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創作怪談――創怪

長いお友達

作者: ユージーン


 Rさんには長年付き合っている人がいるという。

 中学生の頃に知り合ったそうなので息の長い付き合いと言えるだろう。

 女子の仲良しグループにHさんが加わった。きっかけは他愛のない事だったと思うが詳しくは覚えていない。気づくと好きな漫画やTV番組の話をする普通の友人同士だった。


 ある秋の夕暮。2人で歩いている時にHさんが打ち明けた。

 自分には特殊な能力があり、霊やこの世のものではないモノが見え、それだけでなく相手とコンタクトをとることもできるとの事だった。

 もちろんそんな話は簡単には信じられないし、2人きりの時だったので自分をからかっているに違いにとRさんは考えた。

 するとHさんはRさんのかけていたメガネをするっと取ってしまった。

 メガネをかけている人ならわかるが普通は簡単に取れるものではない。どこかしら引っかかってしまったり、顔に手が近づいてくれば人は反射的に顔をそむける。それなのにまるでメガネが意思を持っているかのように顔から離れていってしまう。

「あ」っと思った時にはすでにHさんの手の中にあり、彼女は愛おしそうに眺めたあと、小さく息を吹きかけてから返してきた。

 意味ありげに笑ったあと、その後は普通の雑談になった。

 気にはなったが、こちらから質問すると相手の冗談に引っかかったような気がして何も言い出せないままその日は別れた。




 それから何日かしてグループの仲間で話しをしている時、じゃあ今日はこれでと解散すると、Hさんが近くに寄ってきて耳打ちしてきた。

「ね? 見えたでしょ? あの子の背中に大きなトカゲみたいなのがいて肩に噛み付いていたでしょ?」

 Hさんは自分が好きなアイドルをけなされたのが気に入らないので、その何者かにお願いしたのだと言う。彼女を苦しめるようにと。

 Rさんは思わず「え?」という顔になった。

 何も見えていなかったから。

 するとHさんはにっこりと笑って「ごまかすのが上手なのね。私は自分の力を分けることで相手にも見られるようにできるの。この間、メガネに力を分けたから」と説明した。

 どう答えていいのかわからず愛想笑いでその場をごまかして帰宅した。


 それから1週間もたたないうちにHさんが言っていた女の子は校庭を走っている時に飛んできたサッカーボールが当たり、走っていた勢いのまま倒れたせいで右側の鎖骨を骨折してしまった。




 その1回だけならただの偶然と笑い飛ばすこともできたろう。

 しかし同様のことが2度、3度と続き、病気で長期の休校状態になった人や、急な父親の転勤で転校してしまうなどで主要メンバーがいなくなってしまい、Rさんのいた仲良しグループはバラバラになってしまった。

 Hさんの普段の言動に仲間をバカにするような事が増え、かといって追い出すこともできず、自然に別なグループへとそれぞれが加わっていったためだった。

 激しい反発が起きなかったのはもともと優しい人たちが集まっていたのと、Hさんの様子に薄気味悪さを感じて逃げるように離れていったせいだろうとRさんは思った。


 Rさんはクラスの中で一人になることが増えてしまったが、どうしていいのかわからず、他所のグループに加わろうにも自分にも災難が降りかかるかもしれないと思うとHさんから離れることもできない。

 そんな頃、Hさんがそっと近づいてきて言った。

「あれだけたくさんの怪物を見て仲良しがどんどん不幸になったのに何も言わないなんてRちゃんすごいね。今までの学校とかの友達はみんな逃げていったのに。私たち親友になれそうね」

 にっこりと笑いかけてくる。

 なんと答えていいのかわからず、曖昧に笑ってごまかすことしかできなかった。




 それから15年以上がたっているが、今でもHさんと連絡を取り、時々はランチにも一緒に行く。

「けど、あんな人、一度も友達と思ったことは無い」

 Rさんはうつむいてそう言った。


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