5-7=相違
やはり今日はとことんついていないのかもしれない。
さっきまで紅茶を飲んでいたと思っていたのだが違ったか?
今、俺の目の前に映る風景。
全員が全員、俺を向き指を刺し笑っている。
絶望的な光景だ。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
絶叫する声でハッとする。
隣にいる女が叫んでいる。
この数時間で何度も見た顔。
俺のことを拉致し、何度も蹴りあげ、一緒に変な場所に飛ばされた、あの女。
ただ、様相が違う。
その違いは1目見ただけで判断はつく。
髪だ。
髪の色が変わっている。
先程まで話していたのは黒髪に赤いメッシュの入った女だ。
しかし、今はどうだ?
女の髪は白く染っており、これじゃあまるでアルビノみたいじゃないか。
「イヤ!いやいや!嫌嫌嫌嫌嫌!!!
見ないで!・・・見ないでよ!!
パパ!ママ!そんな顔で私を見ないで!!」
目の焦点はあっておらず、体は小刻みに震えている。
両手は耳に当て、完全に自分の世界に入ってしまっているようだ。
「おい!目を覚ませ!!」
バシン!と力強く頬を叩く。
「あ・・・私・・・わたし・・・」
少しは正気を取り戻したようだがまだ震えは止まらない。
「どうした?何か居たのか?」
「そう!・・・そうよ!いたの!パパとママが!みんなと一緒に私を見て笑ってるの!!」
どうやらこの光景は共通のものらしい。
しかし、女の方には父親と母親が見えているようだが・・・。
「気をしっかりもて!何もしてきやしない!この光景も、あの店のこともきっと幻覚か夢だ!目を覚ませ!」
なぜ俺はこの女を励ましているのだろうか。
放っておきたいのは山々だが、この状況だ。
放っておけるわけはない。
「そうだよ!夢だよ!君たちの夢!本当・・・しっかりしてくれなきゃ困るよ!これから君たちには彼らを✖してもらうんだから!・・・・・・これだからイレギュラーは連れてきたくなかったのに・・・」
頭の中で聞こえる猫の声。
こいつがこの状況の元凶なのか?
「さぁ、受け取るといい!君たちの狂気!君たちの望み!君たちの力だ!
思う存分ふるって溜まった鬱憤を晴らしてくれ!」
目の前に現れたのはリボルバータイプのハンドガン。
銃身からグリップまで真っ白で出来ており、まるで俺のようだ。
一方、女の前に現れたのは
白い刀身に漆黒のキレイな柄。
俺はこの武器を知っている。
実物を見たのは初めてだが、教科書や博物館でよく見る日本刀と呼ばれる武器。
その刀身は肉を切り、骨を断つのに優れている。
達人が持てば敵知らずといった武器だ。
「そう・・・そうよ・・・✖しちゃえばいいんだわ・・・そうね・・・そうよね・・・」
ブツブツと何かを呟いたと思うとガシッと柄を掴みユラァと力なく立つ女。
次の瞬間、女の眼光が鋭くなったと思ったら刀を構え1人の男性に斬りかかった。
ガキィィィィィ!!
「お前!何やってんだ!!」
咄嗟の事だった。
条件反射とは恐ろしい。
俺自身、どう動いたかなんて覚えていない。
気付いた時には斬りかかる女の刀に対して銃身を当て、攻撃を防いでいた。
「何やってるか分かってんのか?人殺しだぞ!!」
「分かってる・・・分かってるわぁ・・・✖せば・・・✖せば解放されるの・・・邪魔しないで!!」
攻撃対象が男性から俺に変わる。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
女は俺に斬りかかってきた。
その度に俺は躱し、防ぎ、凌いだ。
「あ~あ、2人して戦っちゃって・・・ここは夢の世界みたいなもんなんだし、好きに✖しちゃえばいいのに・・・」
「うるせぇ、誰がてめぇの思惑通りになんかなるか!」
「別にいいけどね・・・でも、ほら。早くしないと彼女が死んじゃうよ?」
女を見ると確かに消耗しているようだ。
防いでいる俺より断然。
最早、顔に生気はない。




