転生勇者(若干ヤンデレ予備軍)はハーレム展開を望まない。
【あらすじにも注意乗ってます】
息抜き作品です。
えぇ、心が疲れた人間が何も考えずにパッと書いたヤツですので、軽いノリで読んで下さい。
ちょっと書いたことがないようなの書いてみたかっただけなんです。
気が向いたら時たま続きを書くかもしれません。
「レグルス様‼︎貴方は神託に選ばれし勇者です‼︎どうぞ魔王を倒し、世界をお救い下さい‼︎」
いきなりハイン村にまでやって来た神殿一同……というか、神官の服を着た巨乳美少女がそんなことを俺に言ってくる。
一村人である俺はその瞬間……交通事故で亡くなった大学生という前世の記憶を思い出した。
俺、レグルスはRPG系ギャルゲーの主人公。
さらっさらの金髪に綺麗な碧眼。
超絶平凡な村に住んでるのに、明らかにそれに似合わないイケメンだ。
このゲームは、神託を受けて魔王討伐の旅に出ることになった俺が、メインの美少女ヒロイン達こと聖女、姫騎士、弓使いと共に旅をし、行く先々で美少女達と交流し、時には仲間(これもやっぱり、女ばっかり)を増やして……レベルを上げて、魔王(美少女)を倒すというRPG要素にラッキースケベとエロシーン(R-18)を追加した、ハーレム願望有りの男の夢を詰め込んだようなヤツだ。
ちなみに、俺はプレイしていない。
友人がプレイしていたのを、強制的に見せられていた。
で、今目の前にいるのはその聖女。
神託を受けて、勇者を見出し、最初に肉体関係(神に仕えるのにいいのか)になるハーレム要員なのだ。
………。
……………………つまり。
「えっ、嫌です」
ヒョォォォォ……。
思わず言ってしまった本音に、周りの人々は固まる。
いや……だって俺、アンチハーレムだし。
あのドロドロした爛れた関係とか無理。
ゲームじゃ宿屋、青姦、ちょっと人に言えないようなアブノーマルプレイまでなんでもアリだったらしいし。
この世界、避妊具というモノがないし……所構わずヤッてる訳だから……。
性病がとっても恐い。
いや、この世界の病気がどうかは分からないけどさ……治る可能性もあるけど、治らない可能性もあるじゃん?
下手したら、とんでもないことになるんだぞ?
ハーレムなんざ、そのリスクと闘ってまで作るもんじゃないと思う(あくまでも個人の見解です)。
それ以前に。
「あの、理由を、聞いても?」
聖女がプルプルと震えながら聞いてくる。
ごめん、なんか崇高な理由がある訳じゃないんだけど、俺には死活問題なので。
「ルカと離れたくない」
「ルカ?」
「恋人だよ」
サッと視線を走らせれば、その先には俺の大好きな恋人の姿。
ふわふわしたアッシュグレーの髪に、宝石みたいなサファイアの瞳。
村娘風の服だけど、それが逆に彼女の可愛さをより一層引き立てていて。
ロシアンブルーみたいな可愛い女の子。
それが俺の恋人、ルカだった。
「えっと……レグルス」
「なぁに?」
聖女に対するのはとは違って、甘さ五割増しぐらいの声で彼女に微笑む。
ルカは頬を赤くしつつ、テケテケと歩み寄って来た。
「あの、世界を救うのは大切だと思うの」
「だから?」
「だから……行った方がいいと思うの。レグルスに救える人がいるなら、救ってきて欲しい」
「だからってルカと離れてもいいって?」
ビクッ‼︎
ルカだけじゃなくて、その場にいる全員が凍りつくように固まる。
あぁ、ヤバい。
恐がらせちゃったかも?
………いや、いっそ?
