ディストピア・マニアックス
シンシア「地球、ユニオン州、タラクネ区。
おもな舞台はここ。
でも、今回の舞台はその上空、衛星。
みんなは衛星通販って呼んでる。
超大型ポータルがついていて、ネジからOPSみたいなある程度の大きさのもの、医療用ネクターみたいな液体、ヤバイものでは麻薬や核兵器など、だいたい欲しいものは揃っているよ。
でも、それは表の顔で…じつは…」
衛星通販 倉庫
シンシア「はぁ、疲れた。
運んでも運んでもキリがないよ。
なんでもあるじゃん、ヤバイよここ…」
吸血鬼「おいちーおいちー」
シンシア「ちょっと!吸血鬼くん!それ商品の輸血パックじゃない!
ネクターはどうしたの?」
吸血鬼「あれより血の方がおいしいざんす!
あんなものいらねーざんす!
全部飲んじゃったけど」
シンシア「ヒロシー?ニンニクの梱包終わった?
まだならちょうだい?」
ヒロシ「まだっす、いいっすよ」
吸血鬼「投げないで投げないで!
やめるざんす!」
シンシア「ヒロシ〜、疲れたよ…メリーシリーズの梱包大変だよ。
胴体入れて、手足入れて、頭はオーダーメイドとかほんとやめてほしい。
こんなの続けてたら私レズビアンになっちゃうんじゃないかな…。」
ヒロシ「わかんないっす、やっとくんで休憩いいっすよ」
シンシア「ごめんね〜」
吸血鬼「お前の血を吸わせるざんす!」
ヒロシ「勤務中なんでダメっすね、さーせん」
シンシア「ああ、疲れた…ネクター切らしちゃった。」
シンシア(ネクターか…医療用にも使えるらしくて、なんか、大麻、モルヒネ、新生児の細胞、合成モリンガが入ってるとか大学の講義であったっけ…)
ヒロシ「シンシアパイセン、オラクルから呼び出しらしいっす。」
シンシア「ええ、私なんかポカしたっけ…今いきまーす!」
衛星通販 廊下
下級オラクル「君を呼んだのは…私達のミスだ。」
シンシア「え、それはどういう…」
下級オラクル「君はハーフエルフだったよね、母親が人間、父親が精霊」
シンシア「え、ええ。合ってます。」
下級オラクル「うわぁ…やっちまったなぁ。
君さ、一年倉庫で働いてるんだけど…担当部署違うんだわ。」
シンシア「えー!?」
下級オラクル「頭良い女の子に力仕事任せるとか上層部ほんと…ほんと…
で、まあ部署が変わります。」
シンシア「わ、わかりました…けど何の仕事するんですか?」
下級オラクル「研究職らしい。
君にぴったりじゃないかな?」
シンシア「ああ、一年頑張った甲斐があった…頑張ります。」
下級オラクル「で、異動なんだけど明日らしいので荷物まとめておいてほしい。」
シンシア「ちょっと早くないですか?」
下級オラクル「明日明日、人足りないんだってさ。」
シンシア「はあ、わかりました…」
下級オラクル「あいつら始末書もんだな。
で、もうここには戻ってこられないらしいからよろしく」
シンシア「えぇ!?わかりました!
半日しかないから急がなきゃ!」
衛星通販 倉庫
ヒロシ「オラーイ!オラーイ!あーい!」
シンシア「ヒロシ!」
ヒロシ「パイセン、どしたんすか」
シンシア「私異動になったの。
で、戻ってこられないらしいから、挨拶に来たの。」
ヒロシ「あ、了解っす。おつかれっした。」
シンシア「ヒロシ、ほんとお世話になったね、ありがとう。」
ヒロシ「あ、いっすよ、まだ仕事中なんで失礼するっすね。オラーイ!オラーイ!」
シンシア(真面目なところがとても頼りになったよ)
衛星通販 シンシアの部屋
シンシア「えーと、どうしよ…とりあえずこの作業着とか作業靴はもういらないんだよね。
下着とか、織物…は別に買ってもいいか。
もー、いきなりなんて…
そうだ、オラクルに連絡しよう。
ピップボーイ…あった。
検索、下級オラクル・おう、電話。」
下級オラクル「はい、シンシアくん?なに?」
シンシア「オラクルおじさん、荷物はどうしたらいいですか?
部屋、異動になると思うんです。」
下級オラクル「ああ、はいはい。君の部屋にポータルあるじゃない?
そこに乗せて、暗号入力すればワープするから大丈夫だよ。
でかい家具は女の子じゃ無理じゃない?
