1-5=過去
彼女はポツリポツリと話し始めた。
過去、今、そして未来のことを
「私は姉がいるの・・・ううん、いたの。
凄く優秀で優しい姉だった。
そんな姉が私は大好きだった。
何をするにも姉は1番だった。
勉強、スポーツ・・・ピアノだって人一倍できた。
ピアノはすぐに辞めちゃったけど・・・
姉は大学を卒業すると大手医療メーカーに務めたわ。
会社でも姉の優秀さは認められてどんどん上に行ったの。
そんな姉のようになりたくて私は一生懸命勉強して、同じ大学に入って、同じ職場に就職して、がむしゃらに働いたわ。
部署は違ったんだけどね。
でも、家族や職場の人は姉ばかり・・・
私に見向きもしないの。
当たり前よね。
何でもできる優秀な姉とただ、それに引っ付いてるだけの私。
みんながどっちを評価するなんて分かりきってること。。
いつもいつも姉と比べられて姉のようになりなさいと言われてきた。。。
でも、数ヶ月前・・・
姉は亡くなったの。
自殺だった。
細かくは分からないんだけど、
当時お付き合いしていた人がいたみたいなの。
でも、姉には親が決めた結婚相手がいた。
親からは随分反対されていたみたいなの。
それが原因なのか、その付き合っていた人と一緒に心中しちゃった。。。
それまで姉を尊敬して、姉のようになりたいって思っていた私には今後どうすればいいのか分からなくなっちゃった。
それはそうよね。
姉の背中を追って、追いつきたくて。
その為だけに頑張ってきた。
私は空っぽなの。
自分で何がしたいとか、どうなりたいとかそういうのがないの。
姉がいなくなってからというものの、
親や周りは姉に置いていた期待を全部私に押し付けてきた。
もっと頑張りなさい。
姉には出来ていたのにって。。
そんな重圧に潰されかけていたの。」