「俺ね。おかしいんだ」
「………レグ、ルス?」
「ルカのことが好きで好きで好きで好きで。好きすぎて頭の先から爪の先まで髪の一本までも俺のモノにしたくて。殺したいぐらいに大好きで。
いつも他の人達と話すルカを見て真っ黒な感情がどんどん湧き上がって。ルカのこと閉じ込めて動けないようにして俺が全部お世話してあげて。俺なしで生きれないようにしてやりたいと思うぐらいに、ルカのことが好きなんだよ。
だから、ルカと離れるなんて考えられない。俺、おかしくなっちゃうよ。俺が離れてる間にルカが他の男と仲良くなってたりしたら、気が狂いそうになる。
………君を殺してしまいたくなるよ」
ヒョォォォォォォォォォォ……。
さっきよりも冷たい風が吹いて、その場にいたルカを除いた人々が固まる。
しかし、彼女には分かっていたみたいでジトッとした目を見られてしまった。
「行きたくないからってそういう風にヤンデレ演じて、言い訳は駄目だと思うの」
「……………大好きなのは嘘じゃないよ?」
「知ってるよ」
ちぇっ。
ヤンデレだからルカと離れたらヤバい人だと思ってもらえれば、離れられないで済むかと思ったんだけど。
当の本人にバレちゃうんだもんなぁ。
俺達の会話に、さっき言った俺の言葉が魔王討伐に行きたくないための言い訳だと理解したのか、周りの人達が明らかにホッとしてたけど。
ごめん、少しは本気も入ってた。
俺という恋人がいるルカに言い寄るような男がいれば、去勢してやりたいと思う程度には若干ヤンデレってる。
「えー……でも行きたくないよ。プロポーズの準備してたのに。魔王討伐の旅になんかでたら結婚が遅れるじゃん」
「レグルスが帰ってくるの、待ってるよ?」
「えぇ……俺が無理だし。発狂はしないけど、ルカがいないとヤル気でないよ。俺、ルカがいたからここまで頑張れたんだよ?」
はっきり言って、俺はルカがいるからここまでこれた。
村に捨てられていた俺をルカのご両親が育ててくれて、ルカと幼馴染のように育って、恋をして。
大好きな女の子に良いところを見せたかったから、村での農作業も狩りも頑張った。
ようやく恋人になって、イチャイチャして。
………まぁ、思春期男子なのでヤルことしましたが。
あー……というか、ゲームの世界だから避妊してないのに赤ちゃんできなかったのか……。
いや……まだゲームの世界と決めつけるのは早い。
テンプレだと、ゲームに似た世界という可能性もあるし。
…………うん…あーだこーだ考えてるけど、俺の考えはただ一つ。
やっぱり魔王討伐の旅とか嫌だ。
「あー……やっぱり無理。ルカと離れるだけでヤル気ゼロなのに、それがどれくらい時間かかるかなんて分からないじゃん。ヤル気ゼロすぎて多分、ザコにでも軽く殺されると思うよ?」
「レグルス様っ‼︎ですが、魔王を討伐せねば世界は救われませんっ‼︎」
「なら友人のリッグを代理に立てます」
「オレぇっ⁉︎巻き込むなよ、レグルス‼︎」
ギョッとした顔をするのは、いかにも普通の村人(茶色の短髪)のリッグ。
顔は整っているし……俺がいなかったら多分、村一番のイケメンだったはず。
「でも、リッグが頑張ればいろーんな女の子からチヤホヤされるよ?」
「無理無理無理。オレは小心者なんで、沢山の女の人にチヤホヤされても困るから」
ちなみにコイツにもアンチハーレム精神を植えつけ済みだったりする。
というか、この村の同年代は全員アンチハーレムだ。
たった一人を愛し抜く方がいいしね。
「レグルス様っ‼︎」
「えー……そこまで言うならルカも一緒ならいいよ」
「はぁっ⁉︎」
聖女がその可愛らしい顔に似合わないドスの効いた声で驚く。
うわぁ、化けの皮剥がれ始めてるぅ。
ルカもまさか自分が巻き込まれるとは思ってなかったのか、ジト目で見つめてきた。
「リッグを巻き込んだと思ったら、私も巻き込まれるの?」
「そうだよ?だってルカが俺に行った方がいいって言ったんだから……言葉には責任取らないと」
語尾に音符がつきそうなくらい楽しげに言えば、ルカは呆れたように溜息を吐いた。
