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春雷のしっぽ
つい先日、仕事帰りに男の子を拾った。雨の中、ぼろぼろの格好で路上に座り込んでいた。
すっごい睨まれたけど、なんだか放っておけなくて、なかば強引にマンションへ連れて帰った。明るいところで見てみると、意外にも色白で綺麗な子だった。
看病を兼ねて同居したら、なんと懐かれてしまった。
「ねえねえ、オレの正体知りたい?」
「うーん……べつに」
私は気づかないふりをした。
ベッドの上。白いシーツの上で光る、金色の獣毛に。
「ねえねえ、まだしばらくいてもいい?」
「うん、いいよ。いつまででも」
「それは、ちょっと……」
「……」
「……」
「……もうすぐ桜が咲くね。お花見行く?」
「行く」