずここにはもう客人もいるんだし、とりあえず寝巻きを着替えてこないか?」
「・・・・・・・な、なぁーーー!!!」
太牙と呼ばれた少年は節たちに気づくと同時に数秒固まり、顔を真っ赤にさせて叫ぶと、やってきたときと同様すさまじい勢いで去っていった。
「くくっ・・・すまんな。あいつは太牙って言って、まあ俺の弟みたいなもんだ。」
「はあ、なんかいろいろと刺激が強かったです。ってか、仲いいですね。」
「まあな。」
(俊蔭さんがいやにうれしそうなのは気のせいだろうか。)
「それにしても、太牙さんの髪はとても綺麗ですね。」
子夜がほほえみながら発した言葉に、俊蔭は一瞬つまったが、子夜に向かって優しい笑顔でお礼を言った。
「ところで、さっき太牙君がきておもったんですが、俊蔭さんたちってここに住んでるんですか?」
「ああ、だってそいつはここの御曹司様だからねぇ。」
ふいに聞きなれない若い女の人の声が振ってきた。
節をはじめ、3人が振りかえると、パッと見男に間違われそうな長身の、スタイルのいい女性が立っていた。
節は、彼女の言葉にも驚いたが、なによりなんとも存在感のある彼女の覇気に圧倒された。
「よお、朱夏。やっぱお前もいたんだな。3日前にお前らしいやつを見かけて、まさかな、とは思っていたんだが。」
「それはこっちの台詞だよ。あんなところであんたに会うなんて思ってもみなかったさ。」
俊蔭とはまるで旧知の仲のように話す彼女はやはり堂々として見えた。
「よろしく。あたしは朱夏って言うんだ。」
飄々とした彼女も俊蔭同様接しやすく、節はなんだかいっきに兄さんと姉さんができた気分だった。
実際、朱夏は面倒みがいいらしく、既に子夜のことを気に入って、気にかけているようだ。
「そうだ。ところで俊蔭、あんた門の前の人だかり、なんとかしてきな!」
「へ?人だかり?」
「そうだよ。どうせあんたのひっかけた女たちだろ?うるさいったらないんだよ。」
「あー・・・はぁー。いってきまーす。」
気のない返事をしてでていった俊蔭を、朱夏は満足そうにみつめる。どうやらあの集団が、そうとうウザかったようだ。
(やっぱり俊蔭さんって、たらしなんだ・・・。)
朱夏は節の思考をよんだように、にやっと笑っていた。
「ところで、まだ3人きてないんだねぇ。」
……のったりのったり、まだ出られませんこの子たち
読んでくださっている方々ありがとうございます。
なにぶん若輩者のため、のったりとした展開しかできませんが、お時間がある時にでもちょこっとこの子たちの旅立ちにお付き合い頂ければ幸いです
まだまだ、ですが… 苦笑