「私、何もできないから行っても足手まといだよ」
「ルカがいるだけで俺のヤル気が出るんだから、問題ないよ?」
「他の方もよく思わないよ」
「なら行かないよ」
「「…………………………」」
無言で見つめあって数十秒。
ルカは次第に疲れたような顔になって「もう好きにして……」と投げ捨てた。
よっし、俺の勝ちっ‼︎
「という訳で。ルカと一緒なら魔王討伐に行ってあげる」
「…………………」
結論。
ルカを連れて行くことに成功しました☆
*****
それからの俺達の日々は、凄かった。
あの後、姫騎士(マジで国の姫だった)と弓使い(公爵家令嬢らしいが……何故、弓使いというチョイスなのかが謎)がパーティーに加わってしまい、俺が若干イライラしたり(ルカに宥められてイチャイチャした)。
まず、いちいち出てくるハーレム要員美少女達は眼中にないから総スルー決め込んだ(ずっとルカとイチャついてた)。
時たまルカに害をなそうとする子もいたから、それとなくO・HA・NA・SHI☆をすることでことなきを得た(殺してません)。
聖女、姫騎士、弓使いが頻繁に夜這いしようとしてきたけど……いつもルカと寝てたし、安眠の邪魔なので結界(防音もしてある)で押さえ込んだ(流石にルカとのエッチなことは、彼女の負担になるので宿屋でしかしてません)。
ついでに、ルカが調教師……それも竜や不死鳥といった幻想種特化に覚醒したので、ほとんどの戦闘をせずに済んだ(というか……毎日、何かしらの幻想種がルカの護衛にやって来る)。
どうやら、ルカは幻想種に好かれやすいタイプらしく、行く先々の幻想種達に『何かあったら呼べば協力する』と召喚契約していた。
多分、今このパーティーの中で俺の次に強い(多分、国ぐらいなら余裕で落とせるんじゃないかな……)。
おかげで、聖女達は最初はピーチクパーチク煩かったが、最後の方じゃ何も言えなくなっていた。
まぁ、そうだよな。
ルカに手を出そうとしたら俺と幻想種達が暴れそうになるもんな。
命が惜しいわな。
結果。
ゲームの世界の俺はいろんな女の子と肉体関係があったけど……今、ここにいる俺にはルカだけです。
と、そんな風に旅をして……なんだかんだで魔王城。
露出過多のナイスバディ褐色美女が、高笑いしながら告げた。
「よく来たな、勇者よ‼︎ここまで来た褒美じゃ、妾が直々に始末してやろうぞっ‼︎」
「えいっ」
「ふぎゃんっ⁉︎」
話を聞かずに魔王の胸に聖剣(色々あって手に入れた)をぶっ刺し、魔王の力を封印した。
これで魔王はただの女性になった。
よし、これで終わりだ。
流石の急展開にその場にいた全員が「えぇぇ……」と呆然としていたが、ルカはクスクス笑っていた。
「帰る?」
「帰るよ。早くルカと結婚式あげたい。ルカとの子供欲しい」
「この旅の最中、ずっとそればっかりだったね?」
「行きたくもない魔王討伐に駆り出されたんだよ?文句ぐらい許されると思うよ」
俺はルカを抱き上げて、ゆっくりとキスをする。
何度も啄んで、段々と深いものへと変わっていく。
それだけでもう蕩けそうだ。
「………レグルス様っ‼︎」
そんな気分が良い中、聖女が俺のことを呼ぶ。
ルカとのイチャイチャタイムを邪魔するとは……イラっとする。
「何?」
「魔王を討伐なさらないのですかっ‼︎」
「魔王の力は封印したから、この人はただの人同然だよ」
「ですがっ‼︎」
「そこまで言うなら君が倒せば?もうただの人なんだし……勇者じゃなくても殺せるよ?」
そう言うと、聖女は目を見開いて固まった。
魔王を討伐するのは勇者の仕事かもしれないけど……魔王の力を封じられた人を殺すのは勇者の仕事じゃないよな。
俺の仕事は終わったからこっから先は管轄外だ。
「じゃあ帰るね」
「待って下さい、勇者様‼︎魔王討伐をなされたのならば是非とも我が国の国王……お父様に謁見を‼︎」
今度は姫騎士がそんなことを言ってくる。
あぁ、よくある魔王討伐の凱旋ってヤツ?
『魔王を討伐した褒美に我が娘との結婚を許そう』とか言ってくるヤツだろ?
