一振りの刀と同じ
その踏み出した左足が覚えている、カカトが地面に接している、
ほぼ同時に爪先が接する、そして前方へと大きく突きあげる、
その間に剣を3突きして、それを1つとなした。
毎日同じ動作を1日に何千回も何万回もした、毎日飽きる事なく、ただひたすらに、
実際彼女は剣の修行が好きだった。
それはわだかまりもしがらみも全てから開放される、何かが羽ばたく瞬間の……。
だから美奈兎は空になる。
「……白だ」
雄二が呟く。
対三段突き作戦。
①上段の構えから相手より速く攻撃を試みる。
はっきりいって、三段突きより速く動ければ苦労はしない、せめて奇襲攻撃が出来れば……。
②四の五の言わずに逃げる。
一番の良作、でも時すでに遅し。
③中段の構えからのつばぜり合いとぶちかまし。
うまく行けば吉、勝算三割ぐらいの賭け、もうこの際だから踏み込む足へのローキックってのもありかと思う。
その最中を、雄二は愛刀、『彼岸花』を下段に構える。
何故か気合いがみなぎり動きが滑らかだ、
まるで映画でよく見かける拳法の達人、凄い目力のドヤ顔を見せているゾ、
きっと今なら目から炎がだせるだろう、なんかニワトリぽくもあった。
(……迎え突きか!……ん?……?)
美奈兎は、否応なしに気後れしている。
やっぱり女の子、カンフー映画に免疫がないらしい、
そして、今、
彼女の中で雄二は、
下等生物『バカ』から
オモシロ生物『キモい』にめでたくジョブチェンジ、
彼を見る熱視線と眉間のシワが不快感とともに深くなかった。
それにつけても、内から沸き上がる感情を抑えられないでいる、
笑みを噛み殺し彼女自身、はったりにしろ向かってくる敵は大歓迎だ。
実際、最初の一歩、スタートが苦手で今もモタモタしている、
変な力が入って上手くいかない、後は場数だと思う、
理想は100M走のスタート前、第三者の合図によるスタートだ。
今、彼女は木から落ち行く落ち葉を見つめている。
片や、下段に構えた愛刀『彼岸花』が小刻みにリズムを刻んでいる、
さながらバッターボックスに立つバッター、たまに剣先が地面に接して非常に落ち着いた状態、
それは持久戦上等の構え、
雄二も……、
雄二もまた、違いモノを見ていた。