5-3=拉致
次に目を覚ました時に見た景色。
それは、これまた薄暗い小さな部屋だった。
部屋全体はジメジメとしており、お世辞にもキレイとは言い難い。
俺は椅子に縛り付けられ身動きする度にガチャガチャと鎖の擦れる音がする。
「ちくしょう・・・変な薬でも盛られたか?頭がボーとする」
ぐわんぐわんと鈍い鈍痛。
頭痛が思考の邪魔をする。
抜け出す方法はないかとしばらくの間熟考していると部屋に唯一設置されている扉が重たい音と共に開いた。
「ハローアルビノちゃん。元気にしてるー?」
先程、俺を陥れた女。
女と一緒にガタイの良い男が二人現れた。
女は先程と同じ格好だが男の様相は少し変わっていた。
二人共、防弾チョッキを着込み、顔にはフルフェイス型のガスマスクを付けているために顔を認識することが出来ない。
「これが元気に見えるならお前の脳みそはだいぶ腐ってるな。いい病院を紹介してやろうか?」
「あら?それはそれは・・・・・・優しいのね!」
--うぐっ!
女は躊躇いなく俺の腹に蹴りをかましてきた。
「あんた、自分の立場分かってんの?圧倒的優位に立ってるのはこっち!ちゃんとわきまえなさい!」
また舌舐めずり。
どうやら癖のようだ。
「--うるせぇ・・・」
俺の口答えが余程腹に立つのかその後も幾度となく蹴りを入れてくる。
それも全て腹に。
「姉さん・・・そろそろ。そいつ、信じまいますぜ」
今まで傍観してきた男の1人が止めにから入った。
実際のところ、助かった。
この痛み・・・内蔵の1つや2つは逝ってるかもしれない。
「ふん・・・いいところだったのに!顔だけはボコらないであげる!あんたの商品価値はそこくらいにしかないんだから」
商品・・・商品といったかこの女。
なるほど。
納得いった。
俺が拉致られた理由。
またこれだ。
この体質のせいだ。
アルビノ・・・聞いたこともあるし、何度か売られかけたこともある。
人間のアルビノ。
しかも、肌、髪、それに目まで白い俺は中でも珍しいらしい。
それ故に個人、企業、国に問わず欲しがる変態は多いそうだ。
「お前らも・・・人身売買目的か・・・」
「そうよぉ~!あなたは貴重なの!凄く高く売れるの!でも・・・顔が汚れてたら高く売れるものも売れない・・・だから、顔は許してあげる!」
「くだらない・・・こんなの貴重でもなんでもない・・・」
--キッ!
女の表情が一瞬にして険しいものへと変わった。
「くだらない!?あんたに何がわかるっていうの!勝手に産み落とされて捨てられて!生きていくためには手段なんか選んでらんない!何がなんでも生き延びて何がなんでも親に復讐してやるんだから!!」
叫びながら俺の腹を蹴る。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
「あんたはいいわよねー!アルビノってだけで希少価値がついて買い手なんていくらでもいる。変態オヤジに買われたらそりゃ悲惨かもしれないけど、あんたを愛でたいっていうのは変わらないし食いっぱぐれることなんかないもんね!」
そういって俺を蹴り続ける女の瞳にはうっすらとだが涙が浮かんでいた。
この女も相当過酷な人生を歩んでいるのだろう。
それは俺の想像出来る範囲を超えているのかもしれない。
しかし、今の俺にはこの女の過去や未来を想像する気力も体力も残されていない。
「--クソが・・・」
俺の精一杯の強がりだった。
痛みと疲労から俺の意識は再び闇の中へと落ちていった。