「面倒だから却下。君達三人で会ってきてよ」
スタスタと出て行こうとすると、弓使いが「待ってよっ‼︎」と前に乗り出してきた。
まだ続くのかよ……。
「あたし、レグルスのことが好きなのっ‼︎お願い‼︎その子じゃなくてあたしを選んでよ‼︎」
「いや、俺が好きだからって他の子を傷つけようとする人は好きになれないから。お断りします」
「っっっ‼︎」
実行には移さなかったけど、こいつがルカに凄まじい敵意を向けてたり、柄の悪いゲス野郎をけしかけようとしていたのは知ってるんだ。
そうなる前にゲス野郎共は潰したけどさ。
なんでそんな最悪なことをするヤツを選ばなくちゃいけないんだ?
「あははっ‼︎愉快、愉快ぞ‼︎」
最後の締めと言わんばかりに、魔王がその豊満な胸を強調するように腕を組む。
そして艶やかな笑みを浮かべて告げた。
「勇者よ、妾はそなたが気に入ったぞ。妾をただの女にしたのだ。責任を取って妾の婿に……」
「ならないよ。言ったでしょ?俺はルカと結婚するって」
「妾の国は一夫多妻制も多夫一妻制も受け入れておる。妾を正妻とし、その娘をーー」
「あー…無理ムリ。俺、そういうハーレムとか嫌いなんだよ。一夫一妻で充分だから」
俺の言葉にルカが驚いたような顔をする。
え、何そんなに驚いてるの?
「ルカ?なんでそんなに驚いてるの?」
「………いや…だって……レグルスはいろんな女性にモテてたから……私を一番に好いていてくれてるみたいだけど……でも、沢山いる妻の一人になるのかなって……」
スッ……。
その瞬間、俺は真顔になった。
いや、だってさ?
ずっとルカと一緒にいたのになんで俺が浮気すると思ってるんだよ。
おかしくない?
ずっとずっとルカとイチャイチャしてたし、離れてなかったよな?
それなのに俺が浮気すると思ってたのか。
「ルカ」
自分でも驚くくらいに冷たい声が出た。
彼女の身体がビクッと震えたけど、逃がさないと言わんばかりに強く抱き締めた。
「ごめんね?」
「………へ?」
「俺、ルカにはちゃーんとルカだけを愛して、ルカだけを生涯の伴侶として愛し抜くと伝えてるつもりだったんだけど……足りなかったみたいだ」
うん、俺の愛情表現が足りなかったみたいだな。
なら、それを自覚してちゃと伝えられるように頑張らないと。
にっこりと微笑めば、ルカがビクッと震えた。
あははっ、怖がらなくていいのに。
「レグ、ルス?」
「俺がルカしか愛さないって理解してもうためにも、ちょっとお話ししようか。言葉的にも……肉体的にも」
それはつまり、言外に今からルカを抱くねと伝えると、彼女は顔を真っ赤にして固まってしまって。
あぁ、そうだ。
これも言っておかないと。
「いつもセーブしてたけど、我慢しなくていいよね」
「えっ」
「セーブしてたから、俺が本気だっていうの……伝わらなかったってのもあると思うんだ」
うん、そうしよう。
いつもルカが一杯いっぱいになるから、セーブしてたんだけど……今日は我慢するのを止めよう。
じゃないと、俺の本気が伝わらないだろうし。
ルカは自分が手加減している状態でも限界なのに、俺が手加減しないと告げたことで恐怖を覚えたみたいだ。
ガクガクと震えているけど、それも可愛い。
俺は、彼女の唇に軽く噛みついて……至近距離で微笑んだ。
「ドロドロに融けるまで愛してあげる」
そう告げて瞬間、俺はこそこそと覚えていた転移魔法で俺達の村へと帰った。
その後、ルカとかなーり長い時間、部屋に篭ったり。
聖女、姫騎士、弓使い、王国軍がやって来て一悶着あったり。
ルカのために幻想種と一緒に暴れたりとしたけど、まぁそんなこんなで。
今まで赤ちゃんができなかったのが嘘のように。
俺達は可愛い子供達に恵まれて、幸せに暮らしましたとさ。