逃げる男と追う女
「そうだ、天気もいいことだし、私買いたい服があるの付きあいなさいよ、
どうせ暇でしょ雄二?」
お前は天気がいいと雄とちちくりあうのかと突っ込みを入れたい所が、
右京は知っている、もうここはサファリパークの檻の中デンジャラスゾーンだという事を。
ほら、葉月がいなくなった獲物を探している、もとい、
いなくなった雄二を探している、
逃げようと立ち去る右京の前に葉月が仁王立ち、そして無言の重圧が、
ゴリラ……もとい、
王者の風格さえ漂わせて。
そして、こぼれ落ちる。
「えっと……四谷なら……私と仕事どっちが大事なの?の
お仕事にいったよ」それを聞き、静かに目を閉じる、黒葉月は消え失せ、
「マスター私、外回り行って来ます」
「あぁ、晩飯までには帰ってこいよ」
カラン、カラン。
ドアが閉まるとともに、店は静寂に包まれた。
「花形助かったな、お前が雄二を逃がすからだぞ」
「だって、女の尻を追うアホ男とダメ女、
絶対にその方が
面白いじゃないスか」
「ハッ!?
ハッハッハ」
マスターが呆れたように笑いだす。
「でっ、マスター的にどう何スか、あの二人は?」
「言ったろう、全ては野球に通じるってもんだ、
恋も野球も、
そう、恋も野球もストレートが大事」
右京はどっと疲れて崩れ落ちる、
ただ夏空に、
ただ夏空にマスターのドヤ顔が悲しくしみいるようだった。