ようやく
畳みの荒野のような部屋。
何十畳か数える気さえ失せてしまいそうなほどに広いこの部屋は、王がおわします謁見の間。
白茅一族の頂点である国王が奥座に座している。
否、いたのだ。先ほどまで。
会見を終えた今は、すでに白茅一族しか入ることの許されない『深の間』へと退出なされた。
蟻の足音さえ聞こえそうな静寂の中、節はこれからどうするべきかとそればかり自問していた。
左隣には、自分と同じ白茅の使者によって呼ばれたらしい同い年くらいの少女が座っている。
異国の人形を思わせる端整な顔立ちは、いつもなら思わず見惚れさえしていただろうが、さすがに今はそんな余裕はない。
なにせ、国王の用件というのがあまりにも破天荒――かなり失礼な言い方だがそれくらいしか思いつかない――だったのだから。
遠い昔、祖母に読み聞かせてもらった異国の御伽噺を思い出す。
一般庶民であった男の子が、ある日神殿からの使者によって勇者であると告げられ、世界を支配せんと目論む悪の大王を倒しに世界各地を巡る旅に出る物語である。
子供のころはそれこそ、目を輝かせて祖母に話しをしてくれるようにせがんだが、10を過ぎると物語のあまりの荒唐無稽さに飽きれを抱いたものだった。
まさか自分がそんな荒唐無稽な世界の主人公になるなんて、悪夢にでさえ見たことがない。
自分はどうやら、この国の建国に関わったらしい七曜というものの力を色濃く受け継いでいるらしい。
七曜というのは、この国を支えている宝珠を神にもっとも近しい国から承ることができる選ばれた者であるそうだ。
建国の伝説にすら出てこなかった七曜の末裔が今更集められたわけ。
説明されるまでもなく、わかった。わかってしまった。
宝珠が危機に瀕しているのだ。それは即ちこの国の滅亡に等しい。
この災いはもちろん、姫神様によって予見され、そして自分たちが再び神にもっとも近しい国で宝珠を授かることで回避されようとしている。
この穏やかで平穏な国を救うというなんとも言いようのない高揚感と、一歩間違えればすべてが不毛の大地へと、塵へと帰ってしまうというどす黒くとぐろを巻く不安感に節はめまいを起こしそうになった。
じいさまは、きっと知っておられたんだ。
この国でもっとも賢き人の1人と称えられる彼だからこそ。
まだ少年の小さな肩にはあまりにも重過ぎる運命を彼は見ていたのだ。
「さて、みなさま」
音もなく、謁見の間に入ってきた侍従長らしい男が、丁重な言葉遣いで今日は帰るようにと七曜に告げた。
出発は3日後の早朝。
鎖国しているこの国と外とを繋ぐ、唯一の関所の前が集合場所となった。
ちんまりちんまり、三歩進んで二歩戻る、くらいの進み具合ですが…
ま、まとめる能力が…orz




