5-6=夢現
「おや・・・いらっしゃいませ」
店内に入ると細目の黒い青年が迎えてくれた。
黒髪に黒いベストが良く似合う。
髪から目まで真っ白な俺とは対照的だ。
「お好きな席へどうぞ」
俺は店内をぐるっと見渡しカウンターに座ることにした。
俺に続いて女もカウンターへ
ただし、席は1つ空けて座った。
「おや?お二人はお連れさまでは?」
「「違います」」
「おやおや、息がお合いの様で・・・」
クスクスと笑われてしまった。
何故だろう、この女と発言が揃うことがある。
実に遺憾だ。
「こちら、メニューになります」
スっと渡されるメニュー。
俺と女に1冊づつ。
「「おすすめで」」
まただ。
特に飲みたいものも食べたいものもない。
なんでも良かった。
それなのにまた被る。
なんなのだこの女は。
「あんた!真似してるんじゃないでしょうね!」
「なぜ俺が言われなきゃならない!お前こそ真似してるんじゃないのか?」
「なんですって!?」
「なんだよ!」
ポンッ!
小さく手を叩く黒い青年。
「お客様?店内でケンカは御法度でございます。どうか、仲良く」
そしてニヤリと笑う。
細い目から覗く鋭く強い光を持つ瞳。
これに睨まれるとなんとも言えない威圧感に包まれる。
「「はい・・・」」
「お二人共オススメ・・・でございますね。かしこまりました。」
そして何かを作り始める黒い青年。
-
--
---
「-あんたこそ、なんであんなところにいたのよ」
しばらく間を置いて女が話しかけてきた。
「さぁ・・・ただ、なんとなく・・・人の多いところなら何かが見えるかと思って・・・」
「ばぁ!?あんたバカ?あんたみたいな純色の希少価値なんてあんな人混みにいたら拉致られるに決まってるじゃない!」
「分かってる・・・けど、もう逃げ回る日々にも飽き飽きしていたんだ・・・拉致られて売られて殺されて・・・それはそれでもういいかなと・・・」
「あっそ!拉致った私が言うのも変だけど、拉致ったのが私で良かったわね!じゃなかったら今頃は変態の相手をさせられてるか標本にされてるかのどっちかよ!」
それはそれでいいと言っているのにお節介な女だ。
「お待たせ致しました。まずは女性のお客様・・・こちらを」
コトリと机に置かれるティーカップとケーキの皿。
「当店特性ブレンドのコーヒーとレアチーズケーキにございます。そして男性のお客様・・・」
次は俺にもカップと皿が提供される。
「ディンブラベースのミルクティとスコーンでございます」
「ちょっと待って!ふたりともオススメを頼んだはずよね?なのになんで違うものが出てくるの?」
「それは私がお客様にオススメしたいものを提供するからにございます。お店としてオススメのものを出すという訳ではなく、私がお客様を見て決めているオススメということでございますので、人によって出てくるものが変わるのでございます」
納得出来たのか出来てないのか女は首を傾げている。
「ま、いいわ!甘ったるいものよりコーヒーの方が好きだし!」
無理矢理にのみ込んだらしい。
「俺も・・・苦いコーヒーよりこっちの方がいい」
いい感じに意見が分かれた。
そして、俺たちは同時にカップを手に取りゴクリと1口。
お互いに与えられた飲み物を嚥下する。




