6-2=友情
いつもの帰り道。
いつもの家。
いつもの玄関。
そして、いつもの扉。
--助け・・・--
家の前で讐と別れ、カバンから鍵を取り出し開ける。
これもいつも通りの動作だ。
ガチャリと音を立てて開く扉。
中は真っ暗で人の気配が一切しない。
当たり前だ。
両親は海外。
兄弟もいない俺には帰っても迎えてくれる人なんていやしない。
唯一迎えてくれるのは部屋に置いた観葉植物や庭に生えている草花達だけ。
いつものように丁寧に見て周り、虫や病気がないかを確認する。
「うん・・・今日もみんな元気だな・・・」
1人で確認し、1人で納得する。
ただただ起き、学校へ行き、帰り、植物の世話をして食事をし、寝る。
これが彼の一日である。
なんの変哲もない一日。
特に変わったこともない一日。
特別なことなんて起こりはしない。
--・・・すけて・・・-
植物の世話をしていると急に影が強くなった。
「まーたこいつらの世話してんの?好きだねー!」
讐だ。
いつからそこにいたのだろうか。
讐が背後に立って満面の笑顔を見せていた。
「うるさい。不法侵入だぞ」
庭とはいえここは私有地。
讐は完全に不法侵入をしていた。
「堅いこというなよ!俺様がいるとは思わなかっただろー!」
「そりゃな・・・帰ったんじゃなかったのか?」
「いや・・・ちょっと気になることがあって・・・」
「なんだよ?」
「いや・・・ここじゃちょっと・・・」
珍しく歯切れが悪い。
普段はウザイくらいに騒がしく話すこいつがこんなに暗い表情をしたときは大抵・・・
「頼む!宿題映させてくれ!!」
これだ。
こいつは宿題のことになると急にしおらしくなる。
いつもの手。
いつものやり口。
もうその手には乗らない。
「あ!すまん!俺も忘れてたわ」
「まじかよ!!お前が忘れるなんて・・・明日は雨どころじゃ済まないな・・・」
驚きと絶望でよく分からない表情をしている。
忘れた・・・なんてもちろん嘘である。
こいつは危機的状況にならないと何もしない。
いつもヘラヘラしているが知人が窮地に立った時、こいつは本当に力になるやつだ。
こいつほど力になるやつを俺は未だに知らない。
--タスケテ・・・--
「じゃ!しゃーないな!明日は国語の佐藤に怒られる覚悟をするわ!お前も一緒に怒られよーな!」
「バカか・・・お前が帰ったらやるわ」
もちろん嘘である。
「うっわー!ずりぃ!一緒にカミナリ喰らおうぜ!」
「お前だけくらってろ」
「連れないやつ!じゃあ、帰るわ!なんかあったら言えよ!お前、いつも1人なんだから!」
ケタケタと笑いながら庭から出ていく讐。
明日、怒られるのはお前だけだ。
内心ほくそ笑みながら見送った。
「・・・・・・ほんと、なにかあったら言えよ・・・」
表情は見えなかったが讐が見せた初めての声色。
とても暗く、とてもじゃないがいつもの讐とは違って聞こえた。
しかし、俺は声をかけられず讐の背中だけを見送った。