だからヒロシくんに早上がりしてもらって、もう手伝いに向かわせてるから、暗号は96n444ね、はいじゃあよろしくー」
シンシア「あ、まって…ああ、一応今の暗号はピップボーイに記録されているからいいんだけど…」
ヒロシ「パイセン入るっすよー」
シンシア「ち、ちょっと待って!入っちゃダメ!ノックぐらいしなさいよバカ!」
ヒロシ「さーせんした」
シンシア(下着姿見られるところだった…やだもう!服着なきゃ。」
シンシア「ヒロシ、大丈夫だよ、入って。」
ヒロシ「うっす。」
シンシア「そこのテレビとか、本棚運んで欲しいな。
机とか、大きいもの。」
ヒロシ「このブラジャーしまわないんすか?」
シンシア「ばかー!!!」
翌日 衛星通販 中間管理局 境界ブリッジ
下級オラクル「シンシアくん、ついたよ。」
シンシア「ここからが新しい職場…
あれ?オラクルおじさん、どうしたんですか?」
下級オラクル「シンシアくん、君に会えて良かった。私はここまでなんだ。」
シンシア「え?どういうことなんですか?
案内してくださいよぉ。」
下級オラクル「この先は男子禁制、しかも上位職でなければならない。
今日から君が、私の上司だよ。
オラクル・シンシア・ティアドロップ殿。」
シンシア「え?意味わかんないです!戻ってこられないとか、今日から上司とか!
おじさんはおじさん!私のおじさんでしょ!」
サニー2「シンシアさん、もう行きますよ。」
シンシア「ちょっとやめてよ!おじさん!
なんとか言ってよ!やだよ!
お別れなんてやだよぉ!」
サニー2「暴れないで、もう行きますよ。」
シンシア「オウおじさああああん!」
中間管理局 応接間
シンシア「もう、なんなのよ昨日から…」
サニー2「オラクル・シンシア・ティアドロップさん。」
シンシア「……」
サニー2「先程は失礼しました。
そろそろオラクル・ヤン・ウェイが到着します。今しばらくお待ちください。」
シンシア「……」
ヤン「ぴょこ」
シンシア「……」
ヤン「くんくん、いい匂いアル」
シンシア「な、なによあんた!!!」
ヤン「シンシアちゃん、はじめましてアル!」
シンシア「誰よ、あなた」
ヤン「よくぞ聞いてくれたアル!
ヤンは、中間管理局の上位職、オラクルの、ヤン・ウェイアルヨ!」
シンシア「中国の方ですか?」
ヤン「もちろんアル!」
シンシア「真っ赤なチャイナ服、しかもおっぱいでかいし…」
ヤン「シンシアちゃん、今日からよろしくアル!」
シンシア「やめてください!なんで恋人繋ぎするんですか!普通握手でしょ!?」
ヤン「ちゅーしていいアルか?」
シンシア「変態!変態!」
サニー2「オラクルヤン、オラクルシンシア、そろそろ業務に戻っていただきます。」
ヤン「うるさいアル、ぽんこつ。
ヤンはシンシアちゃんともっと仲良くなるアルヨ。ねー?」
シンシア「ロボットさん、仕事しますんではい!」
中間管理局 シンシアの部屋
シンシア「はあ、ひどく疲れた…なんなのほんと…あ、ヒロシが運んでくれたもの全部ある。
とりあえず、手荷物は置いて、ネクターでも飲もう。」
ピンポーン
シンシア「はーい、え?、どちら様ですか?
……誰もいない」
ヤン「ぺろぺろぺろぺろ」
シンシア(え?…誰かいる!そうだ、ピップボーイ。)
シンシア「(小声)もしもし、ロボットさん?私の部屋に誰かいます…助けて!」
サニー2「(小声)お待たせしました、どうされましたか。」
シンシア「(小声)不審者!助けて!」
サニー2「(小声)しばらくお待ちください」
シンシア(これで一安心、あれ?なんか静かだぞ…)
サニー2「お待たせしました。」
ヤン「なまくら!チャイナ服が痛むアル!」
シンシア「なんであなたが私の部屋にいるの!!!しかもそれ私のネクター、めちゃくちゃ口紅ついてる!
なんでパンティかぶってるの!」
ヤン「紐パンかわいいアル〜」
シンシア(一応先輩だから下手なこと出来ないし…!)
ヤン「でもシンシアちゃんの方がもっとかわいいアル!」
シンシア「ロボットさん、ご丁重に放り出してください。」
サニー2「私はサニー2と申します。
以後お見知り置きを。
いつでもご連絡ください。」
ヤン「キー!シンシアちゃんまたくるアルー!」
シンシア「もう来ないでください!」
シンシア「はあ、とりあえずネクターは拭いて飲んだ。
一応落ち着いたけど、なんでいたのかしら…」
サニー2「オラクル・シンシア、オラクル・ヤンが消滅しました。
ご存知ありませんか?」
シンシア「消滅?いや、ちょっと意味がわからないです。」
ヤン「シンシアちゃん、おはなしするアル!」
シンシア「ぴゃー!!」
ヤン「シンシアちゃんのお布団いい匂いアルヨ〜」
シンシア「出てけ!!!」
ヤン「これから仕事するに当たって、聞いてほしい事がアルヨ。
資料も持ってきたアル。」
シンシア「じゃ、資料だけでいいです。」
ヤン「生存率下がるアルヨ?」
シンシア「ぐぬぬ、わかりました。」
ヤン「膝枕してほしいアル」
シンシア「あなたいくつなんですか!」
ヤン「四十代アル」
シンシア(え!?私、24だけど同じぐらいにしか見えない…)
シンシア「嘘つかないで下さい」
ヤン「嘘じゃないアルヨ〜、ヤンは、シンシアちゃんが大好きアルヨ?」
シンシア「はぁ…膝枕だけですよ。」
ヤン「やったアル!スカート脱いでほしいアル!」
シンシア「ダメに決まってんだろ!」
ヤン「タラクネ区のすべてのデータを持ってきたアル」
シンシア「えぇ!?そんな事あるわけないでしょ!
