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星砂とボトルシップ
淡青の夏空に、真白い入道雲が湧き上がる。
ひとけのない昼下がりの海岸。湿気を帯びた熱砂を踏みしめれば踏みしめるほど、やるせない空虚感が押し寄せる。
『海が見たい』
腕に抱えた瓶の船は、昨夜ようやく完成した。けっして良い出来とは言えないけれど、そんなに柔じゃないはずだ。
静かに瞑目し、硝子の曲線をそっと撫でる。追憶を確かめるように、想いを込めるように。
そして――解き放った。
『広い世界を旅したい』
あの夏聞かせてくれた君の願いが、君の笑顔が、
どうか、どうか、
届きますように。