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霖雨の金魚姫
俺の嫁さんは雨が嫌いだ。だから、梅雨時は毎日気鬱そうに過ごしている。
「お買い物行きたかったなー」
「仕方ねぇだろ? 足が濡れちまったら、買い物どころじゃなくなるぞ」
「たしかに」
「……梅雨が明けたらどこでも好きなとこ連れてってやるから、あと少しだけ我慢しろ。な?」
「はーい」
誰にも話せない嫁さんの秘密。抱えていくことは容易ではないと、何もかも承知の上で一緒になった。
——優艶なあの姿は、俺だけが知っていればいい。
「わたしのこと、気持ち悪くないの?」
「何言ってんだ。ったりめぇだろうが」
「……んふふ」
「その笑い方は気持ち悪ぃ」
「!? んもうっ!!」