もういい加減にして下さい!
ロボットさん!
オラクルヤンがいます!
すぐに連れ出してください!」
ヤン「……悲しいアル…また来るアル」
コンコン
シンシア「ロボットさん、どうぞ。」
サニー2「サニー2です、失礼します。
オラクルヤン、オラクルシンシアへの資料提供は済まれましたか?」
ヤン「……油臭いネ…今からするところだったネ」
サニー2「また、職員へのセクシャルハラスメントでしょうか?
代わりに始末書をお書きしましょうか?」
ヤン「………シンシアちゃん信じてくれないアル」
シンシア(このこ、泣きそうになってる…)
シンシア「ロボットさん、とりあえず資料だけ置いて、ヤン先輩は追い出して下さい。」
サニー2「わかりました。今後もサニー2をお呼び出し下さい。」
ヤン「シンシアちゃん……また来るアル……」
シンシア「………」
シンシア「ちょっとやりすぎちゃったかな、いやそんな事ないかな…とりあえず、お風呂に入ろう」
シャワールーム
シンシア「すごい、オラクルってこんなに広いお風呂なんだ…シャワーはどんな感じなんだろ」
サニー2「オラクル・シンシア、体温から水温を42度に設定致します。」
シンシア「すごい、コンソールからロボットさんが話しかけてくるんだ。」
サニー2「私です、サニー2です。もしよろしければピップボーイとも同期致しますか?」
シンシア「あなた、すごい便利なのね。
じゃあお願いしようかな。」
サニー2「ピップボーイとの同期が完了しました。ご入り用の際はピップボーイでもご連絡ください。」
シンシア「サニー2か、確か廃番のオートマタなんだっけ。このシャワーヘッドすごい、ミストみたいに水が細かい。」
サニー2「治安維持組織の工場で開発された最新鋭の美容シャワーヘッドです。
型番はvh-0063、特注品です。
プライベートスペースに生体反応あり、セキュリティとして向かいますか?
増援も可能です。」
シンシア(背中になんか大きいものが当たってる!)
ヤン「おっぱいで洗うアルか?」
シンシア「ギャー!!!サニー助けて!」
サニー2「エマージェンシーコール、すぐに向かいます。
しばらくお待ち下さい。」
シンシア「はよ来い!やめろ変態!」
ヤン「シンシアちゃん、モデルさんみたいアル。
でも下半身はむちむちでおしりが柔らかいアル〜」
シンシア「自分のさわれや!やめろ変態!」
ヤン「もっと仲良しになりたいアル〜、裸の付き合いアル〜」
サニー2「ドアを破壊します、離れて。」
シンシア「いやぁああ…サニー…」
ヤン「もっとシンシアちゃんの事が知りたいアルヨ〜」
サニー2「オラクル・シンシア、無事ですか。
オラクル・ヤン、始末書を作成しておきました。
ラボに戻っていただきます。」
ヤン「またきたアルね、くず鉄!」
サニー2「セクシャルハラスメントの回数が制限回数を超えました。
武力行使を行います。」
シンシア「サニー!待って!」
サニー2「ぴこっ」
ヤン「に゛ゃ゛っ」
シンシア「え?ピコピコハンマー?
ヤン先輩は…」
サニー2「アブノーマルオブジェクト「おもちゃのハンマー」オブジェクトを使用した際、全身麻酔と同じ効果が発生します。
オラクル・ヤンは気絶しています。」
シンシア「そ、それなら…いいの。」
サニー2「オラクル・ヤンを護送します。
またご入り用の際はサニー2をお呼び出し下さい。」
シンシア「サニー、ありがとう」
サニー2「……」
シンシア「サニー?」
サニー2「オラクル・シンシア。
あなたに与えられた業務は、アブノーマルオブジェクトの管理です。
オラクル・ヤンと共同で業務に当たっていただきます。
これは非常に危険な業務です。
しかし、地球のためになる大いなる業務であります。
あなたの業務に幸運をお祈りします。」
シンシア「危険…」
サニー2「体温の低下、不安を感知しました。
シャワーを使用して体温を上げて下さい。
大丈夫、あなたは心配しないで。
リラックス。」
シンシア「サニー、悪いんだけど恥ずかしいから出てって。」
サニー2「わかりました。
またご入り用の際はサニー2をお呼び出し下さい。」
シンシア「ちょっと待って、ここって男子禁制なんでしょ?
あなた、女の子のお風呂入って、大丈夫なの?」
サニー2「体温の上昇を感知、オラクル・シンシアの顔面の温度が上昇しています。」
シンシア「ばかー!」
end