琥珀のかけら

霞色のその先に

　桜が散った。

　冷たい雨に打たれた花びらは、一枚残らず枝から離れた。もう何度目の春だろうか。いつからか、私は数えることを止めてしまった。また今年も、貴方に逢えぬまま、霞色の季節が終わろうとしている。

　——百年後、満開の桜の木の下で。

　優しい笑顔が、瞼の裏に蘇る。まるで月のように優しい笑顔。低く心地好い声が、耳の奥で静かに反響する。

　涙は、とうに枯れ果てた。

「……ねえ、貴方。地上(そちら)の景色は美しいですか？」

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遠い過去にこぼした雫は、貴方のもとへと落ちたのでしょうか。