11/30
真昼の星
突き抜けるような蒼穹の下。雪の積もった急峻な山を背景に、男は少女の手を引いて歩く。「寒いか?」との男の問いかけに、少女は大丈夫だと首を横に振った。少女は、言葉を話せない。
立ち寄った農村で少女と出会ったのは半月前。村の誰もが少女を忌み嫌い、そしてひどく畏れていた。
少女は、災厄をもたらすらしい。
真偽はわからない。だが、痣だらけの顔に、あどけない笑みを湛える少女の手を、男はただ強く握り締めた。
二人の行くすえを知るのは星だけ。
真昼の星だけ。
たとえ何が起ころうとも
小さなこの手を離さない