導き 3
親がいなくなり寂しく悲しいのだろうが少女は何かを悟ってるかのように
次の日から泣かなくなった
少し障害もある事も幸いしているのだろうか
年齢より幼い感覚が母のいなくなった事をそんなに深刻に受け止めていないのか
本当の心理は解らないが・・・・
あの夜以来なぜか気が付けば俺の側に少女がよくいるようになる
「茂さん、釣りに行ってくる」
「おぅ、帰りにスパーも行って来てくれ」
リアカーを出してると少女が乗りたそうに指を指し
「のん~のん」みたいな声を出す
「今日は海に行くから危ないからダメ」
嫌だ!乗る!みたいな仕草が大きくなり
「う~う~」うめく
「茂さん!あこが行くってきかんけど、どうしょ」
「今日は兄ちゃん一人で釣りばい危ないけんダメじゃ」
益々ごねる、あこ
そんな時、後ろから、いつもの男の声
「あれ~どうした?」と女の子を見ながら少し驚いた感じで言う
「じぃさんの孫なんだけど釣りに行くのに一緒に行くと言ってきかないんです」
「あはは、可愛いな、いくつ?」とあこの前に行って目線を合わせ聞いた
また恒例の変な握り拳見せるので典明さん
「?」なので説明した
「じぃ、俺も行くから連れていっていいか?」
この頃には男は茂さんを、じぃとだけ呼ぶ
「それじゃ気を付けてどっちかは目を離さんでな」
「魚はあんまり釣れんかも穏やかな方に行きますは」
リアカーに、あこを乗せると
興奮して喜びの感情をめいいっぱい表す
苦笑する3人
典明さんが引いて俺と、あこが乗せてもらった
あこは、よほど嬉しかったみたいで訳の分からない言葉とリズムをとり
俺の顔を見ながら笑う
殆どビーチみたいな所に着いた
「今日は浜遊びだな」と苦笑しながら男が言う
しばらく、あこを自由に砂遊びさせ時々代わる代わる相手をしてやる
少しして、あこは落ち着いてきたので
安全な場所で釣り具を降ろす
あこは男の言われるまま膝の上に座らされてお利口にしている
「人懐こい子やな普通このぐらいの時は人見知りとか男には怖がるけどな」
「そうですよね」
「じぃさんの実の孫か?」
「あっ、ひ孫ですが、たぶん。俺も詳しくは聞いてないけど」
「じぃさんも一遍に大変になったな、おまえはいつまでここにいるんか?」
「まだ何も決めて無くて」
「この子も、ずーっとこの島って事はないやろうしな」
「親迎えに来るんですかね?」と言うと
あこが
「ま~ま、来る来る、いっちゃも来る」
「まま来るんか」と男
「この子、言ってる事は殆ど解るな」
「こんな事よくあるんですかね?」
「かもな」
しばらくしても魚も釣れないので退屈してきたあこは男の膝で穏やかに寝ていた
魚が釣れない状態で空の雲行きが怪しくなってきた
「そろそろ帰ろう」男が言う
あこは、すっかり男に慣れ抱っこされてリアカーに乗せられる
今度は俺が押す
荷物を取りに、おばんの店に行く
3人で中に入り
「こんにちは」
「あれ~今日は珍しい組み合わせやね
この子は~茂さんの所の?」
「知ってるんですか?」
「何度か会ったね」「そうなんですか」
「また預けに来たんかい?」「なんか凄い剣幕で怒鳴って、おいていったわ」
「そうかい、しゃぁない孫やなぁ~あの子も大変みたいやね」
「何かあったんですか?」
「詳しくは知らんが茂さんが、ここに来たのは息子さんの事で、いろいろあったからみたいやね」
「息子さん?」と横から典明さんが、あこを抱っこしながら言う
「亡くなられたんです」俺が言うと、おばんが
「自分では死なせたと言いおったが茂さんの事やから思いこんでると思うけどね」
また茂じぃの過去を少し知った